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短編〜まことの場合〜2
 you  - 20/5/17(日) 16:48 -
集合場所のローソンに近づくにつれ、なんというかリアルの前のような高揚した気分になっていた。


直前の角を曲がり、青と白の看板が見えると、ローソンの前にポツンと身長の高い青年が空を見上げていた。

俺は近くまでいくと、慎重に声をかけた。
「は、、、晴也?」
「あ、まことくん!」

身長は俺よりも5センチほど高く、タイトめのスウェットパンツを履いている青年はこちらをみて、
想像していたよりも2オクターブ低い声でそう答えた。

俺は間髪入れず、
「久しぶりだな〜。6年見ないうちに随分大きくなったな、、、というか、俺より大きくなってるし。昔は俺の腰くらいしか身長なかったのに」
と大げさに自分の腰に手を当ててみせた。

「そんなことないでしょ。まことくん、かわらないね!」
笑顔は当時と変わらず、面影がしっかり残っていて安心した。

「さ、こんなところで突っ立てても仕方ないから、家に行こう!」
「うん。ありがとう!あと、、、これしかないけど、買っておいた。」
と、心配そうにコンビニ袋の中身をこちらにみせた。

中を覗くとそこには缶ビールと酎ハイが6缶と、酒のつまみが入っていた。
「冗談だったのに、本当に買ってくれたんだ。なんか悪いことしたな〜」
「そんなことないよ!今夜急に連絡しちゃった俺が悪いんだから」
と、今にも泣きそうな顔をするので、
「おっと、俺の好きな銘柄じゃん!ありがとな。丁度喉が渇いてたし。あとで一緒に飲もうな。さ、いくぞ。」
ニカっと笑うと、俺は歩き出した。


東京の夜は明るい。
それが、深夜の住宅街であろうと関係ない。
上京したてのときに、特にこの「新宿」という街は暗い場所がないのではないかと疑問に思ったくらいだ。

山梨の田舎街で育った晴也も例外ではなく、ずっと周りをキョロキョロしながら、俺にぴったりくっついて歩いていた
俺はそれが面白く唐突もなく笑ってしまった。

「え!?なに、なんか面白いことあった?」
とまた心配そうに尋ねる晴也。
「いや、晴也が面白くて。」
「え!俺?」
「東京に来るの、初めて?」
「そんなことないけど、、、夜は初めてかも。山梨と違って明るいんだね。」
「俺も上京した時、同じこと思ったよ」
「ほんとに?!」
「うん。」
「良かった〜、田舎丸出しじゃないかと焦ったよ。」
「いや、田舎丸出しなのには変わりないよ。晴也、相変わらず可愛いな〜」
と、昔よくやったように、晴也の頭を撫でた。今回は、腕を上げなければいけなかったが。

「ちょっと、やめてよ。恥ずかしい」
街灯の明かりでもわかるくらい、顔を赤くし俺の手を払った。
「なんだよ。昔は撫でたら喜んでたのに」
「昔って、小さい頃の話でしょ。俺、もう大人だよ!!」


そうこうしているうちにマンションについた。

エレベーターで7階まで上がると、玄関を開け、明かりをつけた
「山梨と比べるとかなり狭いけど、どうぞ」とスリッパをだした。

「ううん、思っていたより広い。てっきり、、、」
そこで続けるのをあからさまに止めたので
「『てっきり』なんだよ」
と睨むと、
「てっきり、6畳一間の部屋に住んでいるのかと」
「どこの貧乏学生だよ。俺、もう30だぞ。いい年したオッサンだぞ」
と晴也のお腹を擽った。

「わー、ごめんなさいごめんなさい」
笑いながら俺の手を必死に振り払おうとしている晴也がとても愛おしく思えた。
ふと、晴也のシャツが濡れていることに気づいた。

「晴也、服濡れてるじゃんか」
「え。あぁ、多分さっき雨に濡れちゃって。」
「風邪ひくから、シャワー浴びてきな」
「でも、そんなに濡れてないし、大丈夫だよ?」
「いや、だいじょうばわないよ。そんな濡れた服で俺のソファーに座ってほしくないわ」
とシャツを引っ張った。

分かりましたと渋々な晴也を脱衣所まで案内した。
浴槽のドアをあけ
「手前のボトルからシャンプー・コンディショナー・ボディソープ。洗顔はそこ。って、聞いてる?」
と後ろ振り向くと、既にシャツを脱ぎ、スウェットまで脱ごうとしていた。

「あ、ごめんごめん。適当に使わせてもらうね」
そう言ってる最中も服を脱ぐ作業は止めず、もはやパンツ一枚になっていた。

顔と同じ白さの上半身が視界に入ってしまい、目のやり場に困り、晴也に背を向けると
「服はそこの洗濯機に入れておいて、明日には渇くから。バスタオルはそこな。着替えはあとで持ってくるから」とだけ伝え
「ありがとうね、まことくん」という声を背にそそくさと脱衣所から出た。


キッチンにいくと、シンクにうっすら映る自分の顔をみた。

無駄なぜい肉もなく、腹筋が見える綺麗な上半身がフラッシュバックする。


心臓がバクバクする。


(あいつ、なんで急に脱ぐんだよ。いや、、、男同士だから当たり前か。
てか、なんで俺のところに連絡したんだろ。本当に他に頼る人いなかったのかな。
もしかして俺に会いに来た?いやいや、何期待してんだよ。馬鹿か。相手は従弟だぞ。第一、ノンケだ。)
と誰に言うでもなく、心の中でシンクに映った自分に問いかけていた。


「とりあえず、ビール飲んで落ち着こう」


着替えを持っていくことをすっかり忘れた俺は、
冷蔵庫からさっき晴也が買った缶ビールを取り出し、ソファーに座りTVの電源をつけ、飲み始めた。


ほとんど一気に飲んでしまったため、ソファーでむせこんでいるときだった。

「あ〜〜、まことくん。先に飲んでる〜〜!」
声の方をむくと脱衣所から腰にバスタオルを巻いて全裸で出てきた晴也が目に入り、
さらにむせこんでしまった。


「グホッグホッ。なんで全裸なんだよ」

「なんでって、着替えなかったから」

そこで用意するのを忘れていたことに気づいた。
「あ、ごめん。忘れてた、ちょっと待っててな。」
寝室に急いでいき、適当にシャツと短パンを渡した。
「下着ないけど、大丈夫だよな」

「ノーパンで問題ないよ〜」
と服を受け取るとその場でタオルを取り、着替え始めた。

「お前、俺とは言え、人前なんだから少しは恥ずかしがれよ。」

「なんか気がゆるんじゃった。」
と、微笑み俺にタオルを渡し
「タオルありがと。さ!お酒のも!!」と続け、ニコニコしながら冷蔵庫に向かっていった。


俺はそんな晴也を止めた。
「ちょっと晴也、髪の毛乾かしてないじゃん。ドライヤーしたら?」
「え、ドライヤー?俺、普段使わない」
と俺への返しは二の次、冷蔵庫からビールを取り出すと、ソファーにドカッと座り、缶をプシュッと開けた。

「さ、まことくんも一緒に飲もう!」
「まったく、急に図々しくなったな」

きっと昔遊んでいたときの関係を思い出してきたのだろう。

俺は、独立洗面台からドライヤーを持ち出すと、冷蔵庫によって2缶目を取り、晴也の隣に腰掛けた。

プシュ!

「ほら、乾杯」

「うん、乾杯!」

一口だけ飲むと、缶をテーブルに置き、ドライヤーのコードをコンセントにつないだ。
「さ、俺に背中向けて。」
「え、何?」
「ドライヤーしてやるから」
「え〜いらないよ」

俺は無理やり晴也の肩を押さえ、体を横にさせた。
「ダメダメ、ちゃんと髪乾かさないと、叔父さんみたいに剥げちゃうぞ!」
「え、それは嫌だ。父さんみたいなんかなりたくない」
と仕方なく受け入れたようだった。


髪の毛をかきながらドライヤーで乾かしていると、ふと晴也が視線を前に向けたまま話しかけてきた。
「なんか、小さいころ思い出すね。まことくんの家に泊まりにいったときも、
まことくん、こうやって俺の髪の毛乾かしてくれたよね。」

「そうだな。俺は、晴也が毎回帰りたくないって、泣きながら俺の腰にしがみついていたの思い出したよ」

「わ〜、変な場面思い出さないでよ〜」
と急に後ろを向いてきたので
「ほら、前を向く!」
と頭を掴んで、前に向けた。


俺は晴也の髪を見つめながら
「でも、またこうして晴也と仲良くできてうれしいよ」
とポロっと伝えると

「、、、俺も」

ドライヤーの音で良く聞き取れなかったが、確かにそう言ったように聞こえた。

するとだんだんと晴也の体が後ろに倒れ、後ろに寄り掛かる形で、俺にぴったりとくっ付いた。


心臓が早くなる。


鼓動が晴也に伝わってしまうのではないか、、、


「ほら!!乾いたぞ!」
と、さりげなく晴也の体を起こした。
晴也は何も言わず従い、体をテーブルに向き変えた。


無言が続く。


なんだ、この感覚、、、、。


無音の環境に耐えられず、俺は缶ビールをもって
「さ!飲みなおすぞ」
と言い、改めて互いに乾杯した。


真っ暗のテレビ画面には、太ももが触れ合っている二つの影が映っていた。

引用なし

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短編〜まことの場合〜1 you 20/5/6(水) 17:53
Re(1):短編〜まことの場合〜1 ひろ 20/5/9(土) 1:56
Re(2):短編〜まことの場合〜1 you 20/5/17(日) 16:50
短編〜まことの場合〜2 you 20/5/17(日) 16:48
Re(1):短編〜まことの場合〜2 しん 20/5/30(土) 19:31



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