2008年を迎えた初日から、実家はある意味戦場になる。
俺の実家は、家系で言う本家にあたるため、親戚中がうちに集まる。
母方のおじさんやおばさん、父方のおじさんやおばさん、従兄弟や再従兄弟や甥っ子や姪っ子。
同居中の母方のばあちゃんに、埼玉の父方のばあちゃん。
とにかく集まる集まる。
自慢になってしまうけど、実家の家屋は結構広いから、そんなに沢山集まっても、ちゃんと一つの家に収まるからすごい。
でもその分、手伝う事もハンパなく多くて、正月の寛ぎはほぼ皆無なんだ。
ビールをお酌したり、甥っ子たちと遊んだり、とにかく目が回る。
きっときいちゃんも・・・忙しいんだろうな。
俺と同じ境遇って言うか、あいつも本家の男だから、親戚のおじさん達のお酌したりしてるんだろうな。
母「悠太〜、煮もの運んでくれる〜?」
俺「あ、ちょっと待って。ちかちゃん(姪)ちょっと待っててね。律子、ちょっと相手してあげて。」
律子「うん。ほ〜らちかちゃん、お姉ちゃんのとこおいで。^^」
こんな調子だ。
父「悠太、新しいビール持ってこい。」
俺「はいはい。飲み過ぎじゃね?」
父「良いんだよ、お正月なんだから。」
父も普段はあんまり飲まないのに、正月になると調子に乗って飲むんだ。
叔父「悠太、就職祝い、後でやるからな^^」
俺「あ、ありがとうございます^^」
叔母「悠太君が良いトコに決まって、お父さんも一安心ねぇ。」
父「いやいや、まだまだ安心は出来ませんよぉ〜。内定はいつでも取り消せるんですから。」
俺「おいオヤジ!縁起の悪いこと言うなよ!」
父「ジョーダンだよ〜」
律子「お兄ちゃ〜ん!ちょっと来て〜!ちかちゃんが仏壇のお線香立て倒しちゃった〜!」
・・・め、目が回る〜・・・!!
***
夜8時を過ぎて、親戚はほとんど帰宅し、家には静けさが戻った。
父は酔っ払ってソファーで爆睡。
俺と母方のばあちゃん(母婆)はテーブルを片づけて、律子と母と父方のばあちゃん(父婆)は大量の洗い物に挑んでいた。
お年玉と就職祝いはかなり頂いたけど、何だか今日のバイト代の様な気分だ。
母「はぁ〜、やっと終わった〜。」
律子「毎年こんなの疲れない?」
母「良いのよ。年に1回くらいよ、こんなにお祭り騒ぎ出来るのは。律子だって、お年玉たくさんもらったんでしょ?良いこともあるじゃない。」
律子「うん・・・そうだよね。」
母「大事に使うのよ。」
律子「分かってる。ていうかお兄ちゃんも沢山もらってたじゃん!」
俺「俺は就職祝いがあるからだよ^^」
母「そうよ、これからスーツとか買わないといけないんだしね。」
母婆「ゆうちゃん、ちょっとこれ持てる?」
俺「あ、ばあちゃん無理しなくて良いよ。」
父婆「ホントゆう君は優しい子だねぇ。」
俺「そんな事ないよ。」
結局全て片付いたのは10時ちょっと前。
新年早々疲労困憊で、ソファに座ってTVを見ながらうたた寝をしてしまったみたいだった。
***
???「ゆう君、起きなさい。」
俺「ん〜・・・?」
父婆「ここで寝たら風邪引くよ。」
俺「ん〜・・・分かってる。」
母婆「今日はもうお風呂入って寝なさいね。いっぱい働いたんだから。」
俺「うん・・・そうする。」
父婆「あ、あと、これね。お祝いまだ渡してなかったからね。おめでとう。」
俺「あ、ありがとう。大事に使うよ。」
母婆「おばあちゃん2人からの分だからね。」
封筒を持つと、かなりの厚みがあった。
2人分のお祝いとはいえ、それにしても分厚い。
俺「ばあちゃん達、これ多すぎない?すごい分厚いけど・・・。」
父婆「おばあちゃん達は嬉しいんだよ、ゆう君がこんな立派になってくれて。」
俺「でもホント良いの?こんなに。」
父婆「良いのよ、ねえ?」
母婆「そうですねぇ。ゆうちゃんなら上手に役立ててくれるはずだから。」
俺「ホントありがとう・・・。」
ばあちゃん達の笑顔は、すごく柔らかかった。
後で見たら、一瞬ビビった位の、かなりの数字になってた。
他の親戚や両親から頂いたのを合わせたら、ホントにとんでもない数字。
俺は元々物欲がないせいもあって、ただただ机の上の封筒達を呆然と見ていた。
俺「貯金・・・すごくなりそう・・・。」
とりあえず一つにまとめて、バッグの奥の方にしまい込み、俺は風呂に入った。
***
忙しかった元日も過ぎ去り、3が日の最後の日。
明日の新幹線で、父方のばあちゃんと東京に戻る予定だった。
母「お菓子は別の袋に入れる?」
俺「ん〜、そうした方が良いかも。」
就職したら、ホントに帰省する暇もグンと減っちゃうんだろうな。
でも正月は必ず帰省するからね、母さん。
***
次の日。
ばあちゃんと新幹線に乗り、埼玉の家まで送って、そのまま東京にトンボ帰りした。
父婆「ホントに良いのかい?」
俺「うん、ちょっと急ぎで用事があるんだ。ゴメンね。」
父婆「そう。じゃあ気をつけてね。送ってくれてありがとね。」
俺「うん。また春休みに遊びに来るから。」
埼玉なら近いから・・・
元気でね。ばあちゃん。
あんまりのんびりしてらんないな。
きいちゃんは今日の昼ごろには戻っているはず。
もう1時半か。
アパートにいてくれよ。
きいちゃん、俺、お前に会いたくて会いたくてしょうがねえよ。
離れてみてもう一度分かったんだ。
今の俺にはきいちゃんが必要なんだ。
いくら浮気しても良いから、俺はきいちゃんが好きだ。
いや、浮気はしないで欲しいけど・・・
つまり・・・何があっても、俺はきいちゃんを嫌いにはなれないよ。
一旦俺のアパートに戻り、多めの荷物を放り出した俺は、きいちゃんの部屋の玄関先にいた。
よし・・・ノックするぞ・・・。
コンコン・・・
・・・ん・・・?何も音がしない・・・。
いないのかな・・・。
どうしようかと思ったけど、合鍵で中に入る事にした。
玄関先には、きいちゃんの荷物が置いてあった。
東京に戻ってはいるみたいだ。
年明けの買い出しにでも行ったのかな・・・?
とりあえず、部屋の中でいつもみたいに待つ。
***
30分くらい経っても・・・まだ戻らない・・・。
ったく・・・きいちゃんどこ行ってるんだよ・・・。
***
1時間・・・。
いい加減痺れを切らしそうになった頃、玄関で物音がする。
鍵を差し込んでる。
霧「ん・・・?!」
鍵が開いてるのに気づいたみたいだ。
勢いよくドアが開く。
霧「ゆう!」
俺「よ・・・おかえり。」
霧「もっと遅くなるって思ってたからマジビビった・・・。」
俺「ゴメンゴメン。」
霧「ゆう、実は、会ってほしい人がいるんだ。」
???「こんにちは。」
きいちゃんの後ろには・・・
一人の女の子がいた・・・。
俺「誰・・・?」
霧「・・・その・・・例の・・・」
うわ・・・き・・・あ・・・いて・・・?
<次回から新スレにて。>