おれがテツに惚れるということは色んな意味で避けるべき事態だ。
まずおれは今恋人がいるのだ。会えてないけど、会えないからって理由で浮気をしていたら、この先どんな人とも上手くやっていけない。
絶対会えない期間が出てくる以上、そこは越えるべき壁だ。
第二に、おれとテツはうまくいけば、3年は暮らしをともにするルームメイトだ。
テツの最初の条件はではないが、干渉しすぎるというのは、やっぱり良くない。
互いにある程度の距離を置いといた方が良い。
そもそも、おれがもしテツに告白するとして、おれがゲイであることをまずカミングアウトしなければならない。
最後の理由は、これはおれの推測だけど、テツは先日の客のことをどうも好きかもしれないということだ。
最初に会った時も見つめてたし、この前も堂々と見れば良いのに、テレビをカモフラージュにしてまで、盗み見ていた。
テツはあぁいうちょっと馴れなれしいヤツが好きなのか?
おれがテツのことを考える時、今の恋人よりも、ルームメイト云々よりも、そこが一番気になっていた。
実は最近はテツと夕ご飯を食べることが多い。
誘えば向こうも嫌がらずに一緒に食ってくれる。
一応おれの手料理をおいしいとも言ってくれるし、正直テツが食べてるとこを見るだけでおれは満足だ。
この感情は弟や子供を持つとこんな感じなんだろうか・・・。
だいぶ話もするようになった。相変わらず、突っ込んだとこは聞けないけど、テツがジャンプとマガジンを読んでることがわかったし、映画が好きなこともわかった。
今度一緒に見ようぜって言ったら、リビングのDVD再生機壊れたまんまだよっていうから、じゃおれの部屋で見ようということになったりもした。
いつだったか、なんでこんな金ありそうな家なのに大学に行かないのって思わず聞いたことがあったんだけど、その時テツは意外にも、大学は今でも少し考えてるという、拒絶でない返事をしたのだった。
おれは聞いた瞬間はしまった、と思ったが、そこまで過剰に反応することもないんだな、と思い知らされた。
おれらはホントに話すようになった。
おれもサークルのことを話すし(テツはあんま仕事の話はしなかった)、一緒にテレビも見るようになった。
なんだ、普通にテツと仲良くなれんじゃん。