とある月曜日。
月曜はテツは割と早く帰ってくる。
大体おれが学校から帰り、部屋でジャンプを読んでいると、テツが帰ってきて、おれはその音をBGMにしながらジャンプを読むというのが、最近の流れである。
その日も部屋でジャンプを読んでいると、テツが帰ってきてキッチンで片づけている音がする。
そういや、テツもジャンプとか読むのだろうか。
よく電車の中でジャンプやマガジンを読んでいるスーツリーマンを見るけど、テツもあんな感じなのかな。読み終わったらあげようかな・・・。
などと考えていると、台所から
ガシャーーン!
と皿の割れる音。おれは思わず顔を上げ、部屋を出てキッチンへおもむく。
「大丈夫?」
「うん・・・、なんかこれが蜘蛛に見えてびっくりして落としちゃった。」といって黒い塊をさす。
「そっか(笑)あ、ってか触んない方が良いよ。今新聞と袋持ってくる。」
そう言ってテツをそこで大人しくさせる。
おれは新聞とビニール袋を取って戻る。最近はこうして共同生活っぽいことをするのが一々嬉しい。
俺は破片を新聞に載せながら「蜘蛛だめなん?」と聞く。
「うん、虫はあんま好きじゃないけど、蜘蛛は特に。」
実際この前出た時も、テツは勢いよくのけぞりすぎて、壁に頭を強打していた。
頭を押さえながらおれの後ろに隠れるテツはぶっちゃけキュンときた。
「へ〜。そうなんだ。」
「あとは、ゴキブリも。ここはあんま出ないけど。マサはゴキブリ倒せる?」
と、例の低音声変わりしたてボイスで聞いてくる。疑問調のとこで少し声が裏返る。
「うん、なんとか。おれの実家は普通に出たからなぁ。毎年ホウ酸団子作る母ちゃんが夏の風物詩(笑)」
そういうと、テツも少し笑って緊張していた顔がほぐれる。
おれはなんの気なしに
「田舎はすごいよ。蜘蛛がゴキブリ食うんだぜ(笑)」
と言ったのだが、これがテツの想像力をかき立てたらしい。
破片を片付ける手元を見ながら、懸命に想像してしまう自分と、想像しないようにしている自分とで葛藤している表情だった。
またそれが可愛く、おれは悪いことをしたと思いつつも、一瞬ちょっと本気でテツに惚れそうになっていた。