「ねえ先輩」
男子校だからってのも
あるのかもしれない
最初は尊敬してただけ
カッコよくて頼りになって
自然と優しいところに
惹かれていて
いつの間にか
一個上の先輩を
好きになってしまった
「ねえ先輩」
だからどんなお願いだって喜んでした
おつかいだって喜んでした
先輩に好かれるなら
必要とされるならって
いつの日かそれが度が過ぎて
性のはけ口にされ始めた
それだって多少でも
愛があれば
なんて
体育館の裏
旧校舎のトイレ
放課後の非常階段
愛なんてそこにはなかったのに
知らない先輩たちに紹介され
汚いものを見せつけられ
汚されて
そんな夕暮れの放課後
教室の窓から
校門の外で
女の子と一緒に帰る
先輩をみた
「ねえ先輩」
吐き気がした
なにがしたかったのか
先輩との思い出は
なにもかもなくなった
よごされたカラダと
きたない心の俺だけが残った
遠くでサイレンが鳴る
どうやら飲酒運転のようだ
酔った金髪の男が中から出てきた
おまわりさんどうにかならないですか
涙を流しながら頭を下げる
人の心をもてあそんでおいて
身勝手な男に吐き気がする
俺は目深にかぶった帽子をとり
笑顔で白い歯を見せた
驚いた男は口をあけ
名前を呼ぼうとするが
声が出ない
男に手錠をつけて
俺はパトカーに乗せた
「ねえ先輩」
話しの続きはあとでしましょうか