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「なぁ、淋しいと思う時ってどんな時だと思う?」
―――ひとりでいるときじゃないか?
「半分正解。」
―――じゃあ正解は?
「ひとりになった瞬間だ。」
そう言ってあいつは笑った。
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大学に入学してから1年が経った。
大学生というのは意外と忙しいということを学んだ一年だった。
「なぁ耕一、バイトしないか?」
大学も二年目になり授業数も減り、時間に余裕ができアルバイトでもしようかと考えていることを友人の裕司は知っていた。
「実は俺のバイト先、この時期だから就職で辞めちまった人多いんだ。んで人が足りないから誰か紹介してくれって言われてて。」
裕二が働いている店は品川にある居酒屋だった。
若い女性をターゲットにしたような洒落た酒や料理を出している店。
一度行ったことがあるので知っていた。
広い店内、女性が喜びそうな装飾、ジャズが流れていかにも都会といわんばかりの雰囲気だった。
「んー、面白そうだな。」
飲食店の経験はあった。
高校時代部活の傍ら居酒屋で働いてコツコツと貯めた金で部活用のシューズを買ったくらいで、自分は飲食に向いているとさえ思った。
「もしその気なら今から面接に来ないか?」
そう言ったのは帰宅途中の山手線内、ちょうど五反田駅に着いて扉が開いたところだった。
「今か?急だなぁ。そんな連絡もしないでいいのか?」
「それくらい必死なんだってよ。いつでも連れてこいって店長から言われてる。これからなにか用事あるなら無理にとは言わないが。」
この後用事と言える用事は無かった。
帰ってから3日後提出予定のレポートを纏めて、タウンワークとにらめっこして、最近たるみがちな身体を気にしての筋トレを考えていたくらいだった。
勢いがなければなかなか行動できない俺は緊張しながらも裕司のバイト先についていくことにした。
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裕司のバイト先に着いたのは16時過ぎだった。
看板が点灯していないところを見るとまだ開店時間になっていないらしい。
改めて看板を見ると深い青に白い字体で『ギルド』と書いてあった。
「店は階段上がるとすぐある。店長がいるはずだからとりあえず紹介すっか。」
そりゃそうだ。と思いながら裕司の後を歩き、階段を上がったところにある扉を通るとスーツ姿の小柄の男がいた。
思っていた以上に早い店長らしき人との対面に思わず笑ってしまった。
向こうも知らない人間がなにくわぬ様子で入ってきて少し戸惑っているようだった。
「高尾さんおはようございます。」
「あぁ、おはよう。」
高尾と呼ばれた男はこちらを気にしながらも裕司に挨拶を返した。
「あの、こいつ俺の大学の友達で秋山耕一っていうんですけど、バイト探しててそれでうちにどうかって話してて…あっ、耕一、こちら店長の高尾さん。」
俺の方に向きなおった店長は俺が「はじめまして」を言う前に「マジで!?」と目を大きくして言った。
「はじめまして秋山です。」
ようやく挨拶が出来た俺は店長を観察した。
黒のストライプのスーツに紺のグッチのネクタイ。髪は短く整髪されていた。黒い地肌は二重の大きな目を目立たせた。
歳は30代後半のようだが、口調と見た目は若い。若作りしているわけではなく、落ち着きと言うものを好んでいないのだと思った。
「そっかそっか。秋山君。うちで働こう。うん、そうしよう。」
「いえ、あのまだ決めたわけでないんです。というか急すぎてなにがなんだか…あっ、急に伺ってしまって本当に申し訳ないです。」
「いいんだよいいんだよ。見たところしっかりしてるし、いやぁほしいなぁ。
聞いてるかもしれないけど、今うち人足りなくてさ、本当に猫の手も借りたい状態なんだ。実際働くとしたら週どれくらいシフト入れるかな?だいたい17時から入ってもらうと思うんだけど。」
「そうですね…月曜は6限があるので無理ですが、それ以外なら。」
展開の早さに慌てつつも落ち着いて返答した。
店長は裕司の方をちらっと見た後、笑顔で「完璧。」と俺の目を見た。
あれ、俺これでいいのか?
と疑問に思っている時に店の奥から人影が現れた。
「高尾さん、私先に休憩いただきますよ。」
下は黒いパンツに上は白いシャツと黒いベストを着た男が姿勢良く歩いてきた。
シャツの第一ボタンを外し、ネクタイを緩め、腕捲りという格好は丁寧な姿勢と言葉遣いとアンバランスだった。
髪は短く整髪されてはいるが店長と比べるとラフだった。
歳は20代半ばといったところだが、頬が痩けているところを見るともう少し上かもしれない。
「おう、裕司おはよう。」
挨拶がてら胸のポケットから煙草を取りだし火を着けた。
「おう。」と一言返した裕司に俺は違和感を感じた。
年上に対して余りにも言葉が軽すぎるからだ。
同じ元野球部としては年上や目上の人は敬うことは当たり前だとお互い身に染みているはずなのに。
この職場はそういった部分も良い意味でラフなのかもしれないが、俺はあまりそういうのは好きではなかった。
少し懸念を感じた俺にその男はすぐ気付いた。
「これは、失礼しました。裕司、その方は?」
男は火を着けた煙草を然り気無く背中に隠し愛想笑いをした。
「これから一緒に働く秋山君。裕司と同じ大学なんだ。」
そう答えたのは店長だった。
「あの、まだ働くと決まったわけでも決めたわけでもないんですが…」
「大丈夫だって。面接は俺がやるし、落とす気はさらさらないよ。あっ、それとこっちは…あっ、…こっちも秋山君。秋山一平。このビルのリーダーなんだ。」
半ば強引な店長に押されながらも、俺は何かを思い出そうとした。
「・・・同じ秋山ですね。僕は秋山耕一といいます。もし一緒に働くとしたらお世話になります。よろしくお願いします。」
まだ採用されたわけでもないのでなんとも不思議な挨拶だが、こうとしか言いようがなかった。
「秋山耕一・・・?」
一平と呼ばれた同じ秋山は、微かな声で疑問に思ったように俺の名を復唱した。
しかしまた先と同じ愛想笑いで「秋山さんがよろしければ是非一緒に働きましょう。待っています。」と言った。
俺はその秋山にあまり良い印象を持たなかった。
なんだか全てが他人行儀で、壁を感じた。
他人だから当たり前なのだが、徹底されたあの態度が、今まで俺が関わったことの無い人間の部類なのだと思わせた。
<Mozilla/3.0(WILLCOM;KYOCERA/WX340K/2;3.0.0.11.000000/1/C256) NetFront/3.4 @P221119006221.ppp.prin.ne.jp>
「えー、年齢は裕司と同じ19でいい?」
「いえ、僕は誕生日が過ぎましたので20歳です。」
「20歳ね。飲食の経験は?」
「はい、高校の3年間居酒屋でバイトしてました。」
「いいねぇ。住んでいるところは?ここ11時半閉店なんだけど、閉店作業なんかがあって大体12時前後に終わることになるけど、終電は何時かな?」
「住んでいるところは大森なので終電は1時近くまであります。」
「じゃあ給料は・・・」
気付くと俺はちゃっかり面接を受けていた。
面接というのは予め日時を電話で決めて、写真付きの履歴書を持ってようやく行われると思っていた俺は戸惑っていた。
しかしなかなか行動できない自分を知っているからか、これでいいとも思っていた。
むしろ自身にうっすら関心していたかもしれない。
こんな突然な場面でも受け答えはできているし、楽しんでいた節もある。
まさか冗談半分でついていった友人のバイト先で即日に面接されるなんてなかなかない体験だ。
「よし。以上。合格。」
対面に座った店長は笑顔で言い放った。
まさかその場で合格が言い渡されるとは。今日はまさかの連続だ。
「あと髪の毛だけど…秋山くんは問題ないね。体育会系のような髪型だけどなにかスポーツやってる?」
「あぁ、小さい頃から高校まで野球やっていました。大学入ってからはなかなか出来ないですが、運動は好きです。」
「へぇ、甲子園は?」
「行きましたが、二回戦まででした。」
「成る程ね。俺も高校まで野球部だったよ、もしかしてキャッチャー?」
「はい、キャッチャーでした。」
自分が野球部だったと言うとたまに聞かれる質問で、何故だかは想像が付く。
「やっぱりね。どおりでガタイが良いわけだ。」
店長は得意気だった。
「身長も高いし…制服はLLかな。用意しておくけど、もし首回りや肩幅が狭いようなら言って、3Lもあるし。」
「はい、ありがとうございます。それで出勤はいつからですか?」
「んー、22日の火曜日の17時かな。どう?問題あるかな?」
俺は手帳を開き5日後の22日の火曜に問題は無いか確認した。
そこには『18時 横浜 澄乃』と殴り書きをしてあった。
しかし俺は「その日で問題ないです。」と了承した。
「じゃあ22日の17時によろしく。その日は同じ時間に裕司も入ってるから秋山君も一緒に来るといいよ。」
「はい。そうします。」
そう言った後店長は思い付いたように口を開いた。
「そうだ、秋山が二人になるわけだから下の名前の方がいいな。確か耕一って言ったね。耕一はどう書く?」
一瞬「どうかく」の意味がわからなかったが、すぐに何を聞きたかったのか理解した。履歴書を出していないから字体を見せていないのだ。
「耕すに漢数字の一です。」
「耕すに一で耕一な。よし、耕一これからよろしく。」
少し声を張った店長は手を差し伸べ握手を求めた。
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
握手をすると力強く握られた。案外店長も体育会系なのかもしれない。
「あっ、そうだ。悪いんだけど写真付きの履歴書を明日にでも出してもらえないかな?手続きに必要だからさ。あと給料の振込先の通帳と印鑑。出勤の当日はメモとボールペンと革靴と笑顔をよろしく。」
「はい、わかりました。」
気さくな人だと俺は笑った。
「裕司ー!耕一が合格したぞー!」
店長がそう叫ぶと奥から裕司が顔をだした。
「おー!おめでとう!頑張ろうぜ!」
喜んでくれている裕司の向こうにフロントで煙草を吸ってパソコンをいじっているもう一人の秋山が見えた。
帰り際、相変わらず愛想笑いを撒く秋山に俺ははっと思い出したことを思わず口にした。
「そういえば僕、秋山さんと同姓同名の友達がいました。」
秋山一平。小中と同学で出席番号でそいつがいるときだけは俺は二番だった。
別に悔しかった訳ではなく、印象的だった。
そしてそいつ自体も印象的だった。
いつも一人で本を読んでいて、だけど苛められているわけでもなく、誰とも関わろうとしなかった。
端正な顔立ちで女子からもモテてたっけ。そんなのあいつは全く相手にしていなかったが。
しかしその大雑把な部分しか覚えていなかった。大した関わりもなかったからだ。
「端正な顔立ち」と言ったわりに顔が思い出せないのは、そんな話を耳にしたという記憶だけだったからだ。
しかし目の前の秋山一平は自分と同い年ではない。
ましてやここは東京で、俺の地元は北海道だ。
ありえない。
そう俺が思ったのをわかったかのように秋山は言った。
「そうですか、でも私には秋山耕一という友人はいないですね。」
「そうですよね。いや、すいません、変なこと言っちゃって。」
俺は苦笑しながらわざとらしく後ろ髪を手で押さえた。
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素敵なはじまりでした。ぜひ最後まで読ませて頂きたいです!自分も大森に住んでるのでびっくりです。
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▼Kさん:
自分も大森に住んでるのでびっくりしてたらさらにびっくりしました。笑
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「わり、今度の火曜からバイトすることになった。」
帰ってきてからまず澄乃(すみの)に電話をした。
もともとこの日には予定が入っていた。とはいっても単に「話がしたいから」との澄乃からの誘いだったのでバイトを優先させてしまった俺がいる。
「やってくれたねぇ。大事な話だったらどうすんのさ。」
少しふてくされる澄乃の声に安心した。これくらいなら咎めはなさそうだ。
「すんません、祐司からの誘いが急すぎて、頷いとけと思ってしまいました。大事な話だったか?」
「6月の終わりにでもみんなでディズニー行こうって話があったじゃん。あれ耕一が話進めるってなってたけど、どう考えてもそういうのすっぽかしそうだからその話しようと思って。」
「あー、あれな・・・うん、すっぽかしそう(笑)」
「ちょっとは責任感もってよ。みんな楽しみにしてるんだから。」
「はい、頭の片隅に入れておきます。すみません。」
「あ、あと・・・」
電話を切ろうとする俺を遮るかのような話し方だった。
俺としては早くレポートに手をつけなければいけないのだが・・・
「最近、会ってない・・・」
少しだけ、ほんの一瞬だが、沈黙があった。
次の言葉は俺が発するはずなのに何を言えばいいのか迷ってしまった。
澄乃は澄乃で続く言葉がありそうに噤(つむ)んだから。
「あぁ、悪い。忙しいんだ・・・」
これは一種の慣用句みたいなもんだ。
「忙しい」と言うのは「会いたくない」にかなり近い意味を持っている。
嘘ではない。嘘ではないのだが、限りなく嘘に近い本当だ。
「じゃあ俺、レポートあるから。」
言葉のキャッチボール。連投はルール違反で失格だ。
「うん、じゃあまた時間あるときにでも。」
そういう澄乃は淋しそうだった。
「あぁ、また。」
電話を切るとレポートを机に置き去りにして寝転んだ。
わかっていた罪悪感。どんなに覚悟しても予想よりも大きな重みがくる。
「あー、疲れた。」
澄乃と付き合って半年になる。
サークルで出会ってから一ヶ月もしないで告白されて、告白されたことことが嬉しくて二つ返事をしてしまった。
サークルは小学校に放課後の時間に行って、児童と遊んだり勉強教えたり。
そのサークルで行っていた学校もお互い変わってしまって、週に一度必ず会うことも無くなった。
大学は違うから会おうとしないと会えやしない。
澄乃のことは好きだ。
可愛いし、優しい。おまけにこんな俺のこと好きになってくれる寛大な人間だ。
だけど愛してるのだろうか。
セックスは出来る。ただ、欲情はしない。
一緒にいて楽しいと思う。ただそんなに頻繁でなくていい。
初めて出来た彼女ってやつに初めはうかれていたが、それも時間が経つにつれ薄れて冷静になる。
澄乃にも、自分にも、嘘をつくのは辛い。
(早く終わらせろ、早く終わらせろ。)
そう思うたび名残惜しくなってしまう。
今まだある、「普通」ってやつが。
「あー、キャッチボールしてぇ。」
上体を起こした俺はゆっくり立ち上がり机に向かった。
早くレポートを終わらせようと。
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「小さいです、これ。」
「・・・うん、小さいね。」
LLのシャツをきつそうに着る俺はとんだ笑いものだった。
とんだ体格アピールだ。
高尾さんも目が笑っている。
「どうしようか、XLは今度発注するとして、今日だよな今日。せっかくのデビュー戦がこんなユニフォームじゅあ格好つかないな。・・・一平ぇ!ちょっといいかー!」
「はい、XLありますよ。堀口あたりの。」
高尾さんの大きな声に呼ばれたもう一人の秋山は会話を聞いていたようだ。
相変わらずニコニコしているが若干本当に笑っているようだった。
「高尾さん、私は無理だって言ったじゃないですか。秋山さん身体大きいんですから。」
「うん、じゃあよろしく。」
高尾さんも秋山の真似してニコニコして言ってみせた。なんとも乱暴な笑顔だ。
「はい、わかりました。秋山さん、ちょっと更衣室行きますよ。XLに着替えましょう。」
俺は秋山さんの後ろを付いて行った。
ところでだ。この秋山さん。高尾さんから「このビルのリーダー」と紹介されていたので一瞬バイトなのかと思いきや、俺の渡された制服と違う。
俺のは白いワイシャツに大きな前掛け(サロン)。しかし秋山さんは高尾さんと同じ、それに加えてネクタイとベストを着ている。
ということは社員なのか?だとしたらこのビルのリーダーってのはあくまで高尾さんを抜いての話なのか?
ってかいくつなんだ?
謎、秋山一平さん・・・
「お、あった。はい、これXLです。着てください。」
堀口と名前の書かれたロッカーから取り出した白いシャツを手渡された。
いいもんなのかどうか。
「あぁ、ありがとうございます。・・・堀口さんも。」
そこにいやしない堀口さんにお礼も言って着替えることにした。
「これならたぶん大丈夫でしょう。第一ボタンははずしてもいいですよ。先行って待ってますんで。」
「はい、ありがとうございました。」
「あっ、それと。私が秋山さんの教育係になったんでよろしくおねがします。秋山さん。」
またいつものニコニコした顔を見せた。この人の考えてることがよくわからない。
まぁ、それもいずれわかる・・・かな?
「こちらこそよろしくお願いします・・・秋山さん(笑)」
思わず笑ってしまった。同じ苗字で呼び合うなんてなんだか可笑しい。
「はは、なんだか変ですね。じゃあ先行ってます。」
そういうと秋山さんは去ってしまった。
(そこは「下の名前でいいですよ。」じゃないんだ・・・)
少し残念に思いながらもシャツを着替えた。
その間、他のバイトの人たちも出勤してきていろんな人と挨拶をした。
「今日からの秋山です。よろしくお願いします。」
を何度も言った。
その中の一人に祐司がいた。
「おー、おはよう。バイトにお前いるの新鮮だわ。緊張してっか?」
「おはよう。緊張はそんなにしてない。なぁ、秋山さんってどんな人だ?」
俺の質問に祐司はわけのわからないという顔をした。
「いやさ、秋山さんが俺の教育係になったらしいんだけど、どんな人だろうと思って。」
「あー、一平か!なんだよ、秋山さんとかお前のことかと思って、何言ってんだこいつと思ったわ!」
呼び捨て・・・祐司はいつからこんな礼儀知らずになったんだ。
だがそこまでつっこむ必要もないか・・・
「一平はなぁ・・・うん、まぁ・・・おもし・・・ろいぞ?」
「なんで疑問文・・・」
「あー、いいやつだぞ。うん。」
なんともしっくりこない答えに肩を落としてしまった。
面白い?そうは見えなかったけどなぁ。なんというか真面目そうで。
いい人っちゃあいい人そうだが、笑顔で壁作ってるような・・・
「うん、わかった。直接知ることにするわ。」
「おう、まぁわかるさ、そのうち。」
意味深なことを言われながらホールに戻ることにした。
これから始まる初めての職場のことよりも、もう一人の秋山のことで頭がいっぱいだった。
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「まず秋山さんは確か飲食経験者でしたよね?」
一通りの場所と配置、ルールを教えられた後パントリー(料理の出てくるスタッフリームのこと)で急に聞かれた。
「はい、高校時代はずっと居酒屋で働いてました。」
「じゃあ大丈夫。頑張って、はいこれ卓番表。」
手渡された手のひらサイズの紙にはテーブルナンバーが書かれていた。
「はい。頑張ります。」
・・・
秋山さんはニコニコしている。ただ、ニコニコしている。
「えっ?」
「運んでください。」
相変わらずニコニコしてる。ただそれだけ・・・
「えっ?運ぶんですか?」
「運ぶんです。」
・・・
「あっ、はい。」
運ぶんですって・・・それだけ!?
確かに経験者だけど、いいのかそんな急にやらせて。
もっと詳しく教えてもいいような。
早速ドリンクを運ぶことにした。
トレンチ(トレー)にドリンクを乗せているとハンディを手渡された。
「はい、注文されたらこれで。」
えー!早速!?何も教わってないし、メニューも何も覚えてないのに!?
「一平、放置プレー・・・」
ドリンクを作っていた祐司が耐えかねたのか口を挟んでくれた。
「え?教育?何それ、勝手に覚えるだろ、みんな。」
あれ?秋山さん、そういう人?
「耕一、大丈夫か?まぁやってみるのはいいことだよ。一平はそういうやつだし。」
「大丈夫だと思うんですが・・・」
横目で秋山さんをみるも、俺の視線なんて全く関係ないかのように笑っている。
こえーよ・・・
運んだ卓ではファーストドリンクだったので早速注文を頼まれた。
お客さんにとって、制服着ていれば皆店員。そこには新人もベテランもありはしない。
次々に注文される料理にあたふたしながらも何故か「はい。」と言ってしまう。
その料理のキーが何処にあるのか全然わからないのに。
なんとか聞き終えて、少し離れてハンディのキーを必死に探した。
そこに秋山さんが来て「それはそこ、それは同じような料理があるから気をつけて、あのお客様が頼んだのはこっち。接客態度は問題ない。あとは慣れですね。」
あぁ、とりあえずやらせてそのあとフォローする方針なのね。
それなら嫌いじゃないが、なにせ唐突すぎる。
その時、耳につけているインカム(無線)から祐司の声が聞こえた。
『57卓様、57卓様お呼びです。』
「はい、了解いたしました。」
素早く秋山さんが返事をする。
秋山さんが57卓に行く間にハンディに少しでも慣れておかなければ・・・
「はい、行って下さい、57卓に。」
「あっ、僕が行くんですね・・・」
そうきたかと半笑いをしてしまった。
「はい、お願いします。」
お決まりの笑顔に少しげんなりしながら、57卓に向かった。卓番表を頼りに。
「えっとぉこの串揚げって一人前何本ですか?」
『二人前、二人前です。』
「二人前でお出ししております。」
「じゃあ4人前で、あと今日の刺身の盛り合わせは何入ってますか?」
『カンパチ、マグロ、タイ。』
「カンパチとマグロとタイでお出ししております。」
「ふーん、じゃあその盛り合わせ二つで。」
「あとは梅酒とビール5つで。」
『梅酒は飲み方言われなかったらロックで、なのでわざわざ聞かなくていいです。』
「はい、梅酒とビール5つですね、かしこまりました。」
っと、お客さんからの質問にインカムで秋山さんが答えてくれて、それをそのまま伝えるとなんとかさまになっている。
っていうか秋山さんどこで聞いてるんだか・・・
「接客中でもちゃんとインカム聞けて凄いじゃないですか。なかなか出来ないスタッフもいるんですよ。」
「ありがとうございます、フォロー助かります。」
うん、なんとかやっていけそうだ。
秋山さん、面倒見がいいんじゃないだろうか。
っというのは回転間もない時の話で、19時を過ぎたピークの時間には俺はこのバイトの大変さを知る。
「これ運んでー!んでそのままお伺い!」
「52卓様帰った!次の予約あるからバッシング(食器類を下げること)即行して!」
「フロントフォローして!高尾さん電話出てる!」
「そろそろ11卓の宴会ドリラスの時間だ!誰かとってきてくれ!」
そんな忙しい中、俺はとにかく運びに徹していたたまに注文を受けながらも、そのときにはしっかり秋山さんがフォローをいれてくれる。
例えば俺が卓番を間違ってオーダーを送信したときもいち早く間違いに気づいて注文した宅に提供して、間違いを訂正してくれる。
お客さんにも調理場でも実害なしにしてくれる。
あれ、秋山さん、やっぱり優しいな。
「秋山さん、ご案内に行って下さい。ご案内したら新規で立ち上げてお通しを打ってください。お通し自体は担当が持っていくので気にしないでください。」
はい、やっぱり急に新しいことやらせたりすんだよねぇ。
「はい、かしこまりました。」
この店、思っていたよりずっと忙しい。でも楽しい。
もう一人の秋山も厳しいところもあるが、最終的には優しくフォローしてくれるし。
この店で働くの、面白そうだ。
そう思った。
<Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1) AppleWebKit/535.1 (KHTML, like Gecko) Chrome/14.0.835.187 Safari/535.1 @KD111108044075.ppp-bb.dion.ne.jp>