きいちゃんとあんな喧嘩してから飛び出したのは良いけど・・・。
もう10時過ぎてるし・・・明日も仕事だし・・・。
何であの時怒っちゃったんだろう・・・!
俺が怒る必要なんてなかったのに・・・!
今さら後悔した。
もしタイムマシンか何かあれば、戻ってやりなおせるのに・・・そんな事出来やしない・・・。
ドラえもんじゃないんだから・・・。
俺ホントバカだよな・・・。
小さなミスであんなに落ち込むほどきいちゃんは悲観的じゃないって知ってるのに・・・。
相当なミスを犯したからこそあれだけ打ちひしがれてたはずなのに・・・。
なのに俺・・・ミスぐらいで落ち込んでどうすんだよって言っちゃった・・・。
でもホントに俺きいちゃんのあんな姿見てられなかったんだよ・・・。
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マンションの近くをあてもなくプラプラして、コンビニでFine Boysの最新号を立ち読みして、結局11時過ぎに帰る事にした。
いや、帰らざるを得なかった。
きいちゃんと顔を合わせたくなかったけど、明日仕事だから仕方ない・・・。
重い足取りのまま俺はマンションに戻って、ドアに鍵を差し込んだ。
鍵開けっ放しで飛び出したけど、ちゃんと締まってる・・・。
え・・・?きいちゃん締めたの・・・?
俺が出てった後、あいつ鍵締めたの・・・?
俺は訳の分からない寂しさと虚しさを感じずにいられなかった。
玄関を開けて中を覗くと、電気が消えて暗かった・・・。
あいつ・・・先に寝たの・・・?
俺が飛び出したの心配じゃ無いの・・・?
さっきから感じていた寂しさが更に増した。
俺、心のどこかで、きいちゃんが心配して、起きて待っててくれるとか期待してたから・・・。
期待した俺がバカだった。
きいちゃんはもう俺の事どうでも良くなったんだろうな・・・。
なら俺もそれで良いよ・・・。
勝手に期待して、勝手に勘違いして、勝手に心を閉ざした俺。
寝室のベッドの上には、爆睡してるきいちゃんがいた。
もう何が何だか訳分からなくなって、俺の枕と掛け布団をベッドからもぎ取って、リビングのソファに倒れ込んだ。
その時すでに俺の目は涙でいっぱいになってた。
きいちゃん・・・!
どうして・・・?
俺もうきいちゃんが分からなくなって来てるよ・・・?
もう俺の事嫌いになったのかな・・・。
きいちゃんと知り合ってからの5年間の思い出が頭をよぎる度に、俺の目からは涙があふれて止まらなくなっていった。
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4時頃目が覚めて、ふととなりを見ると、いつもいる筈のゆうがいない事に気づいた・・・。
あれ・・・!?枕も掛け布団もない・・・。
ガバッと起きて、そっと寝室のドアを開けてリビングの様子を覗くと、ソファの上に横たわる体が見えた。
ゆう・・・?!何でそんなとこで寝てるんだ・・・?!
・・・そっか・・・。もう俺と一緒に寝たくなくなったのか・・・。
死ぬまでほっとくって、もう訂正の余地はなくなっちまったのか・・・。
クソッ・・・!!何でウザいなんてひどい事言ったんだよ俺・・・!!
思っても無い事口走ってゆうを無意味に傷つけて何になるんだよ・・・!!!
ふがいない自分に腹が立った。
ゆうは俺の事を想って心配してくれたのに、そのゆうに向ってあんな態度取るなんて・・・何て俺はおろか者なんだよ・・・!!
朝起きてゆうと目が合ったら何て言えば良いんだよ・・・。
むしろ合わせる顔もないのにどうすれば良いんだよ・・・。
・・・もう・・・出よう。
駅前のマックで時間潰そう。
そっとリビングを抜け、歯を磨いて顔を洗って、スーツに着替えた俺は、4時半という早すぎる時間に家を出た。
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きいちゃんがそーっと出てくのを、俺はちゃんと気づいてた。
泣き疲れてるはずなのに浅い眠りで、起きては寝て、起きては寝てを繰り返し、ちょうど目が覚めた時に玄関の閉まる音がしたんだ。
何で・・・こんな早くに出たんだ・・・?
まだ4時半だし・・・。
・・・もしかして・・・俺の事避ける為に・・・?
ウソだろ・・・?そうなの・・・?
そうだとしたら・・・どうしてだよ・・・。
泣きそうになったけど、もう涙も枯れて出てこない。
もう虚しすぎて虚しいって感情も麻痺してしまってる。
もうダメなのかな・・・。
別れるしか無いのかな・・・。
嫌だよ・・・きいちゃん・・・100歳まで一緒に生きるんだろ・・・?
一軒家を建てて庭に露天風呂作って一緒に入るんだろ・・・?
定年退職したらいろんなとこに旅行に行くんだろ・・・?
最期まで・・・最期まで一緒にいてくれるんだろ・・・?
枯れてたはずの涙が戻って来て、俺は朝から枕を濡らして悲しみに暮れてしまっていた。
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この一件から、悠太と霧斗の2人は、お互いを避け、向き合う事を恐れるチキンになってしまったのだった。
互いの誤解と、素直になれない心が招いた最大の危機は、あんなに想い合っていたはずの2人を引き裂いてしまいそうな状態へと陥れてしまう。
<続きます・・・。>
あとがき
この回を2人で書いてて思った事は、2人とも勝手に勘違いして臆病者になってしまったのが一番の原因だったんだろうなって事です。
ハッピーエンドだと自分たちで良く分かっていても、この時期を思い出してこうやって書きつづると、本当に胸が締め付けられます。