俺達の間に大きすぎる溝が出来てから2日目。
この日も俺は全然寝付けずに、暇つぶしにcool boysの掲示板を覗いていた。
何を書く事もなく、何を読み漁る事もなく、ただただ水色の画面をぼーっと眺めるだけだったけど。
ちゃんと眠くなるはず・・・。目が疲れればそのまま寝られるはず・・・。
そんな事を思いながら、「Hな話掲示板」のあっちこっちをクリックする。
そのうち、俺の中で「何か書こうかな・・・。」って気持ちが出てきた。
Hな話か・・・そういやきいちゃんのオナニー事件かなりエロかったよな・・・。
こっそりキスした事もあるし・・・。初エッチもちゃんと覚えてるし・・・。
書いてみるか・・・。
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この日から「俺の彼氏は元ノンケ」を書き始める事になった俺。
最初は暇つぶしで、気持ちを紛らわすために書いていた。
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きいちゃんのイク時の声って・・・どう書けばいいんだろう・・・。
その前に俺の喘ぎ声どんなんだろ・・・。
何か考えると恥ずかしいな・・・。
そんな事思いつつも、少しずつ指を走らせて、メモ帳に書き綴っていく。
それが何だか楽しくもなってきたが、すぐにその楽しい気持ちも薄れて、とにかく睡眠薬代わりに書き進めて、きいちゃんへの気持ちを紛らわす一心でいた。
きいちゃん・・・!
俺達・・・どうすれば良いんだよ・・・!
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初投稿から2日が経った週末の土曜日。
きいちゃんは午前中に逃げる様に出かけてしまった。
週末まで俺を避けるの・・・??
きいちゃん・・・!
ソファに寝たふりをしてた俺は、胸が苦しくなる。
その苦しさを解くために、俺はまたメモ帳を開いて、話の続きを書きまくった。
親友として楽しかったこととか、辛かったこととか、色んな事を思い出して、とにかく今の寂しい気持ちを紛らわすのに必死になっていた。
そして投稿が増えるにつれて、「続き楽しみにしています」とか「頑張って下さい」っていうコメントが寄せられる様になって、それがせめてもの救いになっていた。
でもそれと同じくして、きいちゃんがそばにいてくれたらもっと別の意味で頑張れるのに・・・って思っちゃう。
嬉しいはずの応援コメントが、時にはナイフみたいに俺の心を切りつけてきたんだ・・・。
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はぁ・・・また逃げちまった・・・。
俺ってここまで臆病だったんだな・・・。情けねぇ・・・!
9時頃財布と携帯と鍵だけをジーパンにねじ込んで家を出た俺は、駅前の繁華街を1人さまよっていた。
ダイソーで意味もなく品物を見て、ツタヤであてもなく棚を眺めて、マックで一人ぼーっとしながらコーヒーだけを啜って、無駄に時間を過ごす。
こんな事して何になるんだろう・・・。
もっと早くゆうに謝ってたら、今頃2人でソファに座って、テレビを見ながらキスとかしてたんだろうな・・・。
でも・・・もう手遅れなのかもな・・・。ここまであいつを避けちゃってる俺に、ゆうはもう愛想が尽きてんだろうな・・・。
料理もぱったりとしなくなって、ごみ箱には弁当の空き箱が捨ててあったし・・・。
あいつの服もリビングの隅に置かれてるし、スーツもずっと出しっ放しだし・・・寝室に極力入りたく無いんだな・・・。
ゆう・・・。
俺達・・・どうなっちまうんだ・・・?
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そのまま無駄に何日も過ぎ、2人の心は荒んでいった。
気づけば既に6月中旬。もう約2週間、一言も口を利かない2人。
あれほど料理が得意だった悠太も、唯一する家事は洗濯だけになっていた。
黙って霧斗の服も洗濯していたのは、きっと悠太の中にまだ霧斗への優しさが残っていたからなのかも知れない。
洗濯された服を見た霧斗も、ありがとうの一言がどうしても口から出ず、少しずつ、少しずつ、2人の関係が崖っぷちに近づいていくのを、唇をかみしめてただただ見ているだけだった。
<続きます・・・。>
あとがき
本当に2人とも情けなくて、いまさらですが腹が立ちますね。
読んでくださってる皆様にも、その様に思われても仕方の無い時期です。
こんな情けない僕たちの行く末を、最後までお読み頂けたら、本当にありがたい事です。
最終回まで残りわずかですが、最後までヨロシクお願いします。