2時間半後ーーーーーーーーーーー
周りを見渡すとみんな大分お酒が入って盛り上がっているようだった。
そんな中、一平は本当に淡々と緑茶ハイを飲んでいた。
「なぁ、なんで緑茶ハイ?ビールは飲まないのか?」
ふと疑問を抱いたので聞いてみた。
「炭酸と安い酒が嫌いなんだ。本当は専ら日本酒党。」
なるほど。炭酸が苦手と。
「お前、彼女は?」
少し下を向いて、でもこちらを向き直してはっきりと言った。
「俺はゲイだから、女に興味が無い。」
!?
衝撃的な告白をさらっと言いやがった。
本当なんだろうか、こんなみんながいる前で言えることなんだろうか。
「本当だよ。みんな知ってる。」
一平がそう言うと周りは頷いた。
「初めはビックリしたけどな。どうやら本当らしいんだよ。全く女に興味無いでやんの。勿体無い、モテるのに。」
裕司は恨めしそうに一平を見た。確かに一平はモテそうだ。
向かいの席に移動していた一平の顔をよく見てみる。
幅の広い二重の目、高い鼻すじ、薄い唇、整った顔をしていた。可愛いと言えば可愛く、格好いいと言えば格好よく映った。
「何じろじろ見てんだよ。」
「いや、なんでもない。じゃあ彼氏は?」
「いない。今は自分のことでいっぱいいっぱいだからそんな余裕無い。」
「ふーん、どうやって知り合うんだ?」
「ゲイ専用のネットの掲示板があったり、あとは新宿二丁目に行ったりだな。俺は滅多に行かないけど。」
なるほど、新宿二丁目は聞いたことがあるぞ。確か同性愛者達のお店が沢山あるところで、ゲイがよく集まる場所だったはず。
「滅多にってことは行ったことはあるんだ?」
「あぁ、あるよ。つっても殆ど同じ店にしか行かないけどな。」
「へぇ、今度連れてってくれよ。」
何故そんな事言ったのかは分からない。興味本位だったのか、それとも一平と親睦を深めたかったのか、何故だか、連れてってくれと口走っていた。
「気が向いたらな。あっ、店員呼んで、緑茶ハイ。」
驚いた、絶対に断られると思ったのに。意外だった。
その後も宴は進み、終わりの時間は5時だった。
俺は疲れと共に、謎だった秋山さんのことがわかって楽しいと思える飲み会だった。
そういえばその一平だが、結局最後まで緑茶ハイで、大した酔っ払ってる様子も無かった。強いんだなぁ。
明日の予定は特に無かったからか、まだ帰りたくないと思った。
でもそんな気持ちとは裏腹に、家路を辿っていた。