コンビニに並ぶ雑誌には
恋人ゲットの法則
モテの秘訣や体の作り方などで
溢れている
「はぁ…」
しかし
肝心の
恋人が居る人のための
恋愛の雑誌がひとつもない
独り身の人はいう
恋人のことで悩めるのは贅沢だと
そうかもしれない
でも僕にとっては一大事で
健介のことを想えば
気がきではないのだ
一年も付き合っていれば
原因はとても些細なもので
思い出せば大したことないのに
昨日の僕はそれを
許せなかったりする
だから今日は
指輪をしないで家を出た
なにが変わるでもない
健介がみてるわけでもない
しかしせずにはいられなかった
小さな反抗
怒ってるんだぞという
僕の本当の気持ち
モテ雑誌を棚に戻す
飲み物だけ買って出よう
冷気の出る扉を閉めて
レジへと向かう
「160円です」
小銭をさがす
財布を覗く
不思議と
いつもの感覚ではなかった
そこにあるはずの
いつも居たはずの場所に
あいつが居ない
「…お客さま?」
なんか
スースーすんな
薬指を親指でなでる
心と体が
くすぐったい
僕はコンビニを出た
太陽が痛いほどまぶしい
「…帰るか」
歩きながらパキッと
ペットボトルの蓋をあける
飲み物を口にしながら
左ポケットにいれていた
スマホに左手を伸ばす
【Re:re:怒ってんの?】
返信
『モテボディ目指すわ』
ガサガサと
右から左へ
大きなコンビニ袋が
揺れる
「重い」