ふみさん、レスども〜
翌年2月あたりだったろうか。俺はとあるヴォーカルオーディションのエントリーのためにカラオケに出向いた。
「○○○(オーディション名)のエントリー手続きしたいのですが・・・」
「はい、少々お待ちください」
俺には歌手になるという夢があった。それが形として現れ始めたのは高1の三学期頃。この夢だけは誰にも侵させない。そんな思いさえある。
「あれ?」
待っているとそこに聞きなれた声が。
「りゅうじ?何でここに?」
俺の恋人であるりゅうじだ。顔はEXILEのATSUSHIに激似。だからなのかは知らないけど、坊主である。体格は俺よりも一回りも二回りも上だ。そんなだから全然後輩に見えない。こんな16歳絶対間違ってる。
「てるこそ何してんの?」
「俺はオーディションのエントリーにきたの」
何か驚きに満ちた顔をする。俺はそんな表情にさせる発言をした覚えはない。
「俺もだよ、てるも出るんだ〜」
俺がオーディションに出るのがそんなに意外か?
「りゅうじも?」
「うん、一緒に出ちゃう?」
そんなことできるのか?丁度店員が戻ってきた。早速聞いてみた
「出来ますよ」
というわけで俺たちはデュオって形でエントリーすることになった。何を歌うかは決まってないからアーティスト名と曲名は空欄にして書類に記入する。エントリー料金は1000円だけど、二人一組になって出るわけだからここはお互い500円ですむ。無事エントリーが終わり、俺たちは軽くヴォイトレして店をあとにする。
「何歌おうか?」
「二人が共通してよく聞く曲でしょ?りゅうじ、AAAとかTRFって聞かないでしょ?」
「いや、聞くけど、歌えない。どれも高いし」
確かに・・・でもそれを言ったらEXILEも充分高い気がするのは気のせいだろうか。
「EXILEか」
結局これしかない。曲も一応決めた。冬に歌うのはどうかと思うサマーソングだ。
まあ、審査員もそこまで気にしないか。そしてりゅうじと俺は第一審査通過を目指し翌日から毎日カラオケで練習することになった。
続く