今日から、第二氷河期の話に入ります。
辛い内容ですが、最終回までお付き合い頂けるとありがたいです。
カズさん>
おっしゃる通り、あんまりファストフードを食べすぎると不健康ですよね^〜^;
実際ファストフードは月1回行くか行かないかのペースで、この日はたまたまロッテリアが頭に浮かんだんですが、これからは一層気を付けないといけないですよね。もう20代後半手前の僕たちですからね^〜^;
<続き>
霧「ただいま・・・。」
俺「お、おかえり。・・・どしたの?」
社会人2年目。今年の6月に入った直後。
きいちゃんがメチャクチャブルーな状態で帰ってきた。それにかなり遅い時間に。
思わずびっくりして、それでもこっちまで様子が変になっても意味無いから落ち着いて話を聞いてみる事にした。
霧「仕事でメチャミスった・・・。」
俺「そ・・・っか・・・。だからこんな遅かったんだね。」
霧「あんなミスしたの初めてだったから・・・メッチャ怒られたよ・・・。」
きいちゃんは終始ブルー入りまくりで、俺はとにかく背中さすって慰めるしか出来なかった。
俺「ダイジョーブ。今度から気をつければ良いんだよ。ね。」
霧「うん・・・。」
俺「きいちゃんなら取り返せる。ね。いっつも頑張ってんだから、その調子で気をつけながらさ^ー^」
霧「うん・・・。」
俺「腹減ったろ?俺もう食べちゃったけど、ちゃんとお前の分あるから、今あっためてくんね。」
霧「食欲無い・・・。」
俺「ん〜・・・でも少しは食べなきゃ。明日も仕事なんだし、体力つけないとだぞ^〜^」
ソファで軽く打ちひしがれてるきいちゃんをそのままにして、俺はキッチンでカレーを火にかけて、ナスを切った。
偶然にもこの日の夕飯は、きいちゃんの好きな「ナスとひき肉の辛口カレー」。
食欲無いって言ってるけど、これならちゃんと食べてくれそう^ー^
=====
俺「きいちゃん。出来たよ^ー^」
霧「あ〜・・・うん・・・。」
ソファで微動だにしてなかったきいちゃんに目線を合わせて、ダイニングテーブルに手を引いた。
テーブルの上のカレーを見て、きいちゃんは俺を見つめる。
霧「これ・・・ナスとひき肉・・・?」
俺「え、そうだよ^ー^」
霧「マジか・・・嬉しいな・・・^n^」
やっと少しだけ笑顔を見せてくれた^0^
少しホッとした俺。
霧「うん・・・ウマい・・・。」
俺「良かった^ー^」
霧「ありがとな・・・。」
俺「どういたしまして♪お代わりもあっから^〜^」
霧「うん^m^」
食べ進めるうちに、やっときいちゃんの顔がこわばりを緩めた。
お代わりはしなかったけど、少し大盛りにしといたカレーをちゃんと完食してくれたから、内心とても嬉しかったんだ。
霧「ごちそうさま。美味しかったよ^^」
俺「ありがと。あ、今日は片付けは良いよ。」
霧「え・・・良いよ。出来るから。」
俺「だーめ。遅くまで仕事でヘトヘトなんだから、今日は俺に全部任せて。」
俺はきいちゃんの返事を待たずに、きいちゃんが持ってきたお皿を受け取って、水にとりあえず浸ける。
そしたら突然きいちゃんがガバッと覆いかぶさる様に抱きついてきた。
霧「そんなに優しくしないでくれよ・・・!」
俺「え・・・??」
霧「マジでダメ・・・。」
俺「でも・・・。」
霧「マジ嬉しいけど・・・逆に辛い・・・。」
俺「え・・・どういう・・・」
俺は耳を疑った。
優しくされるのが辛い・・・??
俺「優しくしちゃダメなの・・・?」
霧「そう・・・じゃないけど・・・とにかく今はダメ・・・。」
内心理解に苦しんだけど、何となくわかる様な気もした。
俺「分かった・・・分かったから一旦離して。」
俺に促されるまま、締め付けていた腕をフッと緩めて、俺の顔を見る。
俺「じゃあ・・・片づけするの?」
黙ってうなずくきいちゃん。
俺「分かった。じゃあお願い。俺風呂貯めてくるからさ。」
霧「うん・・・何かゴメン・・・意味不明で。」
俺「え・・・まあ今はきいちゃん平常心じゃないからしょうがないよ。」
霧「うん・・・。」
この時俺は、心の中でスンゴク不快なものを感じていた。
きいちゃんの様子があまりにもおかしすぎる。
楽天家のきいちゃんがあんなに落ち込んで・・・。
俺の慰めをいつもは受け取ってくれるのに、今日は拒絶・・・。
これが俺達の、第二の冬の始まりだなんて、その時は思ってもみなかったんだ。
*****
*****
はぁ〜・・・俺のクソバカ・・・。
皿を洗いながら、心の中で自分を殴りまくった。
全く付いてない一日だった。
=====
「池上君・・・君あれがどれだけ大事か分かってる??」
「・・・すみませんでした・・・!」
俺は部長の席の前で、ひやひやしながら頭を下げていた。
部長「どうするつもりだ?」
俺「・・・えっと・・・すぐに作成し直します・・・。」
部長「1000件だぞ?」
俺「承知してます・・・。」
部長「本当に出来るのか?」
俺「・・・は・・・い。」
部長「はぁ〜・・・君には期待してたんだが・・・こんなミスを犯すとなると困ったもんだよ。」
俺「申し訳ありません・・・!」
部長「私に謝られてもねぇ・・・とにかく、これ以上迷惑が出る前になんとかしろ。」
俺「はい・・・!!失礼します・・・!!」
俺は部長に深々と頭を下げ、自分のデスクへと駆け戻った。
俺の犯した重大なミスとは、昼休みの直後、各種申請書類を元にしたデータ1000件を初期化してしまった事だった。
幸い、申請書類は回答後3ヶ月は厳重管理の元保管されているため、顧客データは紙上は無事だ。ローンなどの与信の結果も紙上記載があるため、ローンの可否について再審査とかいう手間がないのが何よりもの救いだ。個人情報漏えい等にもつながらない為、企業スキャンダルにもならない分、最悪の事態=クビにはならずにすむとは思う。
だが1000件ものデータを初期化してしまった事は、どうあがこうとも、管理業務上重大なミスであり、再度打ち直しをしなければならない。
気の遠くなる作業だ。
しかしこれは俺がしでかしたミスなのだから、自分で一から再入力をする他に解決策はない。
バックアップもまだ取っていなかったデータ達。
それが済んでいたら何回かクリックするだけで解決していたのに、不幸が重なってしまった。
=====
部長「池上君。」
俺「あ、はい!」
定時を過ぎ、俺の事を気遣ってくれながらも、パラパラと同僚が退社する中、まだ俺はモニターと格闘中。
そこまでタイピングも早くない俺は、7時半になってもまだ400件にも満たない状態だった。
その状態の俺に、部長が話しかけてきた。
部長「どれくらい進んでるんだ?」
俺「あ、え、っと350件ちょっとです。」
部長「そうか。続きは明日終わらせなさい。」
俺「え・・・?」
部長「勘違いするな。今日は総点検で8時にはシステムが落ちるからだ。」
俺「あ・・・そうでしたか・・・。」
部長「とにかく、明日残りの650件強のデータ復旧を終わらせる事。それ以上は待てない。他にも仕事はあるんだ。」
俺「わ、分かりました・・・!」
部長「池上君、君はまだ2年目だから100%分かってないかも知れないが、今日君がこの作業で出来ない分の仕事は他の社員が代わりにやってたんだ。それがどういう意味か分かるだろう?」
俺「は、はい・・・。」
部長の言葉がグサグサ突き刺さる。
俺の下らないミスのせいで、他の人たちに迷惑かけまくったんだ・・・。
分かってたはずなのに・・・改めて忠告されるとすごく胸が痛い。
部長「とにかく、今日はもう退社しなさい。これでも残業代は出るんだ。出さなきゃ労基局がうるさいからな。」
俺「申し訳ありません・・・。」
後から考えるとキツイ嫌味だったが、この時の俺はとにかく罪悪感でいっぱいだった。
=====
ゆうの顔を見ても気分が晴れず、優しくしてくれたのに嬉しく感じられず・・・。
わずかに鬱陶しいとまで思ってしまった。
ゆうは俺に気遣ってくれてるのに、マジで俺クソ野郎じゃん・・・。
ゴメン・・・ゆう・・・俺今どうかなっちゃってる・・・。
鬱陶しいなんて思いたくないのに、そう思ってしまったんだ。
一瞬だけだけど、否定はできない・・・。
クソッ・・・!!マジ自分にイライラする・・・!!!
悠「きい・・・ちゃん?」
俺「・・・んあ・・・?」
悠「ダイジョブ・・・?水出しっ放しでボーっとしてたから・・・。」
俺「・・・ダイジョブだよ・・・。」
悠「そ、・・・っか・・・。」
心配してるゆうをわき目に、俺は蛇口を閉めて、そのままフラーっとキッチンを出てソファにボスンと座り込んだ。
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*****
きいちゃん・・・。
こっち向いてよ・・・。
どうして俺を頼ってくれないの・・・?
話聞く事しか出来ないけど・・・
俺そんなに落ち込んでるきいちゃん見たくないよ・・・。
優しくするなと言われたけど、俺は居ても立っても居られなくなった。
俺「きいちゃん・・・。」
力なく座るきいちゃんの隣にそっと座って、ダランと垂れた手の上に俺の手を置いた。
それでもきいちゃんは無反応だ。
俺「きいちゃん・・・頼むから話そう・・・?」
霧「・・・。」
俺「なあ・・・。」
霧「やめろ・・・。」
俺「え・・・」
霧「頼むからやめてくれよ・・・。」
俺「でも俺こんなきいちゃ」
霧「ほっといてくれ・・・!!!」
きいちゃんは俺の手を振り払いおもむろに立ち上がった。
完全拒絶もかなり応えたけど、それ以上に俺は心が締め付けられた。
と同時に、俺は不必要なはずの怒りまで覚えてしまった。
これが全ての始まりだった・・・。
「いい加減にしろって!」
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え・・・!?何で怒ってるんだ・・・?
「何がだよ・・・?」
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何がって・・・!
「仕事でミスしたくらいでそんな落ち込んでどーすんだよ!」
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ミス・・・したくらいで・・・?!
「小さなミスじゃねえんだぞ?!」
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あ・・・?!そんなにひどいミス・・・?
「だからって・・・!!俺心配してんのにそんな態度ないだろうよ!」
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ゆう・・・!!
「それがウザいんだよ!!!」
あ・・・!!!!
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え・・・!!!???
ウザ・・・い・・・?!
「ウザい・・・って・・・!!ウザいって何だよ!!!!!お前がそんなに落ち込んでんのに心配すんのがウザいのかよ!!!」
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そんなつもりじゃ・・・!
「あ、ああ!そうだよ!!重いんだよ!!ほっとけっつったらほっといてくれよ!!!」
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きいちゃん・・・!!ヒドいよ・・・!!
「分かったよ!!ほっとけば良いんだな!!じゃあこれからずーっと死ぬまでほっといてやるよ!!」
嫌だよ・・・きいちゃん・・・!
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気づいた時には、お互いが心にもない事を言い合って、無意味に傷つけあって、取り返しのつかない状態になっていた。
悠太は堪えられなくなり、鍵と財布だけを持って玄関へと走った。
霧斗はそれを直接目で見る事無く、玄関が寂しい音を立てて閉まるのを背中で聞きながら立ち尽くしていた。
<続きます・・・。>
あとがき
『最終章』へと入るにあたり、悠太の目線でも霧斗の目線でもなく、客観的に見たらどんな状態なのかを思い浮かべる部分を文末に追加します。
これを入れる事で、皆さんにより鮮明に状況を理解してもらえると思いました。
かなり辛い時期の話に入りまして、幸せな話を求める方にはご不満かと思いますが、僕らの関係上重要なターニングポイントの時期な為、ご了承下さい。
悠太&霧斗