図書館につくと、真っ先に孝太さんを確認した。
いつもと同じ席で、孝太さんは参考書を山積みにして、黙々と勉強をしていた。
俺は気づかれないように、後ろから迫っていき、すぐ後ろから孝太さんを覗いた。
耳栓をしているので俺の存在には全く気付かず、淡々と鉛筆を走らせている。
姿勢もよく、真剣な顔つきで普段と全くギャップの感じないとても綺麗な字で論述している。
辺りを見渡すと、時間が昼過ぎのため人があまり見えない。
俺はそれを確認すると、孝太さんに頭に顔を近づけた。。。
シャンプーの良い香りがする。
抱きしめたい気持ちを抑え、俺は孝太さんの肩を叩いた。
孝太さんは、ゆっくりと後ろを向いて、耳栓を外した。
「あぁ、昇。もうテストは終わったんだ。」
孝太さんは疲れた顔をしていたものの、俺に微笑みかけてくれた。
「はい、さっき終わって、今来ました。」
あの日から、テストやらなんやらで孝太さんと会うのは二日ぶりである。
もちろん、メールで少しは連絡を取り合っていたし、二日という短い期間なのだが、孝太さんに会うのが本当に久しぶりの気がする。
「あれから、体調とか大丈夫?」
孝太さんは心配そうに俺に問いかけた。
「大丈夫っすよ。孝太さん、処女喪失したわけじゃないんだから、そんな心配いらないっすよ(笑)」
「それも、そうだな」
孝太さんは照れながら微笑んだ。
「でも、心配してくれてうれしいです。ありがとうございます。」
お互いに見つめ合いながら、沈黙が流れる。
心臓がドキドキする。
孝太さんの瞳から目を離せなくなる。
今すぐにでも抱きつきたい。
(あ〜、俺ってやっぱし孝太さんのことが好きなんだ・・・)
「俺、向こうで勉強しますね。」
「うん、分かった。分からにところがあったら、いつでも相談おいで。」
俺は、いろんな気持ちを我慢して、視界に孝太さんが入らない席に腰を下ろした。
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「ふー、終わった〜〜。」
1単元の論述練習が終わり時計を見ると、2時間ほど経過していた。
ずっと座りっぱなしだったので、少し休憩がてらに図書館の一角にあるトイレに向かった。
ただでさえ人が少ない図書館なので、トイレは小便器3つに個室が2つという狭さ。やっぱし人は誰もいなかった。
俺は用をたし、手を洗っていた。
とそこへ、人が入ってきた。
鏡越しに見ると、それは孝太さんであった。
「奇遇だね。勉強順調?」
「うーーん、なんとかっす」
「そっか、あんまし根詰めちゃ駄目だよ。」
「は〜〜い」
孝太さんは、ジョロジョロと俺の後ろで用を足しながら話しかける。
俺はその少し間抜けな姿をして俺に話しかける孝太さんが面白くて吹き出してしまった。
「なんだよ、人の小便姿見て笑うなよ〜〜。触っちゃうぞー」
と、用を足した手を俺のほうに向けてきた。また、孝太さんの無邪気な面が現れた。
「勘弁してくださいよー。」
俺は、笑いながら孝太さんの腕をつかんで進行を止めた。
「冗談だよ。あれ、その腕のアザどうしたの!?」
笑っていた顔が急に冷める。
右腕を見ると、確かに出血はしていないものの青アザができていた。
「あ〜、これ。たぶんさっき事故ったときについちゃったんだと思います。」
「事故!?どうゆうこと!?」
俺の腕を掴む孝太さんの力が強くなる。
「あ、事故っていうか、俺が赤信号で飛び出しちゃって、車とぶつかりそうになって、避けたらこけちゃったんですよ。車とはぶつかってないし、大したことないっすよ。」
「何言ってるんだよ。こんなにもアザつくって・・・。警察は呼んだよな?」
あまりにも心配して俺の腕を見つめる孝太さんに、俺はバツが悪そうに
「・・・呼ばなかったです。。。」
「なんで!?」
「だって、車とは接触しなかったし、俺の完全な不注意だったんで・・・」
「だからって。呼ばないことはないだろう。昇も法律学んでるんだから、そういう時は、やらしく頭使わなきゃ駄目だろう。」
「す、すいません。。。」
「・・・ごめん、俺こそ言い過ぎた。痛かったのは昇なのにな。
でも、昇のことが心配でさ。」
また、胸がドキドキする。
と、孝太さんは俺の腕を引っ張り、奥の個室に連れて行き、鍵を閉めた。
そして、俺をギュッと強く抱きしめた。
「・・・後で、一緒に病院行こうな。。。。」
「。。。。はい」
俺は孝太さんの温もりを体のすべての神経で感じながら、答えた。
どのくらい抱き合っただろうか。
どちらからともなく、体を離した。
「誰か来たら、どーするんですか。」
「大丈夫だよ、絶対バレないから(笑)」
ニコッと俺に笑いかけてくれた。
「だから、キスもさせて。」
「えっ。。」
孝太さんは返事を待たずに俺の唇を奪った。
俺らは、会えなかった2日間を取り戻すかのように、激しくキスをした。
ガチャ!!
とその時、誰かがトイレに入ってきた。
孝太さんは一旦キスをやめ、人差し指をたてシ〜〜っとやってきた。
小便の音がなれる。
俺らは息を殺して、その人がいなくなるのを待っていた。
ところが、まだその人が用を足している最中に、孝太さんはニカっと笑い俺にキスをしてきた。
(ちょ、孝太さん、バレるって。。。)
さすがに、チュパチュパと音は出せないため、俺らを互いの息を共有するかのようなキスをした。
ハアハアと息しか感じれないが、逆にその状況が俺を興奮させた。
無事に、その用を足していた人がトイレから去った頃には、二人とも息を我慢していたこともあり、呼吸が荒々しくなっていた。
「はあはあ、、こう、たさん。。。はあ、バレたらどーすんるんですか。」
「大丈夫、だよ。。。ハア、絶対バレてなかったから、ハアハア。。。時にはスリルがあっていいだろ」
「まあ、確かにそうっすけど」
俺らは、互いに微笑む最後にもう一度キスをして、個室から出た。
お互い鏡の前で、乱れた髪を整えてトイレから出た。
トイレから出るとき、孝太さんは後ろから俺をやさしく抱いてくれ、
「昇、好きだよ」
と、耳元で囁いた。
俺は立ってるのがやっとだった。。。