オーディション当日。俺は風邪をこじらせてしまった。熱も38は軽く超えている。もちろん指定された時間に会場に行ったのだが、俺は出るつもりはなかった。こんな状態で出てもりゅうじの足を引っ張るのは明白だ。
「てる〜大丈夫か〜?」
「大丈夫〜。でも出るのはやめる〜」
「え?」
ん?何か変な発言したかな?
「そっか・・・じゃ、俺もやめる〜」
「は?」
何をほざいてるんじゃ、こやつは。
「何でりゅうじまでやめるわけ?」
「だっててると一緒じゃなきゃ意味ねーもん」
おいおい、冗談じゃないぞ。そして1時間後。俺はステージ上にりゅうじとともに立っていた。こうなりゃダメで元々。自分の氏名、アーティストと歌う曲を告げてミュージックスタート。その間せきで苦しんでいたり。曲が始まればしゃんとする。せきなんてもってのほか。いのちがけの(おおげさ?)パフォーマンスを終えると、俺はもちろんその場でばた〜んきゅー。
「てる、大丈夫?」
目覚めたらりゅうじの顔がアップで視界に入った。起き上がるとそこは会場ではなくりゅうじの散らかった部屋。
「・・・?」
「てる、いきなり倒れるからびっくりしたよ」
ん〜、自分でも倒れるとは思わなかったな。
とりあえず続く