浪人時代の寮で仲良くなった友達が居たんです。あるとき席替えで隣同士になって、志望校が同じだったのもあって仲良くなり始めたのですが、夏が過ぎ秋が過ぎて、いつの間にか僕は彼を本気で好きになっていました。何度も告白しようと思いましたが、如何せんお互いに浪人のみである事、受験直前の大事な時もしもの事になってぎくしゃくしてしまうのは避けようと、結局いつもためらってしまっていました。
結局その彼はセンターがふるわずに志望校を変える事になりました。その頃他の友達から彼がゲイだという事を聞かされて、さらにその二人が明らかに一線を越えたような(抱いてたり、ボディタッチとか)感じに見えて、僕はだんだんと彼を遠ざけるようになってしまいました。それまで話す事が多かった僕らの口数も、自然と減っていたのもありましたし。それでも僕は彼が好きでしょうがなかったのですが…
最後の一ヶ月は、前のように仲良く話す事も少なくなっていました。前期日程しか出願してなかった僕は、前期が終わり次第退寮の準備をする事になっていました。僕の場合、前期も難なく終わり、それから数日で部屋を片付けて退寮の前夜がやってきました。
そんな夜に彼が僕のもとへやってきていいました。
「もう会えなくなるんだね…」
僕は、もう彼の事を忘れてしまいたかったばかりに、
「これでオレの心の重荷もなくなるよ」とふざけて言いました。
「心の重荷だったの?」
「うん。」
そう僕がうなずいて、最後の会話が終わりました。ただ僕は、苦しみから逃げたくて、彼の事を忘れたくて、連絡先も何も告げず翌朝寮をたちました。
それからもう、1年が経ちました。彼は東北の大学に前期で合格したと、退寮後に聞きましたし、ぼくも九州内の大学に通っています。いつかどこかで会えるかもしれない…と思いながら季節は巡ってきました。でも忘れようと思う僕の心から彼が消えた事は一日もありませんでした。結局…もう忘れられないような気がしています。