それはほんの
ささいな一言だった
『カッコイイね』
何気なく載せた写真
くすんだ肌
手入れのされていない髪
自信のない節目がちな目
それらすべてを
許容されたような
想像を超える快感だった
女にモテるでもなく
友達が多かったわけでもなく
『今日もカワイイね』
『もっと載せてよ』
写真を載せれば載せるほど
じぶんは一層上の
キレイな空気を吸っている
そんな気分で
ゲイ雑誌やGOGOボーイの
アカウントをみては
憧れの対象として
鏡の前のじぶんと比較したりして
[Copy]
美容院にお金をかけたり
[Paste]
洗顔料変えてみたり
[Copy]
髭をはやしてみたり
[Paste]
体を鍛えてみたり
そしていつかの
[Delete]
線の細い制服姿の自撮りを消して
[Delete]
ボサボサだった髪の自撮りを消して
[Delete]
上目使いだった自撮りを消して
[Delete]
[Delete]
[Delete]
[Delete]
[Delete]
[Delete]
[Delete]
[Delete]
[Delete]
[Delete]
スマホを閉じる
気づけば
待ちゆくショーウインドウに映るじぶんは
「…」
ガタイがよくて
いい匂いのする
イカニモな男になっていた