11月中旬になると俺も気持ちも仕事も落ち着いて、学生時代の友人と遊んだりするようになる。
トシはもう東京いないし、まぁ俺の失恋も一先ず懸念することは皆無となった。
今な らトシとも爽やかに会える。と思う。
が、懸念点がひとつだけある。
学生時代の友人の間での遊びとして、みんなで酒を飲みながら映画を観る、というのがあったのだが、
どうもホラー映画の人気が高く、結構な頻度でホラー映画を観ることになっていた。
俺はホラー映画が大の苦手だった。
器の大きさにイマイチ自信がないのもこれが原因で、トシがいた頃はまぁ見ても家に帰って一緒にトシを抱えて寝れるから、問題はなかった。
が、トシがいなくなった今、一人で耐えられるだろうか。
一応人と住んでるが、相手は家に居ないことも多いし、何より一緒に寝て抱かせて欲しいという申出なんて
最初の「お互いタイプじゃないこと」という条件を家 主が破ることになりかねない。てか、ほぼ破ってる。
俺としては何か抱ければ、この際女性でも良いから抱きかかえていたいのだけど、向こうは当然そうは感じないだろう。
そもそも、こんなホラーが苦手なのは、俺が幼少の頃、霊感が強かったことが原因である。
親戚公認の強さの霊感は時として、寝ている時にも目をつぶっていても映像としてあらわれ、
見かねた親がどこかの寺か神社(この辺よくわからないが)へ除霊をしにつれていってくれた。
その除霊以来きれいさっぱり霊感はなくなったが、逆にそれがリアルで、いまだに俺は霊を信じている。
そんな事情もあり、俺はひとりでホラー映画(の余韻)に耐えられるかどうか、それが最近唯一の悩みとなっ ていた。
それ以外は仕事もまぁまぁ、食欲の秋で、恋も徐々に前向きな感じな日々が続いていた。
シンタローの方は顔を合わせることはなかったが、家賃は払われていたため俺も気にしていなかった。