手術の日、シンは朝からずっと病院にいた。
家にいてもやることなかっただろう。俺も病院に行こうか、と言ったが大丈夫と断られた。
俺が逆の立場でも多分断っていたと思う。
俺は日中は買い物に行き、夕方家に戻った。
家にある地図を開いて総合病院を探す。ここでシンの友達とシンは頑張ってたんだな。
日が暮れてきたので部屋の明かりをつけると、シンが帰ってきた。
「ただいま。」
「おかえり。どうだった?」
「うん、とりあえず、手術は成功した。脚も切らなくて良いって。」
「そっか。良かったな。」
「うん。」
だけど浮かない顔。多分今までも良くなる良くなるって言われて、でも手術になったから手放しで喜べないのだろう。
俺は晩飯を作り、それを二人で食べた。
食べている内にシンもちょっと明るくなってきた。朝から何も食ってなかったのかな。
「引越しの話だけどな。」
「あ、うん。」
「シンさえ良ければなんだけど、友達が退院するまで、居て良いからな。」
「え、あ、そんな。それはなんか悪いよ。」
「いや、良いって。」
「でも・・・、そしたらカズさん恋人探せないじゃん。」
素でそう言われて俺もちょっと悲しくなる。俺のことちょっとでもそういう目で見てくれないのか。
まぁ今までは就活。今はお見舞いだもんな。
「それは良いよ。」
俺は、なんなら という言葉を飲み込んで黙る。
それを怒ったととらえたのかシンは
「ごめん、せっかく親切心で言ってくれたのに。」
と少ししゅんとなっていた。可愛い。なんで今までこんなのと生活して何もしないで済んだのだろう。
俺は冷静に食事しながらやり場のないもやもやを抑えていた。
少ししてからシンは
「じゃあお言葉に甘えてそうする。就活も終わったし、俺がご飯作ったりする。」
「お、ほんとに?じゃあ楽しみにしてるわ。でも無理すんなよ。」
そんな感じで契約は延期となった。