シュウと飲んだ次の日ににその子からメールが届き、その夜に引越しの日取り、荷物の量を教えてもらった。
物件を見に来なかった理由の一つに荷物の少なさもあるのだろう。
俺の部屋にある物の総量の3分の1にも満たない量だった。
手続きやら何やらを済ませて 家にやってきたのが、飲みから2週間後。
インターフォンが鳴ったのでドアを開けると、画像で見た子が立っていた。
やっぱり男としてはぴんとこない。思ったより肩幅はあったけど、童顔で少年って感じだった。
「あ、初めまして。西野シンタロウです。」
そういうと、頭をペコッと下げる。お互い電話でもう名乗り合っていたが、会うのは初めてなので一応自己紹介をする。
「どうも、中瀬カズマです。よろしく。」
「よろしくお願いします。」といって握手を交わす。俺の方が手も大きく、なんだか親戚の子が長期休暇に泊まりに来た感覚だった。
部屋にあげると、窓からの眺めとか自分が住むことになる部屋(今は何も荷物がない空き部屋)をせわし なく見て回っている。
引越しってわくわくする気持ちはわかる。
一通り見て回って、トイレに行ったりしたあとに
「なんかすげー良い物件見つけちゃった。」
と言って俺に笑いかけた。さわやかな笑顔だったし、多分落ちる人はこれだけで落ちるんだろうな。
ソファの背もたれに腰掛けながらそんなことを思った。
俺もなんとなく、一緒に過ごすのには全然問題無さそうなことを感じ安堵する。性的な魅力を感じないことにも安堵する。
そうこうしている内に引越しの荷物が届く。業者の人が玄関まで入れてくれ、それを彼が自分の部屋に運んでいく。
俺も少し手伝おうかと思ったが、必要ないくらい量が少なかった。
ちなみにうちは、共有リビン グ、個人部屋2つ、トイレ、キッチン、風呂という間取りになっている。個人部屋をそれぞれ俺と相手が使う。
家賃は折半。向こうが払わせて欲しいとのことで今月から払ってもらうことにした。
水道光熱費等は、元恋人と住んでた時ののルールを適用し、相手が学生、俺が社会人ということもあり、俺の方が若干多めに出すということで落ち着く。
まぁ、部屋の広さと立地の割には良すぎる物件だったし、話はあっさりまとまった。
水道光熱費の話のまとまりと同じくらいに引越しや荷物の整理もあっさり終わり、あっさりと彼はこの空間に溶け込んでいった。
引越しの夜は本当は引越し祝いかなんかで夕飯でもおごってあげようかと思ったが、俺に外せない用事があること を伝えると
相手も用があったらしく、まぁ二人での食事は延期。
相手も俺もお互いタイプじゃない、ということからして延期と言いつつ、二人での外食は実現されないままルームシェアの期限が来てもおかしくないことを感じていた。
それくらいお互い、別世界の人間 という感覚を肌で感じていたと思う。