僕はタクヤさんの返答を待つ。すると目線を下に落としながらボソっと「言いたいことはそれだけか?」とタクヤさんはつぶやくように言う。
僕は「え?」くらいしか反応できずにいると、タクヤさんは涙を流しながら、
「俺の気持ちはいつも聞かないのか?俺の気持ちはどうなる?これで終わり?お前は俺にチャンスもくれないのか?連絡がとれなくてお前のことどれだけ心配したと思う?なのにお前はこんなことしか言えないのか?」と胸の内にしまっていた感情を吐き出すかのように怒鳴り続ける。僕は真剣に聞こうとするが、なんだか全然頭にはいらない、それになんにも感情が湧かない。自分でも戸惑った、タクヤさんの興奮や怒りはピークに達したのか、僕の胸ぐらを思い切り掴んだ。その瞬間「殺される」と僕は頭の中で思った。すると僕の中で何かが切れた。この前の殴れている時と似ている感覚が僕を襲う。思考が停止し、なにも反応ができなくなる。タクヤさんが僕に怒鳴り続けていることはわかるが、どうにも反応ができない。
タクヤさんの車は僕らが度々訪れていたラブホテルに入る。
いつの間にかタクヤさんは怒鳴るのを止めていた。ドライブインタイプのホテルで駐車スペースから部屋に上がる階段で、僕の手を引きながらタクヤさんは、僕の耳元で「お前が欲しいんだ」と囁く。僕は嫌なはずなのに頷くことしかできない。ベットの上で僕は服を脱がされる。タクヤさんがキスしてくる。唇が触れた瞬間僕の体は鳥肌がたち、急に「嫌だ」という感情が僕を襲う。少し抵抗すると「動くな」と顔を殴ろうとする。とっさに避けようとすると、鼻にパンチはあたってしまい、鼻血がシーツに2、3的飛び散った。その血をを見て僕の思考はまた停止した。僕は抵抗しなくなった。タクヤさんは荒々しく僕を抱いた。自分だけ何度も僕の中で果てた。
どれくらい時間が経っただろうか。タクヤさんは満足したのか寝息をたて始めた。僕はバスルームを向かうと何度もおう吐しながらシャワーを浴びた。どこかに傷がついたのか、僕の中からはタクヤさんの精液と少量の血が流れてくる痛みはなかった。震えがとまらない。だめだここにはいられなと思い。ホテルの人を呼んで清算を済ました。宿泊料金を払い、車の持ち主である連れが寝ているので、僕だけ外に出たい旨伝えると、裏口から出してもらえた。外は薄明るくなっていた。国道に出てタクシーを拾い家路についた。家につくととにかくベットに倒れ込み寝た。
次の日目が覚めると、すぐにタクヤさんの顔が思い出され震えと恐怖が僕を襲い過呼吸になる。昨日のように自分で処置し、少し落ち着いたので自分の部屋を出ると、家族がおはようと声をかけてくれる。おはようと返し食事をとり、なんだか昨日のことは夢だったのかな?という感覚とらわれる。しかし、鼻の痛みが現実に僕を引き戻す。その日はバイトが入っていたため、すぐに出勤準備をし、出勤した。バイト中は仕事に集中し、あっという間に勤務時間は終了した。
昨日の出来事をすぐにHに報告した方が良いとは思ったが、昨日の出来事を細部にわたって思い出すことはしたくなかったのでその日は控えた。
続きます。