どうしてこんな想いを
俺がしなければならないのか
『また来よう!』
両腕いっぱい広げて
地面に落ちた桜の花を
宙へと投げるあいつ
頭の上から降りそそぐ花弁は
星のようにキラキラと
まぶしく輝いて見えた
世の中の少数派
みんなの輪からはぐれた俺達は
辱められ 疎まれ蔑まれ
それでもふたりなら
生きていけるとおもった
仲間はずれだった俺の手を
引っ張ってくれたきみとなら
なのに
犬を助けようとして
事故に巻き込まれて死ぬなんて
いつの時代のドラマだよ
相手の親戚には内緒で付き合っていたから
通夜にも呼ばれず
死んだことを知ったのは
それから数日経ってからのことだった
一年経ったこの日
俺はまたこの場所にきて
春を迎え また俺は
孤独になった
男が好きってだけで
病気扱いされ
汚い物を見るような目で見られて
「桜…きれいだよ」
俺もあいつも
一生懸命生きてるよ
毎日の仕事に終われ
罵声を浴びせられ
それでも生きてくために必死で
毎日一生懸命生きてたよ
俺達は病気じゃない
泣いたり笑ったり
怒ったり優しかったり
感情もあって
人間だよ
まだ春なのに
夜はやっぱり冷えるね
夜桜は月夜に導かれ
風に揺られ音を立てる
拝啓
お元気ですか
俺は
取り残されたこの小さな世界で
生きています
きみのいない毎日は毎日が退屈で
なんだか俺が俺でないような日々です
そちらの世界には
桜はありますか
あると嬉しいです
きみに会えるその日まで
きみに名前を呼んでもらえるその日まで
俺は生きてみようと思います
あいしてます