俺がシュウの視線の先に目をやると、確かにいた。何やら複数の男女に囲まれている。
そういえば今日はバイトの送別会とか言っていたな。
就活が始まるからバイトを辞めるとか言ってたけど、送別会の場所、この店だったのか。
偶然に驚きながらも
「例の飲食店のバイトか。なんか結構長いし充実してたみたいだよな。」と俺。
「へー。俺全然シンタロウ君のこと知らない。」
「なんかまかない出るからってんで、夕飯ほとんど外食なんだよ。」
「そうなんだ。」
少しの間、二人でシンタロウ観察をする。向こうは全くこっちに気づかず、
楽しそうに周りの人間と話をしていた。楽しそうに話しながらもきりっとした雰囲気はあった。
「ほんとノンケ生活って感じだなー。」
「そだな。俺もタイプじゃないってのもあるけど、一緒に住んでてもゲイとして意識してない。」
「お前ノンケ抱きしめてたらやばいからねw」
「だからそれはもういいじゃねーかw」
確かにシュウの言う通りで、多少はゲイとしての甘えはあるかもしれなかった。
そんな感じのやり取りをしていると、シンタロウが最後の挨拶をするっぽい流れに。
どんな挨拶をするのだろう。せっかくだから聞いてみよう。
シンタロウが立つと、周りのバイト仲間の視線がシンタロウに集まる。
「えー、僕が・・・」
と話し始める。結構声が大きかった。声はここまで届いた。