僕には好きな人がいる
その人は40代ぐらいで細身でオールバックで・・・
声が凄くカッコよくて
目が鋭くて
ちょっと冷たくて
そんなすべてに僕は惚れてしまった
年の差20歳ぐらい?
それでも僕は好きだった
出会いは・・・
大学一年生のとき
僕がいつも利用する大学に行く高速バス
その人は高速バスの運転手だった
何回か乗ってたけど初めてこの運転手さんを見た
別に最初は普通の運転手だと思ってた
でも往復切符を販売するときに,たいていの運転手はお客に立たせて買いに行かせるけど,この人は自分で歩いて販売しにきた
当たり前のことかもしれないけど,僕のなかではとても珍しかったし,とても好感がもてた
その人の名前は田中浩二
僕はその運転手さんがいるたびに気にするようになり,いつの間にか浩二さんを目で追うようになった
いつも僕のときだけ降りるときに
「いってらっしゃい」
そう言ってくれた
なんか自分だけ特別扱いうけてるみたいで凄くときめいた
みんなに言ってるのかもしれないけど,それがうれしかった
話しかけたい・・・
でも話しかけれない
気がつけば 僕は三年の終わりごろで就職活動が始まっていた
僕は相変わらず浩二さんと会話するのは
降りるとき僕が挨拶して向こうも挨拶するっていう
客と運転手の関係
そんなある日
就活でスーツでバスに乗った
いつものように「おねがいします」
浩二さんはいつものように無言で運転する
そして降りるときたまたま僕は最後に降りた
「ありがとうございました」
「就活?頑張れよ」
「え・・・は・・はい。ありがとうございます」
ニコっと笑った
そのときの笑顔はヤバかった
バスは閉まった
手をあげてくれた
僕は呆然と立ちつくした
あの冷たい浩二さんが僕に話かけてくれた
うそみたい
凄くうれしかった
僕のこと覚えててくれたんだ