好きなひとができた
無邪気に笑うところと
やさしいところ
顔もかっこいいし
きっとモテるタイプ
何回か一緒に遊んで
その帰り道に告白された
まだまだ彼について
知らないこともたくさんあるし
もっともっと知っていきたいと
思うのだけど
僕には気にかかることが
ひとつある
(…アプリ)
スマホを眺める
確かに出会いはアプリだし
このマイノリティの世界では
大事なツールそして
なによりも感謝している
けれども僕にはもう
必要がなくて
覗く気力すらも
なくなっていて
なのでいまここで消すのは
とても容易い
しかしどうだろう
彼は
どんな気持ちなんだろう
アプリで友達とか
探すタイプなのかな
別に気にしない
タイプなのかな
「はあ」
もし僕は消して
彼は普通にアプリをしていたら
不安で仕方がなくなるよ
待ち合わせの時間まで残り5分
もうすぐ彼がやってくる
みんなは
どうなんだろう
正直に嫌だって言うのかな
でももし重いって
思われたら
嫌われたりなんかしたら
「おっす」
後ろから肩を叩かれる
びくっとする僕
「あ、おはよ」
「付き合って初デートだね!」
「恥ずかしいこと言わない…で」
彼が一点をみつめている
僕は訳がわからず
彼の視線を追う
その先には
僕のスマホ
アプリが開きっぱなしの
僕のスマホ
とっさにスマホをカバンにいれた
(しまった…)
慌ててしまったことにより
尚更やましいことをしていると
思われてしまった
そんなんじゃないのに
「行こうか」
スタスタと歩き始める彼
会話が出てこない
何を話せばいいのか
「今日は…何してたの」
「寝てた」
「そうなんだ…」
変な汗が吹き出る
歩くスピードが早くて
きっとこれは
「あのさ」
ピタッと止まる
僕も止まる
「…なに?」
振り向く彼
「重いって」
「…」
「思われたくないんだけど」
「…」
「俺、そういうの」
「…」
「…嫌なんだよね」
困ったように頭をかいている
顔を赤く染めながら
「うん」
「…」
「僕も…」
「無理にとは言わない!」
両手を握られる
「え…」
鼻息を荒くして
まっすぐみつめてくる
「俺、妬いちゃうんだそういうの」
「…」
「やっぱ好きだから」
「…」
「ほんと、わがままだとおもうけど!」
「あの」
「まじで!大事にするから!」
「ちょっと」
「大好きだから!!」
「待ってってば!!」
引き離す
きょとんとする彼
指をさす僕
「まわりがみてるから」
顔を真っ赤にする僕
そして真っ赤な彼
でも
わかったんだ
安心したんだ
考えていることは
みな同じなんだって
僕は下を向きながら
そして笑いながら
君に向かって
話し始めたんだ
【終】