僕は大学4年生になっていた。就職活動も一段落し、卒論やらに追われる日々を送る。バイトは同じところにずっと勤めた。タクヤさんのことは顔すらボンヤリとしか思い出せなくなり、楽しい彼との思い出ももう忘れていた。ただ、タクヤさんが僕に与えて恐怖感はずっと僕に付きまとう。精神的に安定はしたが、ごくたまに震えと過呼吸が襲う。また、誰とも恋愛やらすることができずにいた。なんだか漠然と誰かとそういう関係になるのが怖くて、一種の人間不信みたいのものだったのかもしれない。そんな日々を過ごした。そして大学を卒業を控え、その週でバイトを辞めることになっていたある日、バイト先にタクヤさんを僕に紹介した彼が偶然きた。彼はすごく驚いた顔をした後にすごく笑顔になり、「久しぶり!」と僕に近づいてくる。正直この再会は僕にとってどうでもいいというか、なんの感情も湧かなかった。「お久しぶりです」と僕は仕事が忙しいふりをした。彼は予想通り、タクヤさんの話をする。「お前ら別れたんだって?2年くらい前に聞いたよ。あいついきなりすげえ痩せたり、イライラしてる雰囲気だったから問いただしたら、お前と別れたって言ってたよ」と彼。僕はそんな情報どうでもよく愛想笑いで対応していた。「それとあいつ転勤になったんだよ。出世コースの転勤で今はもう県外に住んでるよ」と続ける。また愛想笑いで応えると、「あっ時間がないからまたな。」と彼は去っていった。タクヤさんの近況を聞いても何も感じない自分がいた。「もう関係ない」と割り切っているというよりも、「彼のことを思い出したくない」という感情がそこにはあったんだと思う。次の日にはタクヤさんの近況を聞いた事すら頭にない状態になった。
そして大学を卒業し、社会人となった。とにかく仕事に慣れるのに必死で毎日がすごいすスピードで過ぎていく、あっという間に一年の月日が流れる。
続きます。