朝方目が覚めて
洗面所で歯を磨く
「ん」
鏡の前には
一本の歯ブラシ
彼氏の歯ブラシ
にまにまと微笑む僕
昨日から同棲を始めた
大好きな彼氏と
もう一年以上
遠距離を続けてきた
離れていた時間を
取り戻すんだ
苦手な掃除もがんばる
洗濯もがんばる
料理だってがんばる
だからたまに喧嘩をして
家を飛び出したときは
追いかけてきたりせず
そのまま家にいて欲しい
きっとパチンコ屋で
時間をつぶして
頭が冷えたころ
静かに帰ってくるから
寝室に戻ると
まだ彼氏が横になって
寝ていた
「かわいい」
でもいつか
嫌いになる日がくるのかな
顔も見たくないなんて
思う日がきてしまうのかな
いやだな
それだけは避けたい
セックスレスになって
カラダだけ他の男に
求めるようになったり
するのもいやだな
悲しいよ
僕は不安になり
寝ている彼氏の口もとに
キスをした
目をあける彼氏
「…」
「ごめん、起こした?」
「ん…」
「…」
今度は彼氏から
キスをされる
「俺んちの歯磨き粉のにおい」
「うん、借りた」
「借りたなんていうなよ」
「…」
「もううちらのもんだろ」
ふっと抱き寄せられ
ベッドの中へと
引き寄せられた
「会社行かなくちゃ」
「いいじゃん、もうちょっとだけ」
「うん…」
浮気なんてしたら許さない
掃除なんかしてやらないし
洗濯物も彼氏の分だけ
柔軟剤入れてやらない
弁当だって彼氏の好きな
からあげ入れてやらない
「もし…浮気なんてしたら」
「俺が?浮気したらなに?」
にまにまと微笑む僕
「教えてやらないっ!」
浮気なんてしたら
彼氏の歯ブラシで
洗面所を掃除してやる
それくらい僕は
彼氏を愛している
愛のカタチは
フサフサ頭
二本の歯ブラシは
今日も仲良く
寄り添っている