仕事が終わり外に出ると
辺りはもう真っ暗で
切っていた携帯をつけると
いつものマークが光っていなかった
「あれ」
既読のマークがない
返信もない
いつもの今頃なら
お疲れ様のメッセージが
あってもいいのに
焦る
調子が狂う
まさかそんな
そういえば今日は
二丁目でイベントが
あったっけ
そういったものに
興味はないと思っていたけど
実は内緒で友達と
焦る
血が逆流する
いやいや
まさかそんな
そういえば昨日
明日は仕事が早く終わると
言っていた
きっと職場の人と
ご飯でも食べてて
でもだったらメッセージを
読んでいてもいいはずなのに
生ぬるい空気が頬をなでる
不安ばかりが胸を満たし
よくないことばかりを
想像する
浮気してるのかな
電波も届かないような場所に
いるのかな
こんなに不安なのは
ぼくだけなのかな
女々しい自分が
さわぎだす
突然液晶が光る
電話着信のマーク
びっくりして携帯を
落としそうになる
「…もしもし」
受話スピーカーの向こうから
大好きな人の声
「うんいま仕事終わった」
「寝てたの?アホだなぁ」
「うん。これから帰るよ」
「じゃね」
本当は
跳び跳ねたいほど嬉しいのに
声を聞くと
つい大人ぶってしまう
ニマニマして
安堵の余韻にひたっていると
ピコピコとメッセージ
『おそい、早く帰ってきて』
ぼくの夏ばて症状は
まだしばらく続きそうだ