いつものように考え事をしながら飯を食い終わってキッチンで洗い物をしていた。
来年の5月までだからまぁゆっくり相手を探す時間はあるよなーなんてぼんやり考えていると、突然
「あの、中瀬さん」
と話しかけられる。
俺は気配に気づかなかった為、ちょっと驚きながらも
「んっ、何??」
と振り返る。が、振り向いた先に相手の顔がない。そうだった。今まで付き合ってきたやつの癖で、ついそこに顔を探してしまう。
俺はちょっと視線を下 げる。シンタロウもやや顔を上げている。
「あの、俺パソコン壊しちゃって、ちょっと直し方わからないから修理に出すか、買おうか迷ってるんですけど。」
そこで一旦区切る。続けて言いにくそうに
「リビングにパソコンあるじゃないっすか。あれって、使えないですか?」
そういって、リビングのパソコンを指す。
俺は指した方に視線を向けながら、随分使っていないパソコンの存在を久しぶりに思い出す。
確かトシと住んでいた頃に共有していたが、その内お互い一つずつ持つ様になり、プリンター接続専用としていたやつだった。
プリンターもお互いそんな使わないことから、布を被せたまま長らく放置してあった。
「あぁ、良いよ。OS確かXP だったかな。多分使えると思う。」
「ほんとですか!助かります!」
「うん、シンタロウ君の好きな時に使って良いし、なんなら部屋に持ってって良いよ。」
俺がそういうとさすがにそれは断り、
「ついでなんすけど・・・、下のプリンターも使っていいですか?就活でエントリーシートを印刷したい時あるんです。」
「あぁ良いよ。インクもうだめになってるだろうから交換しないと使えないと思うけど、全然良いよ。」
そういうと彼はぱっと笑顔になり、
「まじですかー!ほんと、ありがとうございます!」
と礼を述べる。
初めて顔を間近で見たが、一重の割に目が大きかった。黒目も大きい。
いつだったか、黒目が大 きい人は幼い印象を与えると聞いたが、そのせいで童顔な印象を与えるのかもしれない。
俺が見てた時間が思っていたより長かったのか、相手は???という顔をし始めたため
俺は慌てて話題を戻す。
「一応起動させてみてな。だめだったら最悪直るまで俺の貸すし。」
「や、それはさすがに大丈夫です。それより、」
と言ってから
「シンタロウ君て長くないすか?シンとかシンタローとか呼び捨てでいいですよ。」
「おーまじで笑 いいの?じゃシンタローも中瀬さんとかじゃなくて名前で呼んで良いよ。」
「はーい。じゃぁカズさんで!」
そういうとパソコンのスイッチを入れにパタパタ向かう。しばらくPCがシューーーココココという音 を立てていたが、うまく起動したようだ。
「これからリビングで作業してることが増えると思うんですけど、よろしくお願いします。」
「ほいほい。まぁ俺も部屋にいること多いし、気にすんな。就活頑張ってな。」
「ざっす。」
そんな感じで久しぶりに会話をした。
が、また数週間話さない期間が続いたりする。シンも思ったよりリビングで作業することはなかった。
後で知ったが、気を使ってできるだけ学校や友達んちで作業をしていたようだ。