そんな関係が1年くらい続き、僕は大学でも少しずつ暗くなっていたのかもしれない。大学で知り合った一番仲の良い女友達のHにゼミの飲み会で「最近お前元気ないね?今日も必死に楽しんでるフリしてるみたい、なんかあった。私でよければ聞くよ?」と言われ、なんだか自分でもわからないけど涙が止まらなかった。Hに今までのことを全て話した。すると意外なことにHは「私も高校の時に同じような体験がある」と親身になって聞いてくれた。Hはもうきっと彼との関係は修復できないこと、自分のことを守るために早く別れた方がいいこと、このままの関係を続けてもきっと先はないことなどなどアドバイスくれた。正直僕も頭ではわかっていたことだったが、改めて友人に言われると目が醒める感じで、とても有難かった。
しかし次の日、タクヤさんに会えばいつもと変わらず、ただタクヤさんの顔色ばかり伺う自分に戻っていた。恐らく、これからのことを話すよりも、ただ目の前にいるタクヤさんが怖くて怖くて仕方なくて、その場しのぎ対応しかできない弱い自分になっていた。
そんなある日、風呂上がりなにげなく脱衣所でパンツ一丁で髪を乾かしていたら母親が急に入ってきて、僕のアザだらけの身体を一瞬驚いた顔をして脱衣所から何も言わず出て行った。案の定、すぐに両親にリビングに呼び出された。父親が「体が傷だらけなそうだな、見せてみなさい」と言われ、僕は心配かけたくなかったし「友達のバイクの後ろに乗りコケた、そんなに痛くないし大丈夫」と無理に笑った。父は「もうお前も二十歳だし、生活に文句をつけるつもりはない、でも無理なことはするな。親はいくつになっても心配なんだから。」と困った笑顔で語った。僕はなにしてるんだろう、、そんな思いで頭の中がいっぱいになったのを今でもよく覚えてる。
でも、タクヤさんの関係に何も変化をもたらすことのできないままただ時間は過ぎた。今になって考えると、時間がたつにつれて僕の傷は深く多くなったのに、傷のほとんどは服で隠れるところにあり、それは怒りに任せて殴るタクヤさんの、周りに暴力が知られることのないように冷静に下した判断だったんだと思う。
続きます。