シバは兄さん達が倒れたままピクリともしなくなったのを確認すると、踏んだ刃物を遠くに蹴飛ばした。で、こっちに近づいてきた。
俺は殴られるのか?蹴られるのか?どっちにしても無事じゃ済まない、もしかしたら即葬式モンじゃないか?まあ、この状況じゃ最後にってコクったりできねえな。今まで散々シバに酷いことしたもんな。その報いを考えたら・・・俺、このまま今日で人生終わりだ。
シバ「いイリさん、だっ大丈夫?」
は?・・・いつものシバだ。
「おう。あ、カッチ?」
シバは軽々と片腕でカッチを担いでた。
シバ「か、かカッチ君、き、気絶してるだけだから。も、もうい行こうよ。」
繁華街を抜けて少し進んだ公園のベンチにカッチを寝かせて、シバは水で濡らしたタオルでカッチの顔を冷やした。
シバ「す、すぐ起きると思うよ。し仕事のと、途中だから、ももう行く。」
「あ、シバ」
シバ「さ、さっきのことは、だ、だ誰にも、か、カッチにも言わないで下さい。」
シバ、頭を深く下げると走って去ってった。シバに謝りたかったのと、さっきのシバは何だったのか聞きたかったのと、シバにコクりたかったのと、その他イロイロあったけど、このとき俺は混乱が混乱を呼んでる状態で、シバの名前呼んだものの、その後の言葉が出なかった。俺はシバが去った方を暫く見てたままだったと思う。シバの言う通り、カッチはすぐ起きた。何か言われそう聞かれそうだったから、『さっきのこと誰にも言うなそして忘れろもし言ったらカッチの人生終わ』的に釘刺して帰した。俺は、残ったシバのタオル片手に繁華街に戻ってさっきのビル覗いてみた。倒れてた兄さん達も、シバも、誰も居なかった。夢だったかもしれないって気がしたけど、シバのタオルは実際俺が握ってた。その日どうやって帰ったか覚えてない。翌朝、俺の部屋の窓際には、これまた覚えてないけど普段通り自分で洗濯して干したであろう洗濯物と一緒にシバのタオルが乾いてた。