Page 1251 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼みなさぁん!!ゲイアンケートの結果が出ましたわよー まさやん 05/12/13(火) 0:53 ┣Re(1):みなさぁん!!ゲイアンケートの結果が出ましたわよー チョコランタン 05/12/13(火) 7:41 ┃ ┗Re(2):みなさぁん!!ゲイアンケートの結果が出ましたわよー まさやん 05/12/13(火) 10:53 ┃ ┣Re(3):みなさぁん!!ゲイアンケートの結果が出ましたわよー すなお 05/12/14(水) 0:38 ┃ ┃ ┗Re(4):みなさぁん!!ゲイアンケートの結果が出ましたわよー まさやん 05/12/14(水) 1:31 ┃ ┃ ┗Re(5):みなさぁん!!ゲイアンケートの結果が出ましたわよー すなお 05/12/15(木) 0:13 ┃ ┗Re(3):みなさぁん!!ゲイアンケートの結果が出ましたわよー チョコランタン 05/12/14(水) 8:14 ┣ケータイの皆様ぇ−☆【1】ご挨拶長文 まさやん 05/12/13(火) 10:59 ┣【2】主な結果−長文 まさやん 05/12/13(火) 11:02 ┣【3】研究目的 まさやん 05/12/13(火) 11:04 ┣【4】研究方法−一部省略 まさやん 05/12/13(火) 11:13 ┣【5-1】研究結果と考察(1〜13)−超長文 まさやん 05/12/13(火) 11:28 ┣【5-2】研究結果と考察(1〜13)−超長文 まさやん 05/12/13(火) 11:32 ┣【5-3】研究結果と考察(8〜10) まさやん 05/12/13(火) 11:35 ┣【5-4】研究結果と考察(10・2〜13) まさやん 05/12/13(火) 11:39 ┣【6-1】自由記述欄に寄せられた声(1) まさやん 05/12/13(火) 11:53 ┣【6-2】自由記述欄に寄せられた声(2-1) まさやん 05/12/13(火) 11:55 ┃ ┗【6-2】自由記述欄に寄せられた声(2-2) まさやん 05/12/13(火) 11:57 ┣【6-3】自由記述欄に寄せられた声 まさやん 05/12/13(火) 12:08 ┣【6-4】自由記述欄に寄せられた声 まさやん 05/12/13(火) 12:10 ┣【6-5】自由記述欄に寄せられた声(12-1) まさやん 05/12/13(火) 12:17 ┃ ┗【6-5】自由記述欄に寄せられた声(12-2) まさやん 05/12/13(火) 12:20 ┃ ┗【6-5】自由記述欄に寄せられた声(12-3) まさやん 05/12/13(火) 12:24 ┃ ┗【6-5】自由記述欄に寄せられた声(12-4) まさやん 05/12/13(火) 12:26 ┃ ┗【6-5】自由記述欄に寄せられた声(12-5) まさやん 05/12/13(火) 12:27 ┃ ┗【6-5】自由記述欄に寄せられた声(12-6) まさやん 05/12/13(火) 12:30 ┃ ┗【6-5】自由記述欄に寄せられた声(12-7) まさやん 05/12/13(火) 12:31 ┃ ┗【6-5】自由記述欄に寄せられた声(12-8) まさやん 05/12/13(火) 12:41 ┃ ┗【6-5】自由記述欄に寄せられた声(12-9) まさやん 05/12/13(火) 12:43 ┃ ┗【6-5】自由記述欄に寄せられた声(12-10) まさやん 05/12/13(火) 12:45 ┃ ┗【6-5】自由記述欄に寄せられた声(12-11) まさやん 05/12/13(火) 12:46 ┃ ┗【6-5】自由記述欄に寄せられた声(12-12) まさやん 05/12/13(火) 12:48 ┣【6-7】自由記述欄に寄せられた声(まとめ) まさやん 05/12/13(火) 13:02 ┗管理人様・研究者様へ まさやん 05/12/13(火) 13:39 ─────────────────────────────────────── ■題名 : みなさぁん!!ゲイアンケートの結果が出ましたわよー ■名前 : まさやん ■日付 : 05/12/13(火) 0:53 -------------------------------------------------------------------------
メンヘラとセックスのアンケート結果報告 http://www.joinac.com/spirits-wave2/index.html 研究者:日高庸晴 先生様(京大)...他 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaq3d2e8818.zaq.ne.jp> |
携帯でゎ見れないの? <KDDI-SN31 UP.Browser/6.2.0.7.3.129 (GUI) MMP/2.0@wbcc6s02.ezweb.ne.jp> |
そぅねぇ(x_x;) ケータイだと無理みたい。。。↓↓↓ 時間がアルときPCからコピー貼り付け致しましょうか(・ー・?) でもかなり膨大なのよねぇ。。。読むの疲れちゃうわ。管理人様に怒られないかしら? <DoCoMo/2.0 F900i(c100;TB;W22H12)@proxy206.docomo.ne.jp> |
▼まさやんさん: > >でもかなり膨大なのよねぇ。。。読むの疲れちゃうわ。 すなおです 頑張って書き込みされていますね 元気でなによりです ここ行ってきました ほんと膨大で目が疲れました ところで話変わりますが 兄貴と弟の相談室 今月10日の意味が分からないの相談者(怖い)の方にコメン とされましたか? ハンドルネイムがまさやんさんに でも君と感じが違うので 別人でしょうね 愚問の質問で済みません すなお <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1)@i60-34-35-34.s05.a033.ap.plala.or.jp> |
ん〜兄貴と弟の相談室ですかぁ(・ー・?) 聞いたことないですね。m(__)mなんでしょうそれ。僕じゃないです。 そろそろハンドルネームもかえどきかなぁ。。。 飽きちゃったしwww アンケートの奴はPCでコピー貼り付けやから全然大丈夫ですよv('∀^) でもせっかくやから読んでほしいし感想聞きたいな☆一応研究参加者?答えた人やから。。。 でもA著作権に触れるのでお叱り受けたら消すつもりです↓↓。せやからケータイの人は早い目に読んでちょ しんどいけど。。 <DoCoMo/2.0 F900i(c100;TB;W22H12)@proxy261.docomo.ne.jp> |
▼まさやんさん: >ん〜兄貴と弟の相談室ですかぁ(・ー・?) > >聞いたことないですね。m(__)mなんでしょうそれ。僕じゃないです。 > >そろそろハンドルネームもかえどきかなぁ。。。 >飽きちゃったしwww > >アンケートの奴はPCでコピー貼り付けやから全然大丈夫ですよv('∀^) >でもせっかくやから読んでほしいし感想聞きたいな☆ やはり別人でしたか そんな感じがしてました 貼り付け作業って手間隙かかる のですか 何しろPC(メカ)に弱いもので 僕には出来ない芸当です そう言う意 味でこれだけ長い文章を貼り付けたまさやんさんに敬意を お疲れ様でした すなお <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1)@i60-46-142-159.s05.a033.ap.plala.or.jp> |
お疲れさまでした♪ <KDDI-SN31 UP.Browser/6.2.0.7.3.129 (GUI) MMP/2.0@wbcc6s05.ezweb.ne.jp> |
【1】ご挨拶 『メンタルヘルスとセックスに関するアンケート Sexuality, Psychological, Identity Related Issues Targeted Study(SPIRITS) Wave 2』にご協力いただきありがとうございました。男性同性間におけるHIV感染の拡大が続いている現在、本研究は男性とセックスの経験のある男性(Men who have Sex with Men、以下MSM)のHIV感染リスク行動−コンドーム不使用状況など−の実態やそれに関連するメンタルヘルスなどの心理・社会的要因を明らかにすることを目的に実施されたインターネット調査です。研究参加者は日本全国に渡り有効回答数は2,062人でした。回答ミスは比較的少なく、自由記述欄にはアンケート回答を通じて考えたこと、ご自身の現在の日常生活のなかで日々感じていることやこれまでのライフヒストリー、本研究への期待や感想、ご批判等々とても多くのコメントをいただきました。アンケートおよび自由記述欄の記述から、研究に参加してくださったみなさんが一生懸命に回答してくださったということが強く伝わってきました。ありがとうございました。また、調査実施時にはバナー広告を通じて調査実施のお知らせをインターネット上でさせていただきましたが、いくつかの商業ゲイ・サイトからは無料広告として本研究をご支援いただきました。バナー広告にご協力いただいたサイトは別途ご紹介させていただきます。 ゲイ・バイセクシュアル男性およびMSMを対象としたメンタルヘルスに関する調査研究は本邦ではこれまであまり行われてきませんでした。1999年夏に本邦で初めて実施された『ゲイ・バイセクシュアル男性のメンタルヘルスに関するアンケート(研究参加者数1,025人)』では異性愛者を装うことによるストレス−異性愛者的役割葛藤−を強く感じている者ほど、抑鬱、特性不安、孤独感、自己抑制型行動特性が有意に高く、セルフ・エスティームは有意に低いことが明らかとなりました。また他集団対象の先行研究の結果と比較しても、ゲイ・バイセクシュアル男性は全般的に精神的健康を悪化していることがわかりました。生育歴におけるライフイベントの実態としては自殺を考えたこと、自殺未遂、いじめ被害などの経験割合も示されました。その後、2001年夏に私たちは『自由記述式によるインターネット調査 Sexuality, Psychological, Identity Related Issues Targeted Study(SPIRITS) Wave 1』を実施し、コンドーム使用や不使用に関わる様々な状況や感情、メンタルヘルスに関わる事柄についてみなさんから生の声を寄せていただきました。本研究『メンタルヘルスとセックスに関するアンケート Sexuality, Psychological, Identity Related Issues Targeted Study(SPIRITS) Wave 2』では、SPIRITS@Wave 1でみなさんから寄せられた生の声や専門家の意見、これまでに海外で実施されてきた研究結果などを参考にして質問票を作成しました。 男性同性間においてHIV感染が拡大している現在、MSMを対象とした有効なHIV予防対策を推進するために、本研究の結果を多領域の専門家にもご報告したいと考えています。HIV対策やメンタルヘルス対策に重要な関わりがある、学校現場の教諭や養護教諭などの教育関係者、医師や看護師、保健師などの保健・医療の従事者、心理カウンセリングを担う臨床心理士などの心理臨床家、医療ソーシャルワーカーなどの福祉職、そしてHIV対策やメンタルヘルス対策に従事する行政担当者など関連する領域の専門職の方々に本研究結果を還元することを通じて、各専門職の専門性を活かした形で有効なHIV対策やメンタルヘルス対策が実施されていくよう呼びかけていこうと思っています。そのため、このホームページも対人援助職の方にも読んでいただけるような内容で作成しました。 本研究は本研究は平成14年度厚生労働省エイズ対策研究事業「HIV感染症の動向と予防介入に関する社会疫学的研究」(主任研究者・木原正博)および平成15年度厚生労働省エイズ対策研究事業「男性同性間のHIV感染予防対策とその推進に関する研究」(主任研究者・市川誠一)の研究の一部として実施されました。また、本研究はIRB(Independent Review Board)として京都大学医学部「医の倫理委員会」による研究計画の審査および同委員会の指針に基づき、実施しました。 研究チーム 日高庸晴 (京都大学大学院医学研究科社会疫学) 市川誠一 (名古屋市立大学大学院看護学研究科感染予防学) 古谷野淳子 (心理カウンセラー) 浦尾充子 (心理カウンセラー) 安尾利彦 (心理カウンセラー) 木村博和 (横浜市衛生局) 木原正博 (京都大学大学院医学研究科社会疫学) なおこのホームページは平成15年度財団法人エイズ予防財団厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究推進事業・研究成果等普及啓発事業として作成されました。 調査実施および研究結果報告のホームページ制作にあたっては、株式会社ジョイナックから廉価によるご協力を得ました。研究実施にあたり多くの方にご協力いただきましたことを心より感謝申し上げます。 京都大学大学院医学研究科日高庸晴 本ページの内容を無断で転載・転用・引用することを禁止します。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
◆ 研究参加者のプロフィール -------------------------------------------------------------------- 2062人のゲイ・バイセクシュアル男性が47都道府県すべてから研究に参加してくださいました。 20代〜30代が大半を占め、都市部からのアンケート回答が多く、男性の恋人がいる人は全体の43.5%、男性のセックスフレンドがいる人は30.0%でした。また、親に性的指向をカミングアウトしている人は13.8%、友達にカミングアウトしている人は51.4%でした。 ----------------------------------------------------------------- ◆ インターネット利用目的 ------------------------------------------------------------------ 全体の72.7%が「趣味に関する情報を得ること」、62.0%が「ゲイ・バイセクシュアルの友達を作ること」、51.9%が「男性同性間の情報を得ること」、46.2%が「ゲイ・バイセクシュアルの恋人を作ること」をインターネットの利用目的として回答していました。これらの結果から、インターネット利用目的の上位はゲイ・バイセクシュアルの交友関係に関することで占められていることがわかりました。 ------------------------------------------------------------------- ◆ コンドーム使用状況 ------------------------------------------------------------------- 全体の89.3%が過去6ヶ月間にセックス経験があり、本調査では最もHIV感染の可能性が高い行為をコンドーム不使用のアナルセックスと捉えて分析しました。 過去6ヶ月間にセックス経験があり、アナルセックスをしており、HIV陰性あるいは感染状況を知らない1346人のコンドーム使用状況を年齢階級別、過去6ヶ月間のセックスの人数別、アナルセックスにおける挿入・被挿入(経験)別に分析しました。 ○年齢階級別のコンドーム使用割合 コンドームを必ず使った人の割合は10代が最も低く、年齢が上がるにつれて必ず使う割合も増加傾向にあり、若年層ほど「使わなかった」割合は高い傾向にありました。 ○過去6ヶ月間のセックスの人数別のコンドーム使用割合 過去6ヶ月間のセックスの相手の人数別に分析すると、相手の人数が多い人ほど必ず使う傾向にあり、人数が少ないほど「使わなかった」割合は高い傾向にありました。 ○アナルセックスにおける挿入・被挿入別のコンドーム使用割合 過去6ヶ月間におけるアナルセックス経験種別は、挿入のみ経験者は22.8%(307人)、被挿入のみ経験者は22.7%(305人)、挿入・被挿入両方経験者は54.5%(734人)でした。コンドーム使用状況をこのアナルセックス経験種別ごとに分析したところ、コンドームの使用割合が高かったのは挿入のみ経験者、被挿入のみ経験者、挿入・被挿入両方経験者の順でした。 ------------------------------------------------------------------- ◆ ラッシュ・ゴメオ使用状況 ------------------------------------------------------------------- これまでにラッシュを使ったことがある人の割合はどの年齢層においても比較的高く、20代〜40代の使用割合は60%を超えていました。また、居住地域別のラッシュ使用割合は53.5%〜70.2%であり、東京都内および大阪府内在住者の使用割合は高い傾向にあり、その他の地域においても使用割合は50%を超えていました。 これまでにゴメオを使ったことがある人の割合は2.2%〜13.2%であり、30代の使用割合が最も高いことがわかりました。また、居住地域別のゴメオ使用割合は3.8%〜14.4%であり、北海道・東北地方、東京都および大阪府内在住者の使用割合は高い傾向にありました。 ----------------------------------------------------------------- ◆ 精神的健康の実態 ------------------------------------------------------------------ 特性不安、異性愛者的役割葛藤、抑うつ、孤独感、自尊心の心理尺度によってメンタルヘルスの実態を測定しました。年齢層が若いほど不安、異性愛者的役割葛藤、抑うつ、孤独感を強く感じておりメンタルヘルスは全般的に悪化していること、自尊心は低いことが明らかとなりました。また、異性愛者を装うストレスが強い人ほどメンタルヘルスを悪化していることがわかりました。この結果は、1999年実施のインターネット調査の結果と全く同様の傾向です。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
【3】研究目的 2000年頃より米国においてはインターネットを通じてセックス・パートナーを探すゲイ・バイセクシュアル男性およびMSM(Men who have Sex with Men)の特性の把握や、インターネットを通じたHIV予防介入の試みがなされていますが、本邦において同種の取り組みは十分に実施されているとは言い難い状況にあります。加えて、ゲイ・バイセクシュアル男性およびMSMのHIV感染予防行動に関連する心理・社会的要因および生育歴の実態を把握する調査研究の実施もほとんど実施されてきていません。これまでに本邦で実施されてきた行動疫学調査によると、同集団のインターネット利用率は比較的高率であると推察されることや、インターネットや携帯電話の出会い系サイトを通じたセックスの機会も増加傾向にあると考えられることなどから、インターネット調査を横断的に実施しました。 よって本研究の目的は、インターネットを通じた情報提供やHIV予防介入プログラムの構築に資するために、ゲイ・バイセクシュアル男性およびMSMのインターネット利用層のHIV感染予防行動の実態やそれに関連する心理・社会的要因やその背景を明らかにすることです。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
【1】無記名自記式質問票調査をインターネットで実施 --------------------------------------------------------------------- これまでに男性とセックスの経験のある男性を対象として、Web上に開設した本研究専用ホームページを介して、無記名自記式質問票調査を実施しました(実施期間:2003年2月28日〜5月16日)。 質問項目の構築にあたっては、1)2001年8月〜9月に実施した本研究の第一次調査であるオンライン質的研究 Sexuality, Psychological, and Identity Related Issues Targeted Study (SPIRITS) Wave 1によって抽出された、セックスやコンドーム使用および不使用行動に意識的・無意識的に作用していると考えられる心理的な問題の諸側面や、2)本邦においてHIV陽性者やMSMの心理カウンセリングの臨床経験がある心理臨床家による臨床経験に基づいた示唆、3)米国における先行研究の結果を参考に検討しました。 ------------------------------------------------------------------------ 【2】質問項目 ------------------------------------------------------------------------ 本研究で用いた主な質問項目は、基本属性、インターネット利用環境、HIV/STI一般知識、過去6ヶ月間のセックスやコンドーム使用状況、性感染症の既往歴、セックスに投影される心理的なこと等に加えて、STAI特性不安尺度(Spielberger、水口・下仲・中里訳)、異性愛者的役割葛藤尺度(日高)、自尊心尺度(Rosenberg、山本・松井・山成訳)、改訂版UCLA孤独感尺度(Russel, Peplau & Cutrona、工藤・西川訳)、SDS抑うつ尺度(Zung、福田・小林訳)等の心理尺度などによって構成しました。以下、本調査で用いた心理尺度の概要を説明します。 STAI特性不安尺度(得点範囲:20〜80点):不安とは発汗、めまい、不眠などの生理的現象を伴った、漠然としたおそれのことをいいますが、不安は一般に恐怖とは異なり、不特定の不明瞭な、目標のない危険に対する反応だと考えられています。不安は自律神経等の興奮が伴う一時的、状況的な不安と、ストレス状況に対して状態不安を喚起させやすい傾向で比較的安定した個人内特性による不安があります。特性不安はストレス状況下において前者を生み出す個人差特性すなわち、個人の不安傾向であると言えます。この尺度はSpielberger C.D.によって開発され標準化されたSTAIを水口、中里らが翻訳し、信頼性および妥当性を検討した上で標準化し、商品化された尺度です。高不安と判断される基準値(カットオフポイント)は44点とされています。 異性愛者的役割葛藤尺度(得点範囲:15〜60点):日高によって開発された、異性愛者を装うことでストレスを感じる状況場面を設定し、その時々に感じる役割葛藤の頻度を測定する尺度です。「彼氏のことを彼女に置き換えて話しているとき」「彼女いないの?と聞かれ、適当に話をあわせているとき」「『結婚話』をすすめられたとき」など15項目によって構成されています。尺度得点が高いほど異性愛者的役割演技をすることによってその役割演技に対する葛藤が高いことを表しています。 自尊心尺度(得点範囲:10〜50点):Rosenbergによって開発され、山本らによって翻訳され、信頼性および妥当性を検討された自尊心尺度です。自分をどれだけ大切に思っているか、自分をどれだけ評価しているかというセルフ・エスティームを測定するものです。セルフ・エスティームの訳としては、「自尊心」「自尊感情」「自己評価」などいくつかあります。 改訂版UCLA孤独感尺度(得点範囲:20〜80点):Russel, Peplau & Cutronaらによって開発された孤独感尺度を工藤・西川が翻訳し、信頼性および妥当性を検討された尺度です。孤独感とは人間関係の中でわれわれがこうありたいという願望があるとき、その願望が十分に満たされなかったり逆に倫理的な満足感を低下させるような結果が生じたときに感ずる感情の1つであると定義しています。UCLA孤独感尺度は孤独感が社会的関係の不全に由来するという状況的立場から開発されています。 SDS抑うつ尺度(得点範囲:20〜80点):Zung WWKによって開発され標準化された尺度を福田・小林が翻訳し、信頼性および妥当性を検討した上で商品化された尺度です。この尺度は自己評価により抑うつ状態を測定する尺度であり、スクリーニングテストとして活用されることが多く、本邦のみならず世界中で使われています。日本人の平均点は一般の健常者においては男性で35点、神経症患者においては男性で46点、うつ病患者においては男性で59点であると言われています。 ---------------------------------------------------------------------- 【3】サンプリング ---------------------------------------------------------------------- 本研究のホームページを潜在的な研究参加者に広く知らせる方法として、50件を超えるゲイサイトにバナー広告を掲示し、バナーリンクによって研究参加を呼びかけました。バナー広告掲示にあたっては、各サイトの管理者の協力と一部の有償広告の併用によって行われ、またこうしたリンク協力の依頼をE-mailを通じても行いました。このE-mailがスノーボール式に転送されることによって、口コミによる研究実施の告知にもなったものと考えられます。さらに、ゲイ雑誌やゲイ対象のメールマガジンにおいても本研究の実施について記事が掲載されたことによって、研究参加者の増加につながりました。 本邦においては可視化されづらい集団のひとつであるMSMを対象とした調査手法にインターネットを活用することの最大の利点は、研究参加者のプライバシー等の秘匿性を最大限に確保した状況で、当事者の研究参加が実現できる点であると考えられます。インターネットを介した質問票回答は、個別訪問調査やロケーション・サンプリングとは異なり、研究参加者の都合に合わせて、時間や場所を選ぶことなくアンケートに回答という形で研究参加が可能になるという利便性もあります。加えて、インターネットを通じた回答は、従来からの「面接調査」や「紙とペンによる質問紙調査」に比較してもその回答は信憑性が高いとも言われています。その信憑性の高さは、研究参加者がひとりでいる空間で自由意思に基づいてひとりで回答できる可能性が高いことなどが要因であると考えられます。そのため研究参加者のプライバシーを確保するためには、インターネット上のセキュリティやシステムにも十二分の配慮が必要であると考えられました。また、本研究の対象とする集団は社会的マイノリティであることや、質問票の内容は精神的健康や性行動など非常にセンシティブな内容であるため、内容的側面からも高いセキュリティの確保が必要であったため、インターネット・サーバのセキュリティ保守には以下のような対策を講じました。 ------------------------------------------------------------------------ 【4】インターネット・セキュリティ ------------------------------------------------------------------------ (略)個人情報の保護などを目的に、(略)SSLによるデータの暗号化を、回答データ送信時の情報漏洩防止策としました。 ------------------------------------------------------------------------- 【5】サーバ管理 ------------------------------------------------------------------------- (略) ------------------------------------------------------------------------- 【6】データの管理および保存方法 ------------------------------------------------------------------------- (略) ------------------------------------------------------------------------- 【7】研究参加者の取り込み基準(inclusion criteria) -------------------------------------------------------------------------- 1)これまでに男性とセックスの経験のある男性であること。 2)ゲイコミュニティで使われている俗語によるワードトレーサーに反応すること。このワードトレーサーによって、質問票回答者が取り込み基準1)に該当するかを判断する基準としました。 3)質問票回答が初回であること。同一人物が同一端末より複数回に渡って質問票回答をしていないことを確認するために、クッキーをプログラム化しました。クッキー情報から、同一端末からの初回回答分のみを解析することを基本としました。同一端末から複数回に渡る回答がクッキー情報により確認された場合は、基本属性、自宅郵便番号および回答傾向から、同一人物が故意に重複回答したものであるかどうかを検討しました。重複回答検索のためのこのスクリーニング過程を徹底するために、クッキーを受け容れないブラウザからは質問票サイトにアクセスできないプログラムにしました。 4)さらに、同一人物による重複回答がされているかを検索するために、研究参加者のインターネット接続時のIPアドレスを検索しました。しかしながら、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)方式では個人に固定のIPアドレスが付与されているわけではないので、インターネット接続時のプロバイダを同定した上で、基本属性や自宅郵便番号および回答傾向から重複回答の可能性を検証しました。以上4点のスクリーニング要件を全て満たしたデータのみ、解析対象としました。 ------------------------------------------------------------------------- 【8】倫理面への配慮 ------------------------------------------------------------------------- 研究参加者に対して、本研究の目的と研究方法について説明した上で、以下の項目についてWeb上で研究に参加にあたっての同意確認を質問票回答前に行いました。1)インターネット上に開設されているアンケート専用ページを通じて、アンケート回答という形で研究に参加すること、2)研究参加にあたって、プライバシーは保護され、匿名で参加すること、3)セックスやメンタルヘルスに関する質問項目のいくつかは、場合によっては立ち入った質問のように感じることがあったり、不愉快な気分になる可能性があること。そういった場合やその他の理由で、アンケートの回答途中であってもいつでも自由にアンケート回答を中断する(研究参加を取りやめる)ことができること、4)研究に参加しないという選択肢もあること、5)研究に参加するにあたり参加費などは発生しないが、インターネット接続時のプロバイダ課金や電話料金は研究参加者の自己負担であること、6)アンケート回答が初回であること、以上の6項目について確認を行いました。また、研究参加にあたり不明な点や質問等がある場合は、研究者といつでもE-mailによって連絡が取れることを説明した上で、そのための研究者のE-mailアドレスを付記しました。そして、最後にもう一度全ての項目に同意した上で研究に参加する確認を行い、同意した者のみが質問票サイトへ進めるようにホームページをプログラムしました。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
【5-1】研究結果と考察(1〜4まで) 【1】基本属性 ------------------------------------------------------------------- 男性とセックスの経験がある男性の有効回答数は2,062人でした。このうち過去6ヶ月間におけるセックス経験割合は89.3%(1,842人)でした。研究参加者の居住地は47都道府県すべてにおよび、関東地方および東京都在住者が全体の約43%を占めていました。平均年齢は29.03歳(SD=8.02)であり(最低14歳_最高76歳)、年齢分布は20代から30代が全体の約80%を占めていました。 居住形態は親・兄弟と同居が最も多く約40%、職業は会社員・公務員・団体職員が約50%であり、学生の割合は20%でした。最終学歴は大卒以上が約60%であり、婚姻形態は90%以上が未婚でした。 自認する性的指向はゲイが約70%、バイセクシュアルが約21%であり、セックスしたい相手の性別は男性のみおよび主に男性が89%を占めました。また、男性の恋人がいる人は44%であり男性のセックスフレンドがいる人は30%でした。 カミングアウトの状況は、親にカミングアウトしている人は14%、親以外にカミングアウトしている人は51%でした。その他の基本属性は下表の通りです。 また、インターネット利用目的は「趣味に関する情報を得ること」が最も多く、次いで「ゲイ・バイセクシュアルの友達をつくること」「男性同士のセックスに関する情報を得ること」「ゲイ・バイセクシュアルの恋人をつくること」といったゲイ・バイセクシュアルに関連することを利用目的とする人の割合が多くありました。 図表→(略) --------------------------------------------------------------- 【2】ゲイ・バイセクシュアルの交友関係における出来事(1) ---------------------------------------------------------------- 「電話をしても出てもらえなくなったこと」がある人の割合は40.0%〜53.1%であり年齢階級と有意でした(P=.014)。中でも20代と30代の人にこういった経験をした人の割合が多かったことが示されました。このような出来事は、自分のことをあからさまに拒絶されたように感じる経験や、人間関係を一方的に切られてしまった経験となるのではないかと思われます。 また、「相手の本名をなかなか教えてもらえなかったこと」がある人の割合は50.0%〜70.0%、年齢階級と有意であり(P=.014)、年齢が上がるにつれて多くなる傾向にありました。心を許して本名を教えたことによって、逆に個人情報を悪用されるような事態へ発展しかねないかと不安になる様子が窺われます。親密な人間関係を築きたいけれども、社会的な不利益をおそれ、近づききれない、心を許しにくいという、ゲイの交友関係における人間関係の構築の難しさがあらわされているのかもしれません。 「自分が言われたくないことを、他の人に言われてしまったこと」がある人の割合は37.8%〜48.7%、年齢階級と有意な関連はありませんでした。10代〜30代では半数弱の人がこういった経験をしており、自分のプライバシーに関わることを許可なく他の人に言われてしまうことは、人間関係の中で不信感を抱かざるを得ないような経験かもしれません。 「自分はしたくなかったのに相手の要求に合わせてセックスしたこと」がある人の割合は35.6%〜59.6%、年齢階級と有意(P<.001)であり、10代〜30代では半数以上の人がこういった経験をしていました。性に関して対等な意思疎通ができない一方的な人間関係があることが示唆されているように思われます。 「インターネットの掲示板に書き込みをした時に、意地の悪いレスを書かれたこと」がある人の割合は13.3%〜24.0%、年齢階級と有意な関連はありませんでした。どの年齢層においても少ない割合ではありますが、インターネットの掲示板に自分が書き込みをしたことに対して、意地の悪いレス(レスポンス)やネガティブな反応をされるということは、匿名性の人間関係の中でも、自分が否定されたように感じると共に傷つきの経験になるものと思われます。 -------------------------------------------------------------------- 【3】ゲイ・バイセクシュアルの交友関係における出来事(2) -------------------------------------------------------------------- 「異性愛の社会では出会えないような人と出会えたこと」がある人の割合は68.9%〜91.0%、年齢階級と有意でした(P<.001)。50代以上になるとこういった経験をしたことがある人の割合は他の年齢層と比較すると少ない傾向にありますが、10代〜40代では84.7%〜91.0%といった高い経験率でした。同じ性的指向というつながりだけで、異なる年齢層や異なる職種など様々な人と出会えることは、ゲイ・バイセクシュアルの交友関係から得られる喜びの一つかもしれません。 「心を許せる友達との付き合い」がある人の割合は68.1%〜86.1%、年齢階級と有意でした(P<.001)。どの年齢層も70%ほどの人が心を許せる友達との出会いを経験していました。年齢が高くなるにつれて同じ性的指向の仲間との安定した関係を実感できているのではないかと考えられます。 「ゲイコミュニティのイベントに参加して楽しかったこと」がある人の割合は8.9%〜41.0%、年齢階級と有意でした(P<.001)。こうした経験をしたことがある人は20代〜40代は他の年齢層より高い割合でした。ゲイ・バイセクシュアルの交友関係が始まったばかりの10代や年齢が上になるとこういった経験は少ない傾向でした。 「インターネットの掲示板に書き込みをして、好意的なレスをもらったこと」がある人の割合は66.7%〜74.4%、年齢階級と有意な関連はなく、どの年齢層においても70%前後の人がこういった経験をしているようです。インターネット空間という匿名性の人間関係の中でも、好意的なレスポンスを掲示板上でもらえることは、同じゲイ・バイセクシュアルの仲間からサポートされていると思える貴重な機会であると思われます。 「『この人のようになりたい』と目標になる人がいること」がある人の割合は42.2%〜65.0%、年齢階級と有意でした(P<.001)。年齢が高くなるほど、目標になる人の存在を得ることはなかなか難しいのかもしれませんが、少なくとも30代までの比較的若年層の多くの人が、ゲイ・バイセクシュアルの交友関係の中で目標になるような人=ロールモデルを得ているということかもしれません。「異性愛の社会では出会えないような人との出会い」の経験同様に、ゲイ・バイセクシュアルのコミュニティに踏み出したからこそもたらされた出会いであったと感じられているとも言えるでしょう。 -------------------------------------------------------------------- 【4】生育歴における出来事 --------------------------------------------------------------------- 「同性愛に対して差別的な発言を見聞きしたこと」がある人の割合は84.4%〜89.3%、年齢階級と有意な関連はありませんでした。しかしながらどの年齢層においても80%を超えており、同性愛に対する社会的な差別や偏見の内面化を促進する可能性がある経験であると言えるでしょう。 「『ホモ』『おかま』『おとこおんな』という言葉でいじめられたこと」がある人の割合は40.0%〜63.8%、年齢階級と有意でした(P=.045)。性的指向に関連したこういった言葉によるいじめ被害割合は、どの年齢層においても50%を超えており、とりわけ10代では60%以上であるなど、若年層ほど被害割合は高い傾向にありました。性的指向に直接的に関連する言葉によるいじめは、ゲイ・バイセクシュアル男性の発達段階や生育歴における大きな心理的危機状態を招くことのひとつと考えられます。教育現場では、「いじめに性的指向のことが関連している可能性があるかもしれない」という視点をもつこと、それによっていじめの背景要因に性の問題があるかもしれないというアンテナを張っておく必要があると言えるでしょう。生育歴におけるいじめ被害経験は、同性愛嫌悪の内面化や性的指向への心理的葛藤の強化につながり、ひいては異性愛者を装うことによって異性愛社会に過剰適応せざるを得ない事態にもつながっているように思われます。 「同性愛者ではないかと噂されたこと」がある人の割合は66.7%〜84.7%、年齢階級と有意でした(P=.001)。とりわけ20代〜40代においては74.2%〜84.7%とかなり高率でした。自らの性的指向が揶揄のニュアンスを含む噂話の対象にされる体験も、自己否定感につながりかねないと考えられます。 「ゲイ・バイセクシュアルであるということが理由で友達をなくしたこと」がある人の割合は12.0%〜22.2%、年齢階級と有意な関連はありませんでした。50代以上のこういった経験割合は20%を超えている点が特徴的です。 「身体的暴力をふるわれたこと」がある人の割合は4.7%〜21.3%、年齢階級と有意でした(P<.001)。身体的暴力による被害割合は10代では20%を超えており、若年層ほど身体的暴力の被害に遭っている傾向にありました。 いじめ被害と同性愛者ではないかと噂された経験割合は高い一方、身体的暴力の被害割合やゲイ・バイセクシュアルであるということが理由で友達をなくしたことの割合は比較的低いことが示されました。身体的暴力による被害割合は全体的に低い傾向にありますが、身体的暴力の形式を取らないいじめ被害や傷つきの経験(言葉によるいじめ被害や同性愛ではないかと噂されたこと、友達をなくしたこと)は教育現場などにおいては顕在化しにくいと言えます。身体的に傷が残らないことによって心の傷は周囲の大人に気付かれることなく、結果として現状を認識されないが故に対策が講じられていないとも言えるでしょう。目に見える形での身体的暴力の経験は比較的少なくても、社会的な差別や偏見をはじめとしてゲイ・バイセクシュアル男性は日々様々な場面で傷ついていると考えられます。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
【5-2】研究結果と考察(5〜7) ------------------------------------------------------------- 【5】HIV/性感染症に関する一般知識 ----------------------------------------------------------- 全体としてはHIV/性感染症に関する正しい知識はほぼ浸透していると考えられる結果でしたが、年齢層によって正答割合に差が見られました。正答割合が年齢階級と有意であり、10代の正答割合が他の年齢層よりも低かった項目は、「現在、新しいエイズ治療薬で延命治療ができるようになった」(P=.012)、「HIV抗体検査では、感染後2-3日で感染がわかる」(P<.001)、「性感染症にかかっているとHIVに感染しやすい」(P=.001)、「性感染症の原因となる病原体に感染すると、必ず症状が出る」(P=.012)でした。どの知識も年齢が上がるにつれて正答割合もほぼ上昇していますが、ゲイ・バイセクシュアル男性を対象としたHIV予防対策の中で、とりわけ若年層を対象に知識の普及を図る必要があると考えられます。 また、アナルセックスに関する項目ではどの年齢層の正答割合も80%を超えていますが、「アナルセックスの時、挿入する側(タチ)は性感染症に感染しない」(P<.001)「アナルセックスの時、挿入する側(タチ)はHIVに感染しない」(P<.001)「アナルセックスの時、射精しなければタチもウケも両方ともHIVに感染しない」(P=.001)の項目においても10代の正答割合は他の年齢層に比べて低い傾向にありました。 「A型肝炎はワクチンで予防することができる」(P=.040)、「B型肝炎はワクチンで予防することができる」(P=.023)、「保健所で名前を言わずに無料でHIV検査できる」(P<.001)の正答割合は21.3%〜33.6%であり、ワクチン接種による肝炎予防についての知識はどの年齢層にもほとんど浸透しておらず、とりわけ若年層には情報が届いていないことが示唆されました。これまでにA型肝炎がゲイ・バイセクシュアル男性の間で流行したこともあり、ワクチンについての情報提供をHIV予防対策の中に盛り込んでいく必要があると考えられます。 ------------------------------------------------------ 【6#1】過去6ヶ月間の性的活動およびコンドーム使用状況(過去6ヶ月間の性的活動) ----------------------------------------------------- 年齢階級と経験割合が有意であり、若年層がその経験割合が高かった項目は、「ビデオボックス系ハッテン場に行ったこと」(P=.010)、「マンション系ハッテン場に行ったこと」(P<.001)、「ゲイナイトに行ったこと」(P<.001)、「お金をもらって男性とセックスしたこと」(P<.001)、「インターネットで知り合った男性とセックスしたこと」(P<.001)、「携帯電話の出会い系サイトで知り合った男性とセックスしたこと」(P<.001)、「ゲイコミュニティのイベントに参加したこと」(P=.012)でした。一方、年齢層が上の者の経験割合が高かった項目は、「サウナ系ハッテン場に行ったこと」(P<.001)、「ハッテン映画館に行ったこと」(P<.001)、「お金を払ってセックスしたこと」(P<.001)でした。年齢層によってセックスのために利用する場所が異なることや、お金を介したセックスが成立していることが窺えます。 (注)ハッテン場とはゲイ・バイセクシュアル男性がセックスを含めた出会いを求めて集まる場所であり、中にはサウナやビデオボックスといった商業的な施設もあります。 -------------------------------------------------------------------- 【6#2】過去6ヶ月間の性的活動およびコンドーム使用状況(コンドーム使用状況) -------------------------------------------------------------------- 2,062人のうち、過去6ヶ月間に男性とのセックスがあった人は89.3%(1,842人)でした。本調査では最もHIV感染の可能性の高い行為を、コンドームを使わないアナルセックスとして捉えて分析するため、アナルセックス時におけるコンドーム使用状況について分析しました。 このうちHIV陰性あるいは感染状況を知らない人は1,792人であり、そのうちアナルセックスの経験があった人は75.1%(1,346人)でした。この1,346人のコンドーム使用状況を年齢階級別に分析したところ、必ず使った人の割合は10代が最も低く、年齢が上がるにつれて必ず使う割合も増加傾向にあり、若年層ほど「使わなかった」割合は高い傾向にありました(P<.001)。 アナルセックス経験者(1,346人)のコンドーム使用状況を過去6ヶ月間のセックスの相手別に分析すると、相手の人数が多い人ほど必ず使う傾向にあり、人数が少ないほど「使わなかった」割合は高い傾向にありました(P<.001) この1,346人の過去6ヶ月間におけるセックスの相手の種別は、特定のみが25.8%(347人)、不特定のみが32.7%(440人)、特定と不特定の両方が41.5%(559人)でした。 また、この1,346人の過去6ヶ月間におけるアナルセックス経験種別は、挿入のみ経験者は22.8%(307人)、被挿入のみ経験者は22.7%(305人)、挿入・被挿入両方経験者は54.5%(734人)でした。コンドーム使用状況をこのアナルセックス経験種別ごとに分析したところ、コンドームの使用割合が高かったのは挿入のみ経験者、被挿入のみ経験者、挿入・被挿入両方経験者の順でした(P<.001)。 ------------------------------------------- 【7】過去1年間のHIV抗体検査受検状況 --------------------------------------------------- 過去1年間のHIV抗体検査受検割合は8.9%〜25.2%、年齢階級と有意でした(P<.001)。また、居住地域別のHIV抗体検査受検割合は14.0%〜31.3%であり、居住地域とも有意でした(P=.001)。20代〜30代の受検割合に比較すると他の年齢層の受検割合は低いことが示され、関東地方(東京を除く)、東京都、東海地方、大阪府、近畿地方などの都市部在住者の受検割合は20%を超えており、他地域よりも高い割合でした。受検場所は保健所が最も多く、次いで病院・医院、南新宿検査・相談室、夜間・休日検査、検査イベント、その他の順でした。 10代はHIV/性感染症に関する一般知識の正答割合も他の年齢層に比較すると低く、10代のアナルセックス経験者のコンドーム使用割合も低く、HIV抗体検査受検割合も低いことが示されました。これらのことから、若年層に対する知識の普及やコンドーム使用を促すことと同時に、HIV抗体検査の受検を促進させることとや若年層が受検しやすい検査環境を整えていくことも重要であることが示唆されました。また、東京、大阪、名古屋などの都市部以外の地域における受検割合が低かったことから、地方においてはゲイ・バイセクシュアル男性が検査を受けづらい環境があることが推察されます。検査環境の地域格差がないような対策も今後急務であると考えられます。検査受検場所は保健所が最も多かったことから、ゲイ・バイセクシュアル男性の健康問題やそれに関連する心理・社会的要因について、保健師や看護師が研修する機会の提供も必要であると考えられます。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
-------------------------------------------------------------------- 【8】ラッシュおよびゴメオ使用・性感染症の既往 --------------------------------------------------------------------- これまでにラッシュを使ったことがある人の割合は20.0%〜70.0%、年齢階級と有意でした(P<.001)。どの年齢層もラッシュ使用割合は比較的高く、20代〜40代の使用割合は60%を超えていました。 また、居住地域別のラッシュ使用割合は53.5%〜70.2%、居住地域とも有意でした(P=.003)。東京都内および大阪府内在住者の使用割合は高い傾向にあり、その他の地域においても使用割合は50%を超えていました。 これまでにゴメオを使ったことがある人の割合は2.2%〜13.2%、年齢階級と有意でした(P=.004)。 また、居住地域別のゴメオ使用割合は3.8%〜14.4%であり、居住地域とも有意でした(P<.001)。北海道・東北地方、東京都および大阪府内在住者の使用割合は高い傾向にありました。 ラッシュやゴメオといった化学物質の使用割合が決して低くなかったことから、これらの物質が健康に与える被害についての情報を広く伝達していく必要があると考えられます。また、これらの物質はセックスの興奮を高めることを目的として使われることが多いですが、セックスの最中に使用することによってセイファーセックスについての冷静な判断能力を低下させる恐れもあり、HIV予防の観点からも化学物質についての情報提供および予防対策が必要であると考えられます。 これまでに性感染症の診断を受けたことがある人は6.9%〜37.8%、年齢階級と有意でした(P<.001)。また、居住地域別の性感染症の既往は14.1%〜33.2%であり、居住地域とも有意でした(P<.001)。年齢が上がるほど既往割合は高くなり、東京都および大阪府内在住者の既往割合は他の地域より高いことが示されました。また、性感染症の既往割合は梅毒が最も多く、次いで淋菌感染症、B型肝炎、クラミジア、HIV、尖圭コンジローマの順でした。本調査におけるHIVの陽性割合は2.8%であり、これまでに実施されているHIV抗体検査受検者(男性同性間性的接触)におけるHIV陽性割合は2〜4%という報告とほぼ同様の結果でした ラッシュやゴメオといった化学物質の使用や性感染症の既往などが、20代〜40代の比較的若年層や都市部を中心に広がっていることが示唆されています。 ----------------------------------------------------- 【9】セックスに投影される心理 -------------------------------------------------------- 「病気の予防も大切だけれど、予防以上に相手とナマでつながりあいと思うこと」は47.5%〜64.4%、年齢階級と有意でした(P=.003)。「セックスしてくれるなら、コンドームを使わないでもいいと思うこと」は28.2%〜46.7%、年齢階級と有意でした(P=.030)。同様に、「コンドームは相手との距離感を感じさせるものだと思うこと」は30.8%〜43.2%、年齢階級と有意でした(P=.047)。 これらの項目は、10代および40代以上が高い割合になっています。ゲイの交友関係の構築が始まったばかりの時期である10代の人たちは、日常生活において感じている寂しさや社会からの孤立感、阻害感をセックスの中で埋め合わせようとしているのかも知れません。また、HIV予防行動を取ること以上に、セックスの相手との心理的距離感を一気に縮めたい、親密でありたいという気持ちが優先されるなど、様々な思いを抱きながらセックスしていることを表しているように思われます。あるいは普段から知らず知らずのうちに、色々な思いをセックスに託しているのかもしれません。また、セックスに投影されるこういった感情を持つ人の割合が若い人ほど多いことと、若い人ほど精神的健康状態が全般的に悪化傾向であるという現状とも関連があると思われます。翻って40代以上でセックスに投影される感情がある人も、日常生活の寂しさやゲイとしての生きづらさ、あるいは性的な出会いの機会が減ることへの恐れや寂しさ、自分の性的な魅力が減退するのではないかといった不安などを抱いているかもしれません。そのような状況によって、セックスを通じて相手とより結びつきたいという思いが強まり、それが反映された結果として40代以上の人の中にも、上記のように思う人の割合が高いとも考えられます。 またその一方、「コンドームを使うと、気まずい感じになるのではないかと不安に思うこと」がある人の割合は、21.3〜31.1%であり、年齢階級と有意な関連はありませんでした。つまりどの年齢層においても2割〜3割の人のみが、コンドームを使うと気まずい感じになるのではないかと不安に思うだけで、大半の人はそういった不安は感じていないと言えます。「コンドームを使っても気まずい感じにならない人が多いですよ」というメッセージを広く流通させることで、コンドーム使用に対してポジティブな意味づけを積極的に行っていくことができるかもしれません。 ------------------------------------------------------------- 【10】精神的健康の実態(1)年齢階級と精神的健康 ----------------------------------------------------------------- 精神的健康の実態を把握するために、それぞれの心理尺度の平均値を年齢階級別に求め、比較する試みをしました。その結果、特性不安尺度、異性愛者的役割葛藤尺度、自尊心尺度、抑うつ尺度の年齢階級別の平均値は、若年者の方が年齢が上の人に比べると特性不安度合いは高く(P<.001)、異性愛者を装う時の心理的葛藤は強く(P=.046)、自尊心は低く(P<.001)、抑うつ度合いは高い(P<.001)ことが示されました。つまり精神的健康状態は若年層の方が悪化傾向にありますが、年齢が上がるにつれて少しずつ良くなっていることがわかりました。10代〜20代といった若年時はゲイ・アイデンティティの確立やカミングアウトに関わる問題や社会的に適応するために懸命になること、あるいはゲイ・バイセクシュアル男性としての社会的な役割モデルが目に見える形でなかなか存在しないことなど、複合的かつ様々な要因が折り重なって精神的健康の悪化につながっているものと考えられます。とりわけ特性不安の度合いは高く、どの年齢層の平均値も高不安群と考えられる基準値である44点を上回っていました。40代〜50代になってやっとこの基準値(カットオフポイント)の44点に近づきますが、全体の64.2%が高不安群であり、これはゲイ・バイセクシュアル男性の「先の見通しのつかない不安」の強さを現していると考えられます。 また、異性愛者を装うときの心理的葛藤も、10代〜30代は40代以上に比べると高い傾向であり、異性愛者としての伝統的な性別役割や結婚のプレッシャーなどが強い時期だと言えるのではないでしょうか。しかしそういった葛藤も年齢が上がるにつれて軽減されている傾向にあり、周囲からの役割期待やそれを意識した役割演技からも解放されつつあるのが40代以上と言えるかもしれません。 特性不安尺度、異性愛者的役割葛藤尺度、自尊心尺度、抑うつ尺度の平均値は年齢階級と有意な関連がありましたが、孤独感尺度は関連がありませんでした(P=.167)。つまり10代〜50代以上までを通じて、どの年齢層も比較的同程度に対人関係に起因する孤独感を感じていると言えるでしょう。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
--------------------------------------------------------------- 【10】精神的健康の実態(2)異性愛者的役割葛藤と精神的健康 ----------------------------------------------------------------- 異性愛者を装う時の心理的葛藤の強さを測定した異性愛者的役割葛藤尺度の得点分布を三分割し、役割葛藤低位群、中位群、高位群と三群化しました。その上で、特性不安尺度、自尊心尺度、孤独感尺度、抑うつ尺度との関連を分析しました。 異性愛者的役割葛藤の程度が強い人ほど特性不安、抑うつ、孤独感の度合いは強く、自尊心は低下している現状が示されました(P<.001)。 これらの結果は、異性愛者社会においてゲイ・バイセクシュアル男性が「異性愛者」として社会的に適応するために奮闘し、その結果異性愛者を装う時に心理的葛藤を強く感じ、その葛藤の程度と精神的健康状態に有意な関連があることを示していると言えます。異性愛者役割を奮闘する背景には、異性愛中心文化の中では異質な存在である自らの性的指向が周囲に知られてしまうと、社会生活を送れなくなるのではないか、親を傷つけるのではないかなど様々な苦悩があることが容易に推察されます。 こうした状況を鑑みると、ゲイ・バイセクシュアル男性がカミングアウトまでしなくとも、少なくとも積極的に異性愛者を装わなくてもすむような社会になっていくことが必要であると考えられる一方、そのような社会の変容はすぐには望めないという現実もあります。まずは異性愛者として過剰に適応する努力をしてストレスを蓄積することがないよう、ストレス・マネジメントに取り組むこと、あるいは自分自身の精神的健康状態について心理カウンセリングを利用して振り返り、回復を図る作業もゲイ・バイセクシュアル男性にとって必要な場合もあるでしょう。 異性愛者的役割葛藤尺度 01) 「結婚話」をすすめられたとき 02) 「孫の顔が早く見たい」と言われたとき 03) 彼女いないの?と聞かれ、適当に話を合わせているとき 04) テレビの「ホモネタ」を見て、周囲の反応に合わせているとき 05) 彼氏のことを彼女に置き換えて話しているとき 06) イけている男性を見て、「この人格好いい」と友達の前で言えないとき 07) ゲイの交友関係のことを気軽に話せないとき 08) 彼氏とおしゃれなレストランへ行き、周囲の目を気にするとき 09) ゲイ雑誌を堂々と買えないとき 10) 「男は強くたくましくあるもの」という考えを聞かされたとき 11) 低い声で「男らしく」話しているとき 12) 女の子に囲まれ、「両手に花だね」と言われたとき 13) 女性から好きだと言われ、嘘をついたり話をそらすとき 14) 興味がない女性のことを、興味があるような言い方を自分がしているとき 15) 女性が接待してくれるお店に「付き合い」で行くとき ----------------------------------------------------------- 【11】HIV感染予防行動と精神的健康の関連 ------------------------------------------------------------- HIV感染予防行動=コンドームを使うことと精神的健康状態の関連を分析しました。分析にあたって、過去6ヶ月間のセックスの相手(特定のみ、不特定のみ、特定・不特定の両方)とアナルセックスの種別(挿入のみ経験者、被挿入のみ経験者、挿入・被挿入両方経験者)をクロス集計しました。その上で、各セルごとにコンドーム使用群(必ず使った+使うことが多かった)と不使用群(5分5分の割合で使った+使わないことが多かった+使わなかった)に二群化した上で、コンドーム使用群と不使用群の心理尺度得点の平均値を比較しました。 過去6ヶ月間に被挿入のみ+特定の相手のみ群のコンドーム使用者は不使用者と比べると、異性愛者的役割葛藤尺度得点が有意に高く(P=.027)、同様に挿入・被挿入両方+特定の相手のみ群のコンドーム使用者も不使用者に比べて異性愛者的役割葛藤尺度得点は有意に高いことが示されました。これらのことから特定の相手のみで被挿入経験がある人のコンドーム使用者はコンドーム不使用者に比べると異性愛者を装うときの心理的葛藤(役割葛藤)を強く感じているということが示唆されたと言えます。 また、過去6ヶ月間に被挿入のみ+特定・不特定の相手両方群のコンドーム不使用者はコンドーム使用者に比べると自尊心尺度得点は有意に低いことがわかりました(P=.043)。 そして、HIV感染予防行動=コンドームを使うことと精神的健康の関連が最も顕著に示された群は、過去6ヶ月間に被挿入のみ+不特定の相手のみ群でした。過去6ヶ月間に被挿入のみ+不特定の相手のみ群のコンドーム不使用者はコンドーム使用者に比べると、異性愛者的役割葛藤尺度得点は高い傾向にあり(P=.063)、自尊心尺度得点は有意に低く(P=.004)、孤独感尺度得点は有意に高い(P=.029)ことが示されました。 これらのことからコンドーム使用を阻害する心理的要因として、異性愛者的役割葛藤、自尊心、孤独感があることが示唆されたと言えます。特に被挿入のみ+不特定の相手のみ群においては、孤独感の強さとそれを埋め合わせたいという思い、自尊心の低さとそれを補おうとする思い、異性愛社会におけるストレスを吐き出したい、あるいはそのようなストレスによって自暴自棄になってしまうなどといった心の動きと、アナルセックスにおいてコンドームが使われないことが関連していると考えられます。 ---------------------------------------------------------------- 【12】HIV感染予防行動とセックスに投影される心理 ------------------------------------------------------------------ 過去6ヶ月間にアナルセックスの経験があった人(1,346人)のコンドーム使用状況に応じて、コンドーム使用群(必ず使った+使うことが多かった)と不使用群(5分5分の割合で使った+使わないことが多かった+使わなかった)に二群化しました。その上で、セックスに投影される心理とコンドーム使用の関連について分析したところ、「病気の予防も大切だけれど、予防以上に相手とナマでつながりたいと思うこと」「コンドームを使うと気まずい感じになるのではないかと不安に思うこと」「セックスしてくれるなら、コンドームを使わないでもいいと思うこと」「好きな相手だから、コンドームを使いたくないと思うこと」「コンドームは相手との距離感を感じさせるものだと思うこと」といった全ての項目がコンドーム使用状況と有意な関連がありました (P<.001)。これらのことから、セックスに心理的なことを投影している人のコンドーム使用割合は、心理的なことを投影していない人のコンドーム使用割合と比較すると、有意にその割合が低いということがわかりました。コンドームを使用することよりもセックスの相手との関係性が優先される、またコンドームがセックスの相手との親密さを阻害することがあると感じられていると言えるでしょう。あるいはコンドームを使わないことで、相手とつながりたい自分の気持ちを積極的に行動で表そうとしているとも考えられます。コンドームを使わない背景にはこのような心理的な理由があるからこそ、選択的にコンドームを使わない現状があるものと考えられます。 ---------------------------------------------------------------- 【13】心理カウンセリングのニーズ ------------------------------------------------------------------ 心理カウンセリングを受けることに関心がある人の割合は全体の62.1%、年齢階級別では42.2%〜63.7%であり年齢階級と有意でした(P=.019)。居住地別の分析では51.3%〜67.6%とであり、地域差はありませんでした。また、心理カウンセリングを受けることに関心がある人の80%以上が、心理カウンセラーは自分の性的指向を知った方がいいと考えており、63%の人が自分の性的指向を心理カウンセラーに話そうと考えています。しかしその一方、心理カウンセリングを受けることに関心がある人(1,281人)の中で、「心理カウンセラーに会って話ができる医療機関の心当たりがある」人の割合は17.4%でした。 つまり、地域は問わず比較的若年層の半数以上の人が心理カウンセリングを受けることに関心があること、心理カウンセラーに性的指向を話そうと考えている人が比較的多いことが示された一方、実際に心理カウンセラーに出会える医療機関の情報まで持ち合わせている人はとても少ないということがわかりました。 これらのことから、ゲイ・バイセクシュアル男性が性的指向を明らかにして心理カウンセリングを受けることができる相談機関および医療機関などの情報データベースの構築の必要性と同時に、実際に相談があったときに十分に対応ができるよう、性的指向やそれに関連するテーマについて心理カウンセラー自身が学んでいく研修プログラムの充実なども、今後必要であると考えられます。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
■自由記述欄に寄せられた声をまとめるにあたって ------------------------------------------------------------------- 本調査研究の質問票の最後に設けられた自由記述欄には、全研究参加者の約32.1%に当たる661名が記述を行っていました。長文のメッセージも多く、原稿用紙数枚分に及ぶものもありました。この自由記述欄は、選択式の質問票に回答するだけでは表現しきれなかった思いを表出し、研究実施者に伝えたいという、研究参加者のニーズを受け止める役割を担ったことにもなると考えられます。 (中略) またその記述内容は、本調査に参加した感想や研究参加者が日頃考えていることなど、非常に多岐に渡っています。同じ質問票に回答しても、その感想や研究実施者に期待することは多種多様であり、HIV感染の予防行動、自らの性的指向、メンタルヘルス、ゲイコミュニティについてなど本調査で取り上げたテーマに関して、一括りにはできない様々な思いや意見を持っていることがわかりました。 (中略) 1.自由記述欄に書かれた全ての内容を、9つのカテゴリーに分類しました。9つのカテゴリーとは、「本調査の技術面に関する指摘や批判」「本調査の内容・テーマ・意図への疑問や批判」「本調査への期待・要望・感謝」「本調査による心理面・予防行動への介入的効果」「研究展開への期待」「日頃感じていること」「情報提供の希望」「その他」「分類不可能」です。 2.この9つのカテゴリーそれぞれに含まれる全ての記述の中から、例文を抽出する作業を行いました。その際、似通った複数の記述については、代表性がより高いと思われるものを例文として残すようにしました。 3.略 4.略 5.その上で私たち研究実施者が、これらの研究参加者の声をどのように受け止めたか、またそれに対する考察をコメントとして加えました。 なお、「その他」については特記すべき考察事項がないため、また「分類不可能」については記述の表現が曖昧で考察が不可能なため、例文・考察ともに記載していません。 -------------------------------------------------------------------- 【1】本調査の技術面に関する指摘や批判 -------------------------------------------------------------------- ・自分に該当する選択肢がなくても選ばなくてはならないことがあった。 ・選択肢が合わないところもあったので、もう少し細かい選択肢を作るか、全ての項目に 自由記述のスペースがあると答えやすいと思う。 ・ゲイに特有の言葉が非常にマニアックで、中にはわからない人もいるのでは? ・ネットで出会った人に自分の本名を伝えるかどうかは相手にもよるが、それを選ぶこと ができなかった。 ・カウンセリングを利用するかどうかは、カウンセラーを信頼できるかどうかにもよる が、その点を反映できるような選択肢の構成ではなかった。 ・「周囲」という表現があるが、「周囲」のゲイの友達か、それ以外の「周囲」の人間か では答が全く異なってくる。 ・過去6ヶ月のセックスの人数は覚えていないので、正確には答えきれなかった。 ・ハッテン場に行っても、セックスをするとは限らないので、ハッテン場に行く回数を答 えても、セックスの回数とは同じではない。 ・調査なので設問が多いのは仕方ないのはわかるが、それでも多すぎるのではないか。 ・質問項目によっては、回答が面倒だった。 ・場所によってはかなり地域が特定されてしまうので、郵便番号を入力するのは怖かっ た。 ・親と同居する者にとっては郵便番号は書きにくい。 ・郵便番号記入は大都市以外の地域に住む人にとってはプライバシーに関して配慮がない と思う。 ・質問内容と選択肢が一致しないのが多い。 技術的な問題に関してさまざまな指摘がありましたが、質問票の長さや選択肢の多さというような指摘よりも、むしろしっくりくる選択肢がない、もっと各人の状況にあわせた選択肢を作って欲しかったというような意見が多く見受けられました。これは、本調査において主に採用した選択式の質問項目だけでは、研究参加者が自分の思いや状況、行動を表現しきれなかった、あるいは彼らはもっと自分の思いを厳密に表現したい気持ちを強く持っており、質問票はできる限りその気持ちに沿って欲しかったということではないかと思います。 しっくりこなかった点に関する記述としては、「本名を伝えるかどうかは相手にもよること」「カウンセリングを利用するかどうかはカウンセラーを信頼できるかどうかによること」「周囲という言葉は、周囲のゲイの友達か、それ以外の周囲の人間かで答えが全く異なること」など、時と場合によっては回答が異なるということや、「過去6ヶ月のセックスの人数は覚えていない」「ハッテン場に行く回数を聞かれても、セックスの回数とは同じではない」 「カミングアウトの人数は数えきれない」など、もっとそれぞれの気持ちや行動を理解して欲しいということなどでした。その他には、「郵便番号の入力について親と同居の者や、大都市以外の地域に住む人に関しては配慮がないと思う」「プライバシーについて配慮が欲しい」など、守秘に関する不安を訴えるものもありました。 一見技術的な部分に対するコメントと思われるものからも、それぞれの研究参加者の思いを汲み取ることができます。郵便番号の入力によって、個人が特定されることを強く恐れる研究参加者が見られました。この恐れは、郵便番号のような限られた情報からでも、自分の性的指向について誰かに知られてしまうことの不安の表れだと推測できます。今回の調査で郵便番号を記入する欄を設けたことには、重複回答のスクリーニングや地域分布の明確化といった理由がありました。とはいえこのような守秘に関する不安については、調査研究だけでなく保健・医療・福祉機関や教育現場等で実際彼らからの相談を受ける際にも、特に配慮する必要があると言えるでしょう。 なお、質問文や選択肢の言葉遣いの不具合についての指摘もありましたが、これに関しては一部標準化された心理尺度を用いる必要があったという事情のため、方法論上止むを得ない面もあったと考えられます(使用した標準化された心理尺度については、2〜3ページの研究方法に詳細に記してあります)。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
------------------------------------------------------------- 【2】本調査の内容・テーマ・意図への疑問や批判 --------------------------------------------------------------- ・抑うつ傾向を問う項目が多くあったが、このような質問をされること自体、ゲイにラベ リングがされているように思えて腹立たしい。 ・ゲイにはカウンセリングが必要なくらい病的な人間であるかのように考えられているよ うな気がするが、ゲイの多くは全く正常な人間だと思う。 ・ゲイであることをオープンにしている自分のような人間が想定されていないような気が した。みんなが世間から隠れて生きているわけではない。 ・全体的に、ゲイが社会から疎外されていたり、自分を卑下していたり、悩んでいること が前提となっているように感じた。 ・若いゲイだけを対象に作られているように感じた。 ・ゲイやノンケだけでなく、それ以外にも色んな性のあり方があることを酌んだ質問項目 にしてほしい。 ・ノンケの人が作ったアンケートのように思われるが、ゲイの何を知ろうとしているのか わからなかった。 ・ゲイの人が自分の興味本位で作ったアンケートではないか。 ・セックスについての項目が多かったが、ゲイは別に男性にセックスばかりを求めている わけではないということが、アンケートを作った人には分かっていないような気が した。 ・セックスに色んなファンタジーを持っているのは、ゲイだけではないと思う。 ・アンケートに答えているうちに、「ゲイはHIVの感染源である」と言われているような 気がしてきた。 ・ゲイ=HIV感染のリスクが高いという認識自体が差別的である。 ・ヘテロセクシュアル社会からのストレスをオープンにしていくことで解消しようとして いるゲイの行動をとらえていない。 本調査の内容・テーマ・意図などについて、多くの批判や疑問が寄せられました。コメントの内容からは、腹立たしさや「とにかく一言言っておきたい」という思いが伝わって来ます。彼らの批判や疑問の内容を大きく分けると、1)決め付け、ラベリングされたように感じる、2)研究実施者が自分たちに対して公正な認識を持っているのか疑問、3)このような調査がなされる意図や意義が理解できない、ということのように思います。 1)については、ゲイ・バイセクシュアル男性は精神的に不安定で、セックスについて特別なファンタジーを持っている、あるいはHIV感染の可能性が高いなどの「ラベリングがされているのではないかと感じる」というような内容でした。2)については、一部のゲイのみを対象とした設問でしかないように感じられて、ゲイ・バイセクシュアル男性の全体像をきちんと理解していない人がアンケートを作成したのではないかという疑問や、色々な性のあり方があることを酌んだ質問項目にして欲しいなど、「もっと幅広い視野にたった質問票を作って欲しかった」という内容のものが寄せられていました。3)については、ゲイ・バイセクシュアル男性の何を知ろうとしているのかわからない、興味本位で作ったアンケートではないかというように、質問票の意図そのものへ疑問を持っているというものが多く寄せられました。 これらのコメントは、「懸命に生きている自分たちに刃を向けられた」というような憤りとして表現されており、安易な意図や興味本位で自分たちに質問をして欲しくないというメッセージが発信されているように思われました。言い換えれば、自らの性的指向を受け入れ、自分らしく生きるために積み重ねてきた努力が理解されなかったように感じた不快さの表明とも考えられます。 不用意にメンタルヘルスや性について話題にすることは、ともすると彼らが常日頃から異性愛社会の中で感じている窮屈さを彼らに再体験させることになりかねないということを、これらの記述を通して研究実施者である私たちも改めて考えさせられました。彼らの心理的苦悩や性文化のあり方を全体の傾向として理解しておくことも重要ですが、対人援助職として彼らに関わる上では、その程度には個人差があることや、これまでの人生上の努力に基づいた自負を持っていることも尊重していく姿勢が大切だと考えます。 --------------------------------------------------------------- ◆本調査への感謝・研究テーマへの賛同 ------------------------------------------------------------------ 非常に楽しくさせていただきました。 どきっとする内容の質問もあり面白かった。 久しぶりに自分のことを正直に語れた気がして、よかった。 初めてこうしたアンケートに答え、いい勉強になりました。 自分の回答が、何かの参考になれば幸いです。 少しでもお役に立てればと思い、参加させていただきました。 こうした調査はぜひとも必要と思う。どうか大切に取り組んで下さい。切なるお願いです。 応援しています。これからも頑張ってください。 今後もこうした調査には積極的に協力していきたいと思います。 もっとこういう機会が増えてほしい。 個人的にやっているページにリンクを張らせてもらってもいいでしょうか。少しでもみんなに考えてもらえるきっかけになればいいなと思います。 私に協力できることがあれば、メールをいただければと思います。 画期的だと思う。 かなり正確な実態が判明する調査だと思う。 HIVや性感染症が広がらないように、ゲイについてこのような研究がされるのは、非常に有意義だと思う。 HIVについては多くの研究者やグループが研究されているかと思いますが、ゲイとの関連をまじめに研究に取り組まれているのはまれだと思います。 自分はメンタルケア機関にアクセス可能だが、地方に住むゲイにはそのような機会はほとんどないと思うので、このような試みには大いに賛同する。 若い時からこうした研究や取り組みを切に望んできました。ようやくそうした時代がやってきたのだなと嬉しく思います。 色んな方々が同性愛者に対して理解を深めようとしてくれてとてもうれしいです。 僕たちはもっと理解してもらいたいと、切に願っています。 同性愛に対して学術的に調査していただけるのは、ありがたいことだと思います。 日本でも同性愛者について研究の目が向けられはじめていることがうれしいです。 一般の人からこのようなアンケートがされるのはとても大事だと思うし、嬉しかった。 よく調べてあるのがわかる。頑張って調べたのですね。 先の「本調査の内容・テーマ・意図への疑問や批判」でまとめたように、調査に「答えることそのものが苦痛」であったり「批判的に感じた」という記述があった一方で、研究参加者として質問票に回答する過程自体を楽しみ、自分自身やHIVその他の性感染症の感染予防について考えるという意味を見出したという記述が少なからずありました。そして多くの研究参加者が、このような研究が1回きりの調査で終わるのではなく継続的に行われることや、自分たちの性的健康やメンタルヘルスが向上するための具体的な働きかけが積極的になされることを望んでいます。そしてその実現のためなら、ただ受身的に介入を求めるのではなく、自らも協力を惜しまない気持ちを持っていることが窺われました。 また、性行動やメンタルヘルスについてなどのテーマ設定に対する関心の高さや、このようなテーマ設定のもとに介入の対象とされることを求めていることが推測されました。学術機関に所属する調査実施者が本調査を行ったことによって、「興味本位ではなく学術的な関心のもとに、自分たちに対する理解を深めようとしている」ということが伝わった結果、研究に対する肯定的な反応も生じたようです。異性愛社会の中で、無理解による居心地の悪さや憤りを感じている研究参加者にとっては、今回の調査は非常に新鮮なアプローチとして受け止められたと考えられます。 ゲイ・バイセクシュアル男性を対象とした調査研究を行う上では、ニュートラルに、ありのままに彼らを理解しようと歩み寄る研究者の姿勢が求められると考えられます。そしてこの姿勢は研究者のみならず、保健・医療・福祉・教育の各現場において、彼らと接する機会のある対人援助職にも共通する姿勢であると言えるでしょう。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
------------------------------------------------------------- ◆本調査への期待・要望 ---------------------------------------------------------- アンケート結果などを公表していただきたいと思います。 調査結果、解析結果に興味があります。 データの解析結果等は今後何らかの形で私たちの目に触れることはあるのでしょうか。どのような形で活かされるのか、具体的に知りたい。 このようなアンケートがされても、大多数の場合回答した自分たちにフィードバックされることがない。 ネット上で結果を見ることができるリンクや、次回のアンケート予告などにも是非力を入れてほしいと思います。 ゲイの社会的地位の向上に、研究が役立ちますように期待しております。 いろいろな考え方・多様性を差別や誤解のないように社会が受け入れられるように、ゲイについての研究を進めてほしいです。 社会から同性愛者について何らかの理解が広がれば、という思いで参加しました。 同性愛者の人が胸張って生きてゆける社会の実現を希望しています。 研究報告書だけでこのアンケートを終わらすのではなく、同性愛者をサポートできる、形のある結果を生み出すことを心よりお願い申し上げます。 同性愛者が守られる社会作りの役に立つといいです。 ゲイの人がストレートの人と全く同じように暮らせる日々が来ることを願い参加しました。 アンケートを役立てて、セクシュアルマイノリティの力になってください。 私たちのゲイライフによい影響を与えてくれることを祈っています。 研究の成果が出て、はやく助けてください。体も心もボロボロです。いつ死んでもおかしくないです。 日本でセクシュアリティに関する論議や、論文や学会発表が盛んになり、ゲイ研究自体が偏見無く認められるよう、頑張ってほしい。 このアンケートを通して、私たちの生活が劇的に良い方向に変わるとは思わないが、何もしないよりはいいと思って参加しました。 このような研究の結果が調査された方の意図とは逆に、マイノリティ差別に使われないことを希望する。 性的指向に関係なく、もっと多くのメンタルケアを気軽に行ってくれるような場が増えるようにしてほしい。それにつながるような研究発表と提言を。 この調査が、人が人を愛する礎になれば嬉しい。 僕のようにゲイとして生きることに否定的である人もいます。お願いなのですが、ぜひ僕のような声にも耳を傾けて研究を続けてください。 このようなアンケートに出会うことで、悩んでいる多くのゲイの人たちを支えることになると思います。 予防も大切だと思うので協力はしたいと思っていますが、感染した者のケアも忘れず考えつづけていっていただきたいと思います。 偏見なく予防や治療ができる日本であってほしいと思い、アンケートに参加した。 非常に多くの研究参加者が、本調査の集計結果を知りたいという記述をしていました。自分以外のゲイやバイセクシュアル男性がどんなことを考えているのかを知りたいという気持ちを強く持っているのでしょう。また、過去にもこのような調査に協力したものの、その結果のフィードバックがされず自分たちの利益につながらなかったという体験をして、搾取されたような思いを残している人もいました。このような調査をもとにしてHIV予防などの介入を意図する側と、介入されるゲイ・バイセクシュアル男性との間に、信頼感をもとにした協力関係を築いていくためには、研究実施者が調査結果をどのように受け止め、それをどのような形で対象の利益還元に生かそうとしているかを、個々の研究参加者やゲイコミュニティ対して明示していくことが重要だと言えるでしょう。 このコミュニティへの還元に関する要望の中で非常に大きかったのが、自分たちが置かれている状況が改善されることでした。多くの研究参加者がこの調査結果をもとに、一般社会における性的指向の多様性への理解を促進してほしいと望んでおり、研究実施者には彼らの思いの代弁者としての役割の期待が寄せられています。中には「はやく助けてください」という切羽詰まったSOSの声もありました。異性愛社会に対して「生きにくい世の中だ」「差別・偏見の対象にされている」「存在が認知されていない」という思いを抱きながら、毎日の生活を窮屈に送っている彼らの様子が伝わってきます。1人でも理解者が増えること、またいつの日か社会全体が性の多様性に開かれたものへと変わることを、彼らは切実に願っていると言えるでしょう。そして性的指向に関わらず、社会全体のメンタルヘルスが向上することや、先入観を持たずに他者に対しての温かい関心が高まるような社会作りという、より大きな希望の実現を望む声も寄せられました。 一方、自らの性的指向に強い葛藤を感じている研究参加者からは、その葛藤を酌んだ研究の継続・実行を望む声が寄せられました。近年、特にコミュニティベースの予防介入においては、性的指向や同性同士のセックスを非常に肯定的に捉えたメッセージと絡めて、感染予防を呼びかける活動が盛んです。しかし、自らの性的指向に対する葛藤が強いゲイやバイセクシュアル男性には、このような予防のメッセージは違和感をもって受け取られる可能性があります。性的指向に対する肯定度の個人差をも視野に入れた多層的な予防介入が求められていると言えましょう。 また、実際に感染した人のケアも充実させてほしいという声が届けられました。これは、HIVの感染予防が強調されることが、「HIV陽性者の撲滅」というメッセージになってしまわないかという懸念の表れかも知れません。ゲイコミュニティでの予防介入や教育現場でのエイズ教育を行う際にも、HIV感染予防を強調することによって感染者への社会的スティグマを強めるようなことにならないよう配慮しながら、予防行動の重要性を伝えることが求められていると考えられます。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
3】本調査による心理面・予防行動への介入効果 -------------------------------------------------------------------------------- 自分の普段の生活が性病に対していかに非予防的かを感じた。 何となく「HIVなんて自分には無関係」と思っていたが、このアンケートで、「HIVには気をつけよう」と思った。 アンケートに答えながら、アナルセックスではコンドームをつける意識があるが、オーラルセックスに関してはコンドームをつける気が全くないことに気がついた。 セーファーセックスを心がけないと、いつ感染してもおかしくないんだなと感じた。 アンケートに答えてB型肝炎も性感染症だと知った。抗原陽性ならば相手への感染があるのか?気になってきたので調べてみます。 HIVの検査を受けたほうがいいかもしれないと思った。 アンケートに答えてみて一番感じたのは、性感染症の知識が自分の中に全然なかったことです。今後、自分やこれから出会う人のためにしっかりした知識を得ていこうと思います。 自分の不勉強さと業の深さを再認識したアンケートでした。 自分のしていることについて見直せる良い機会だと思いました。 自分がやっていることを客観的につきつけられるような気がした。 自分を振り返るよい機会になった。 改めて自分のことが少しわかった気がした。 アンケートに答えてみて、僕自身を客観的に見ることができたような気がする。 回答しているうちに、気づいていなかった自分が見えたような気がした。 言葉にすると、自分の知らない自分が見えてきたり見えなかったりで・・・面白かった。 普段ゲイに関するアンケートに答える機会がないので、自分の内面を振り返るいい時間となった。 ゲイという性のあり方について振り返った。 改めてゲイとして生きることの問題を意識させられた。 世の中にはゲイだということでネガティブになったり死にたいと思う人もいるのかと改めて気づき、自分の恵まれた環境に感謝した。 このアンケートに参加できて、何かの役にたてられたことで充実感を感じる。 匿名でも自分の思いを表出し、研究材料とは言え耳を傾けてくれる人がいると思うのはとても気持ちのいいことでした。 こうしてアンケートで振り返ると、生きにくい世の中で、ああ、自分って結構頑張っているのかも、と思った。 調査そのものに予防的な介入効果あるいは内省を自然に促すような効果があった人も多くみられました。大きく分けると、1)性生活に関する振り返り、2)ゲイ・バイセクシュアル男性としての生き方に関する振り返り、3)実際に研究に参加した意味の実感ということになるかと思います。 まず1)の性生活については、「自分の日頃のセックスを反省した」「いつ感染してもおかしくないのだと思った」と自分自身のこれまでを振り返ることで認知の変化が起き、「これからはしっかり知識を得ておきたい」「検査を受けておいた方がよいかもしれない」と、今後の予防について考え始め、「気になってきたので調べてみます」というような、行動をスタートするという変化が起きる段階まで、各人なりの段階に応じて一歩を進めることができたということだと思います。本調査は今後のHIV予防介入のプランを立てるための基礎情報の収集や実態把握という目的で行われたものでしたが、そのような研究実施者の意図以上に、一部の参加者にとっては研究に参加すること自体に予防介入的な意味合いがあったことを示唆していると考えられます。これは、ひいては援助職が彼らの性行動について共に振り返る機会や場を提供することが、本人の予防に対する認知、動機づけ、更には行動の変化までを促進しうるという、予防介入の可能性が示されたとも言えるのではないでしょうか。 2)のゲイ・バイセクシュアル男性としての生き方については、「気づかなかった自分が見えたような気がした」「あらためてゲイとして生きることの問題を意識させられた」というように、自分自身を振り返ったという意見や、「自分の環境に感謝した」というように、自分自身だけでなく周囲・環境をあらためて振り返り見直したという意見がありました。これらの意見からは、対人援助職がゲイ・バイセクシュアル男性の性行動だけを切り取って介入を考えるのではなく、そのライフスタイル全体に対しての関心を持ちつつ関わる必要性があることが示唆されていると思います。 そして3)としては、実際に研究に参加して「何かの役に立てたことで充実感を感じる」というように、研究実施者や自分の仲間の役に立ったという充実感を感じたというものや、調査を終えてゲイとしての自己の存在を尊重されたように感じたものなどもありました。 これらの意見から、本調査には一部の研究参加者にとっては自己肯定感を高める介入効果もあったと言えるのではないかと思います。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
【4】研究展開への期待 ---------------------------------------------------------------- 人がゲイになるには、特有の生育歴などがあるように思う。そういうことも聞いてみると面白いのでは? 性的指向は遺伝子に由来するものと考えているので、この点の解明に向け研究してほしい。 異性愛者の人の同性愛者に対する正直な意見を聞いてみたいので、そういうアンケートを実施してほしいです。 一般の人にゲイ・バイセクシュアルをもっと理解してもらえるためのアンケートを実施して欲しい。 今回取り上げたテーマ以上に、さらに研究を展開させることへの期待がいくつか寄せられました。今回の研究実施者の所属が医学研究科であったことも関連してか、どうしてゲイになるのか、その要因について調べてほしいという要望があります。自らにとってはごく自然な性のあり方であっても、その成り立ちに対して「先天性なのか後天性なのか」といった疑問を抱き、マイノリティとして生きなくてはならないことの理由付けを求めたくなる心情が表れているようです。 また、異性愛者のゲイ・バイセクシュアル男性への意識や理解度を測る調査実施の要望も寄せられました。これは、彼らが日常的に異性愛者から向けられる視線や言葉に対して敏感にならざるを得ず、しかし、異性愛者にどう思われているかが気がかりであっても自分では確かめたり調べたりできないジレンマの中にあるが故の要望と思われます。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
【5】日頃感じていること ------------------------------------------------------------------ ◆ゲイ・バイセクシュアル男性であること ------------------------------------------------------------------- 周りにカムアウトはしていないけれど、自分がゲイであることを恥じていないし、自分には肯定的です。 同じゲイの友達もいるし、彼氏もいて、毎日に十分満足している。 一般の人たちよりも物事を広い視点で捉えることができるようになったし、差別される立場の人の気持ちも理解しやすいと思うので、ゲイに生まれてよかった。 自分はゲイだのなんだの、と気にして生きてはいない。 社会のしがらみから離れて、自由に生きられるライフスタイルや環境を作ってからは、ストレスから自分を守ることができるようになった。 本当は女性を愛したいし、ゲイであることに後ろめたさを感じる。 世の中ではゲイであることを肯定しようとする運動が盛んだが、自分は違う。男性に性欲を感じるが愛したいのは女性。つまりゲイではなくなりたい。ゲイとして生きることを否定する生き方もあっていいはずだ。 ゲイとして生きることを認める動きが盛んだけれど、自分にとってはそれが逆に負担。なぜ声高に自分のセクシュアリティをカムアウトしなければならいのか、理解できない。 少子化が進んでいる世の中で、子孫を残さないゲイへの視線が冷たくなっているように感じられて、辛い。 以前自分がゲイかバイかもしれないと認識したときはショックで悩み抜いた。社会人になってゲイコミュニティに触れ、決して極端なマイノリティでないと知り、これもありなのかな、と思うようになった。 取り立てて幸せでもないけれど、ゲイだからといって不幸せな人生だとも思っていない。 自分がゲイであることを受け入れられたし、周りも受け入れてくれたので今は特に悩んでいないけれど、将来のことを思うと不安になる。 ゲイであることの苦しさは自分で分かっているのに、生まれ変わってもまたゲイになりたいという気持ちもある。 一番心配なのは同性愛的なものが遺伝するかどうかだ。遺伝しないのであれば、努力して家庭を築いていこうと思うものも多いように思う。 ゲイがたくさんいる海外に生活しているので、今はとても自由で幸せだが、日本に帰った時のことを思うと気が重い。 自分は後天的な要素でゲイになったと思う。しかし誘われて引き込まれてしまうと簡単には戻れなかった。 私自身自分から好んで同性を愛したい、欲したいという人間になったわけでなく、先天的なものだと思っている。 どうしてゲイになるのか・・・このメカニズムは多様だろうが科学的に何かが分かれば嬉しい。 もし自分の性的指向がわかる身体的実験があったら参加してみたい。 自分の中の同性愛性を自覚する研究参加者の中でも、その性的指向をどのように受け止めているかについては様々な記述がありました。肯定的に受け止めている人もあれば、罪悪感や違和感を持つ人もいます。苦悩していた過去を経てようやく今は肯定的に考えられるようになったという人がいる一方で、現在の肯定感は良い環境や人間関係に支えられており、それが変わればたちまち損なわれてしまうかもしれない流動的で不確かなもののように感じている人もいます。さらに、自分が愛情や性の対象を同性に求めることの原因を、先天的あるいは後天的なものと思う人、そのどちらとも判らず、答えを求めている人もいます。遺伝するものかどうかを知りたいという記述には、性的指向に関して自分が味わった苦しみを子どもには負わせたくないという気持ちが表れていました。 異性愛が普通で正常とされ、それ以外は異端視されたり病的なもののように扱われかねない社会の中にいることで、ゲイ・バイセクシュアル男性は程度の差はあれ、自分の性的指向について自分の中での収まりどころを見つけるのに時間とエネルギーを要しているものと考えられます。異性愛者の多くが、成長過程で自分の性的指向をことさら「受け入れる」というプロセスを要しない、あるいは理由を問う必要のない自明のこととして、努力や葛藤なしに受け入れられるのとは大きな違いがあります。 同性愛や両性愛を否定するようなメッセージを不快に思うのはもちろんですが、一面的に「悩むことではない、肯定すべきだ」とするメッセージにも、自分の気持ちとのずれを感じる人もいます。教育現場や保健・医療・福祉領域での相談場面でも、性的指向に関連する悩みがテーマとなった時には「個々の感じ方の差異があること」や「受け入れるプロセスも人それぞれのペースがあること」を前提に、相手を個別の存在として理解しようとする姿勢がまず必要でしょう。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
◆差別や偏見のある社会に対して願うこと ------------------------------------------------------------------- ゲイに対する偏見のない、自分たちにとって住みやすい社会になって欲しい。 「ホモ」とか「オカマ」という呼び方には、偏見がこもっている。 自分たちはただ同性が好きなだけで、何も悪いことはしていないのに、バッシングや中傷をされるのはおかしいと思う。 同性愛が、異性愛者には理解できない愛の形だと思われるのは分かるが、同性愛が「おかしい・異常だ・人間のくずだ」と差別される社会にはなって欲しくない。 ゲイは性的な指向が異なるだけであとは普通の男性です。抵抗無く接してくれることを望みます。 同性愛者も異性愛者も、1人の人間としての価値は同じはずだ。 ゲイを「汚いもの」とか「異常なもの」というふうに捉える異性愛の社会に不満を感じる。 世の中には多様な性のあり方があることを、もっと理解してもらいたい。また、同じゲイでも色んな趣味趣向の人がいることを分かってほしい。 世の中の人全てに、「同性愛を認めてくれ」と理解を強要する気はないけれど、せめて同性愛者であることを苦に自殺するようなことが起こらない社会になることを願っている。 理解してもらいたいとまでは思わないが、せめて無視でもいいから、黙ってみていてほしい。 自分たちのことを理解してくれる人が世の中に増えてほしいと願っている。 恋人と街を歩くときに、周りの目を気にせずに手をつなげるような社会になってほしい。 周囲の女性は「ホモってかっこいい」などと言うが、私が「同性愛者だ」とカミングアウトすることによって、関係が崩れるのではないか、見る目が変わるのではないかとものすごく不安になる。 社会的に普通に「存在している」事がわからない人が、いまだ多いと感じる。 ゲイや同性愛について、もっと日常で正しい知識を一般の人に知ってもらえる場ができれば、今より少しは暮らしやすくなるのではないか。 ゲイ・バイセクシュアル男性について、社会的な理解を求める記述は数多く見られました。揶揄や蔑視、時には異常者扱いするような言葉を見聞きすることは傷つきの体験になり、逆に過度に理想化されたイメージで語られることにも、自分とのズレを感じて不安になることがあるようです。もっと理解してほしい、という声の一方で、理解までは望まないからせめて自分たちの存在を否定せずに黙ってみていてほしい、という声もあります。差別や偏見によってこれ以上否定されて傷つきたくない、当たり前の生活をしている普通の人間として、身近に存在していることをそのまま認めてもらえるような社会であってほしい、という切実な願いが伝わって来ます。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
◆ゲイコミュニティ -------------------------------------------------------------------- 同じゲイの人と出会えたことで、1人だけじゃないんだと思えて、自分を認められるようになった。 スポーツや文科系のサークルがたくさんあるので、コミュニティの中で充実した生活を送ることができる。 東京に出てきたら、ゲイコミュニティに出会ったし、思いのほかゲイの人はたくさんいるんだなと思った。 セックスの相手だけを求めている人が多いような気がして、うんざりすることがある。 昔はよくバーにも顔を出していたが、人間関係の複雑さや他人の噂話に嫌気がさして、行かなくなった。 ゲイの中には、生育歴が複雑で、今も精神的に不安定な人が多いように思う。 社会性に欠けるなど、ゲイの世界には様々な問題を抱えている人がいると感じます。 ゲイのコミュニティだけでなく、バイセクシュアルのコミュニティも確立してほしい。 ゲイコミュニティではバイセクシュアルは嫌われる存在なので、たまにゲイコミュニティの中でも自分の居場所がないなと感じることがある。 コミュニティで出会う人の中には、お金やセックスにルーズな人が少なくないように思う。 ゲイコミュニティには、閉鎖的で排他的なところがあると思う。 カウンセリングよりも、ゲイ同士が出会える出会いの場がほしい。発展場やバーでなく、普通に出会える場がほしい。 ゲイの世界にはセックスをする人数はヘテロより多いのが普通という考えがあり、それを新しく入ってくる若い子に押しつける。だから心理的にできていない子は、性に対する考えが甘くなって行くと思う。 この世界はまずセックスから入るのでなかなか難しい。 ゲイはもっと世間で受け入れられるべきだとは思うが、ゲイ同士での差別などもあり、みんな仲良しこんにちは、とはなかなかいかない。 ゲイの世界の人間関係に疲れることも多い。もっと信頼しあえて精神的な充足感が得られるような人間関係を築きたいといつも思う。 ゲイを認めない今の社会を嫌だと感じるならば、自分たちゲイもそれを変えられるように行動を起こしていくべきだと思う。 今の日本はまだ同性愛に対する差別が強いというが、実際は同性愛者の方が世間を拒んでわかってもらおうとしていないだけのように感じることもある。 ゲイが社会的に認められていないことには、自分たちの責任もあると思う。セックスが前提の出会いなど、誤解を招くようなことは自分たちで払拭していくべき。 インターネットを通じて、若いゲイがかなり自由気ままに何の警戒心もなく交際しているようなので、別の意味でゲイが非難されるのではないか。もっと節度を持って行動してほしい。 ゲイコミュニティに参加して、同じ性的指向の人に出会ったり、性的指向を隠さずにいられる仲間とサークルを作ったりすることで、孤立感から解放され自分の存在を肯定できるようになった、という記述がありました。ゲイコミュニティがあること、また実際にそこに参加することで、救われ、支えられているゲイ・バイセクシュアル男性は少なくないと思われます。 その反面、ゲイコミュニティの中で体験することへの違和感や懸念の記述も見られました。例えばコミュニティ内部にもある差別や排他性、性行動を煽るような集団規範、セックス優位で長続きしない人間関係の繰り返し、無責任な人間関係の在り方などです。そうしたことによって精神的な充足感や安心が得られない疲労感を持つ人もいます。ゲイコミュニティの外でも中でも、安心できる人間関係が得られない、居場所がないと感じることは、とても寂しく不安なことではないかと思います。「ゲイ同士が普通に出会える場がほしい」という意見には、もっと違う出会い方、関係の作り方を求める気持ちが窺えます。 一方、社会的な理解や存在認知を求めるならば、自分たちから外に働きかけ歩み寄る、あるいは内部にある問題点を自分たちでよりよく変えていこうとする姿勢も必要なのではないか、との意見もありました。ゲイ・バイセクシュアル男性へのHIV予防介入や支援を考える上で、このような自己変革への意欲や動機づけも、コミュニティに内在する力として十分に尊重すべきものと思われました <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
◆ゲイ・バイセクシュアル男性として生きること ------------------------------------------------------------------------ 同性愛者であることを隠さなければならない状況の中で、自分なんていなくてもいいと思うことはよくある。こんな自分はこれからどうやって生きていくのか不安だ。 自分の存在意義が見出せない状況が無気力な生活を生み出すことに関連性を考えられるのではないか。 今の日本は海外に比べて同性愛についてあまりにも無関心というか否定的な考えが多くて、自分がまるで犯罪者のような気さえ持ってしまう日々です。 もっと同性愛への理解者が増えて、仕事場でも胸を張って自分の意志表現・存在証明ができるようになるといいなぁと思う。 好きな人に好きだと胸を張って言い、その人とデートをし、皆に祝福されたい。本当にそれだけでいい。でも、それがなかったら人は何のために生きているのか。 同性愛者として異性愛社会に生きなければならないことは、毎日自分自身がダメな、欠落した人間なのだ、と思わされて暮らすことに他ならない。そのストレスの苦しさは想像を遙かに超えたものです。 日本はゲイの人が仮面をかぶって生活しなければならない。自己否定を続けていると、生きることができなくなりそうです。 同性愛者としての自分と異性愛者としてふるまう自分とにものすごく隔たりを感じるとともに、そのことがストレスになっている。 自分がゲイであることを隠すのは正直言って辛い。嘘をついて生きていくことになるから。 ゲイ・バイセクシュアル男性が社会的に否定されていると感じることで、自分の存在意義に対して懐疑的になり、生きる意欲や希望すら持ちにくくなっている研究参加者もいました。性的指向は「自分とは何か」というアイデンティティを構成する重要な要素です。それをひた隠しにして社会生活を送っていることで、自分を偽っている、あるいは二重の自己を生きているような感覚がもたらされ、辛さや罪悪感、ストレスとして感じられていることが窺えます。ここには、自分が直接的に差別や偏見の対象となるような出来事に出会わなくても、自己否定感を抱え続けたり、ありのままに生きられない日常が続くことが、「生きることができなくなりそう」なほどの重大なストレスになり得ることが示唆されています。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
◆若い世代への懸念 -------------------------------------------------------------------------- ゲイの世界は20代〜30代前半の若者が主流と思うが性感染症についての啓蒙が追い付いていない。病気やメンタルのことも経験のある中年層の存在が必要と思うが、若者だけの世界が固まることで年齢層の壁ができてしまうため、難しいだろう。 一人で悩んでいる若い同性愛者も多いはず。昔の自分がそうだったから。 特に若い人にとって住みよい社会にしていきたい。私が感じ取ってきた思いと同じ精神的な苦痛からの解放を保証してあげたい。 出会い系サイトで中高生の投稿を見かけると複雑な心境だ。自分が悩んでいた分、彼らが羨ましい一方で、決してキレイではないこの世界に早くから染まってしまうのは彼らのためになるのか・・・。 孤独感を募らせている若年の同性愛者が将来への不安感や孤独感から自暴自棄な行動に走る場合も少なくない。例えば、体を売る、ホモビデオに出演するというのは個人の自由だが、それを若い時に自暴自棄でしてしまうことはおそらくリスクが高すぎるし、これからの若い同性愛者たちのためにも何らかの政治的な手段を講じて防ぐ努力をすべきである。 より上の年代の研究参加者から、若い世代の心身の健康を真剣に心配し、何か力になりたいという気持ちが示されています。自らが経てきた苦悩を若い世代には味合わせたくないと願い、あるいは自分たちの頃にはなかったリスクに現在の若い世代がさらされていることを懸念しつつも、具体的にはどうしたらいいかわからないと思っているようです。また無防備なままコミュニティに飛び込むことで、その影や闇の部分を知ってしまい、若い世代の心がすさんでしまわないかという心配もあるようです。 これまでHIVや他の性感染症の予防介入では、数々のコミュニティベースの試みが実践されています。性的指向を同じくする者同士で、ニーズに則した具体的な情報提供や助言を提供できる点や、行動面でのモデルを示せる点がメリットと考えられるからでしょう。しかし具体的な知識や情報ばかりでなく、上記に見られるような、コミュニティに潜在している連帯感や愛他的な精神そのものが何らかの形で表現され、伝わる機会や場を作り出すことが、予防介入をより有効にする基盤作りとして重要と考えられます。上の世代から性的な対象として関心を持たれるばかりでなく、人間として心配されたり大事にされたりしていると感じることができれば、若い世代が自尊心やコミュニティへの信頼感を育んでいく一助となるのではないでしょうか。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
◆インターネット --------------------------------------------------------- インターネットが発達したことで、より一層ゲイコミュニティの大きさを感じられるようになったし、色んな人と知り合えるようになったのは楽しいし、役に立っていると思う。 インターネットによって同じゲイの人と話したり、会ってつきあったりできるようになり、日常的にも精神的にも楽になった。 田舎に住んでいると、なおさら恋愛の相手やゲイの友達との出会いの機会が少なくなってしまうので、インターネットの存在はとても大きい。 共通の価値観の友人やゲイの友人が見つかりにくい環境に住んでいるので、ネットを通じて「隠れゲイ」の人たちがもっと積極的に行動できるチャンスが増えたらいい。 HIVの問題は深刻だと思う。インターネットが普及し、不特定の相手に出会いやすくなったのが大きく影響している。 インターネットは個人が自分に必要な情報を自分の判断で取り出して活用できる反面、判断力の十分でない個人にも同時に配信されているのは恐ろしい。 ネットだけに出会いを求める人は、直接人と会って知り合うことを考えずに、セックスだけの相手を求めている人が多いようだ。 インターネットは、ゲイ・バイセクシュアル男性が仲間と出会い、活動や交流の場を獲得して社会的孤立から解放されることを可能にしました。しかしその一方で、インターネットの普及が、性的な出会いを容易にし、性衝動を駆り立て、性的な刺激や快感への没入傾向を強めている可能性も自由記述の中で指摘されています。これはゲイ・バイセクシュアル男性に限らず、社会全般に認められる傾向ではありますが、日常生活において出会いの手段や機会が限られているゲイ・バイセクシュアル男性にとっては、出会いのきっかけをインターネットに頼る人の割合はより大きいかもしれません。彼らはインターネットの恩恵を受けると同時に、多種多様なリスクにもさらされていると言えるでしょう。 インターネットは、その利便性(距離を問わずに人とのつながりが生まれること、匿名性が保たれやすいこと、情報が得やすいことなど)をうまく活用することで、コミュニティへの帰属意識の低い人やコミュニティを避けている人、あるいはコミュニティベースのメッセージが届きにくい地方在住の人などに対する予防介入の重要なツールになる可能性を秘めています。また、今回の調査から、必ずしも同じ性的指向ではないかもしれない研究実施者と研究参加者との間にも、インターネットを通じてコミュニケーションできる関係や協力体制を生み出すことができるのではないか、と思われました。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
◆教育に願うこと --------------------------------------------------------------------- 小、中、高校の性教育で同性愛についてきちんと扱うべきだと思う。それが孤独感を感じている若いゲイの救いになるかもしれない。 男の子と女の子が恋愛をするのが当たり前、という教育のあり方では、いつまでたっても一般の人からはゲイは宇宙人のような存在のままだと思う。 学校に通う時期と思春期とは重なる部分が多い。自分が性的指向を自覚した時に周囲はヘテロの人間で溢れており、その環境で生み出された疎外感に今でも苛まれている。 人生初期の学校教育から性の多様性を教えることで、マイノリティにとっては社会の抑圧を軽減することになり、より良い人生を進む糸口として機能するだろう。 同性に惹かれる存在もあること、そういう指向の人でも人間的価値は同じであることを初中等教育を通じて広めてほしい。 教育の場で、同性愛者と異性愛者の学生が自由に交流できるようになってほしいと思う。 同性愛に悩みかつて学校で匿名の相談をしたが苦い体験となった。現在の学校の性教育で同性愛についてカリキュラムに入っていることを願う。 ここには、同性愛や両性愛に対する社会的な理解の促進を学校教育の早い段階から組み入れてほしいという願いと、それだけでなく同性に向かう欲求や関心を自覚し始めた児童や生徒自身のためにも、学校で性の多様性を認める教育があることの大切さが述べられています。学校という社会の中で、自分が持っているかもしれない性的指向を否定や揶揄、嫌悪を受けるものとして認識し始めるのと、多様な在り方のうちのひとつであり人間としての価値差を意味しないこととして認識し始めるのとでは、その後の人生の方向性が大きく異なって来るものと考えられます。同性愛や両性愛への否定的なメッセージを強く受けるほど、疎外感や不安を感じ、しかもそう感じていることすらも隠さなければいけない(つまり感じていない振りをする)という二重のストレスに同時にさらされることになるでしょう。 性にまつわる教育カリキュラムの見直しや改善も求められますが、それ以前に、教育現場にいる大人が、性的指向について周囲との違いに疎外感を持ったり、自分自身でも違和感を持つなどして密かに悩む生徒や児童が今現在身近にもいるのかもしれない、という想像力を持つ必要があるでしょう。そして自分たちの日頃の何気ない言動の中に、異性愛以外の性的指向を否定するようなメッセージが含まれていないか、またそのことがどれほどの影響を与えうるのかについて振り返ってみることが望まれます。養護教諭や性教育担当者はもちろん、性教育に直接携わることのない教師であっても、性的指向に関する悩みや葛藤を相談できる窓口となる人が身近にいることも、とても重要なことと思われます。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
◆将来への不安と法的整備への願い ------------------------------------------------------- 自分の生きやすい環境を努力して作ってきたが、老後についてはかなり不安。特に病院に入院した時のことを考えると寒気がする。 将来老いていって一人で暮らすのは寂しいことだと思う。 同性を愛することに長い間苦しんで来て、ようやくある男性と出会ったが、自分がこれからどうなるのか?どうすればよいのか?いまだ将来が不安。 将来を真剣に考えるのはストレスです。一人で野垂れ死ぬ自分の姿が目に浮かびますから。 同性同士でも結婚できるようにして欲しいし、それが変に思われずに周囲から認められるような社会になってほしい。 お付き合いしても同性だと「どうせずっと一緒にいれるわけじゃない」と遊ぶ人が多い。だから同性婚を認める国を羨ましく思う。 良いパートナーがいるが、老後、自分が死ぬ時の財産分与や面会権を考えると、同性婚・DP法*だけは確立してほしい。 社会制度(保険や年金、婚姻など)上でゲイであることにより不利益を被らないで普通に生活したいというゲイの潜在人口は多いと思う。 同性愛者が何年つきあっても制度的に何も守られていない。即ち、国から何も期待されていないということ。社会から期待されていない私達は何を活力源として生きて行けば良いのか? * DP法:ドメスティック・パートナー法。一定期間同居する同性愛のカップルに年金や財産相続の権利を認める法律。 男性同士のパートナーシップが法的に守られていないことに関連して、将来の孤独への不安を感じている研究参加者がいました。異性愛者の結婚においては、法的な守りや縛り、周囲からの期待や社会規範、あるいは子どもの存在によって、相手との関係を維持しようとする動機づけが多少なりとも支えられています。しかし、同性のカップルは多くの場合、そのいずれの支えも欠いています。愛情対象となる同性を見つけても、男性同士のカップルへの理解があまり得られない社会の中で、互いの思いや信頼だけを頼りに関係を長く続けていくことは、決して楽ではないと思われます。上記の自由記述からは、そうした関係を結べる相手とめぐりあえたことを喜ぶ人でも、その関係が社会的・法的に保証や認知されていないために、「いつかは別れが来る」「ひとりになってしまう」という将来の孤独への不安、あるいは「自分たちは社会から何の期待もされていない人間なのだ」という感覚を抱え続けていることが窺えます。 また、自由記述からは「一緒にいたい相手でもどうせずっと一緒にはいられない」という諦めや割り切りによって、性的な関係は持っても、その関係を心理的に深めることは最初から避ける場合もあることが窺えました。それは、一般的には「性欲を満たすだけの」「無責任な」関係の持ち方と見なされるかもしれませんが、確かな関係を求めても得られない時の落胆や悲しさを感じなくてすむための、やむなき身の守り方とも考えられます。 男性同士のカップルの関係が法的にきちんと保証されていないことは、実際のカップルが被る現実的な不利益だけでなく、ゲイ・バイセクシュアル男性の将来への希望や、「将来につながる今」をよりよく生きようとする意欲を持ちにくくする、などの眼に見えない心理的な影響を及ぼしている可能性があると思われます。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
◆HIVや性感染症の予防 ------------------------------------------------------------- HIVの検査を受けたいけど、地域の保健所では時間的に不便なので検査が受けにくい。 HIVの自己検査法がもっと利用しやすくなればいいのではないか。 ゲイにとって、予防についての情報を得られやすい環境を作る必要があると思う。 ゲイであることを明らかにしても大丈夫な、予防の方法について相談できたり性感染症の治療が受けられる医療機関が必要だと思う。 セックスを規制したり純愛を推奨するのでなく、定期的にHIVや性感染症の検査を気軽に受けられ、カウンセリングにつなげられるような体制作りが必要だ。 HIVについては、「ゲイの病気」とか、「ゲイの撲滅が予防」というようなことを言う人がいて、不愉快だ。 異性愛者にも起こる病気なので、HIVについて色んな媒体を使って各々にまずは実情を知ってもらう努力をすべきだ。 HIVの検査を受けたほうがいいのかもしれないが、やはり怖い。 自分ももしかしたらHIVに感染しているのではないかと不安になることがある。 もっと多くのゲイが、正確な知識を持って積極的に予防する努力をしてほしい。 コンドーム使うのが当たり前という風潮になってほしい。 本当はセーフセックスがしたくても、なかなか「コンドームを使おう」と言い出せないままセックスが始まってしまうことが多い。 オーラルセックスではコンドームを使わないのが今は主流だが、オーラルセックスについてもコンドームを使うよう啓発してほしい。 感染リスクはゼロでないとわかっていても、フェラチオでコンドームを使うのはちょっと興ざめしてしまうというのが本音だ。 彼としかセックスをしないので、コンドームを使わずに、できるだけ性感染症のリスクを低くするにはどうすればいいのかについての情報がほしい。 男性同士のセックスは、そういう場所に行けば相手を探すのが結構簡単なので、その性欲を抑えてセックスを控えるような感染予防は難しいと思う。 早くHIVの特効薬が開発されたらいいと思うけれど、それが開発されたらみんなもっとセックス三昧になるんだろうなと思うと、怖い気がする。 自分はHIV陽性者だが、周りの友達にHIVのことをカムアウトした上で予防を呼びかけても、あまり聞く耳を持ってくれない。 知らずにHIV感染者とのセックスをしたが運良く感染しなかった。それからは本当に気をつけようとしている。 AIDSを減らしたいのなら発展場やハッテンという行為に対して社会的制裁を加えるべきだ。 自分はセックスの時必ずコンドームをつけるようにしているが、今まで相手の方から「つけよう」と言われたことはなく、コンドームを持っていた男性に出会ったこともない。 多くのゲイの実際の行動はHIV予防を優先させたものにはなっていない。 自分は皆にHIVの感染の恐ろしさを話して退かれる。 ネット上では、予防に対して意識の低い人が結構目立ちます。 HIVについて私達若い世代にはあまり危機感がないように思う。友人のセックスについて病気は大丈夫かと心配したら「脅そうとしてるのか」と軽くあしらわれたことがあり、意識のギャップにショックを受けた。 AIDS啓発に関わっている友人も、ポジティブの友人もいるが、頭では分かっていても自分には関係ない、という感じが拭えない。 本調査のテーマのひとつであるHIV予防に関連して、様々な具体的な提案や要望、感想などが寄せられました。まず、「HIV=ゲイの病気」と誤解されることへの反発がありました。しかしもちろん自分たちにも関連する病気として認識し、性的指向を明らかにしても安全な、また性的指向に則した具体的な情報を得られる、検査・相談・治療環境の整備を求める声が多数寄せられました。その一方で、1)セーファ−セックスを実践しようとしても、相手の非協力や周囲の認識の乏しさ、意識の相違などから実践しにくいこと、2)現実に身近にHIV感染した人がいてもなお、自分にも関わりのあることだと実感できない場合もあること、3)予防を二の次にした性行動をとる周囲の人々に対して懸念、不安、怒りを感じている人もいることなどから、ゲイ・バイセクシュアル男性の中でもHIV予防への意識やスタンスの差がかなりあるものと思われます。危機意識や予防への動機づけを持つ人が、それをセックスの相手や友人に伝えようとしてもなかなか容易ではなく、逆に孤立してしまう可能性すらあるようです。 ゲイ・バイセクシュアル男性への予防介入においては、当事者だからこそ果たせる役割が多々あり、当事者団体やグループがそれを活かした活動をしています。しかし保健・医療・福祉などの分野における当事者性のない専門職が関わることには、当事者同士のピアプレッシャーやコミュニティ内の性規範に影響を受けずに、中立的な立場からの介入や支援ができるという利点があります。「直接的介入はコミュニティに一任すれば良い」としてしまうのでなく、非当事者だからこそ可能な直接介入の方法をも検討・開発していく必要があるのではないでしょうか。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
◆心理・社会的要因と性行動 ------------------------------------------------------------------------ 恋人がいても、世間での「異性愛的な会話」に押しつぶされそうになる時、時々誰とでもかまわないからセックスしたくなる時はある。 ゲイの社会ではさまざまなストレス要因があることで、つきあっていても性欲に走ったり、性病の知識があるなしにかかわらず感染する恐れのあるセックスをする人が多かったりするから、必然的に性病の感染者が多くなるのだと思う。 ゲイの場合は、ほかに行き場がないからハッテン場で性欲を解消することになるので、病気が流行りやすいのだと思う。 ゲイであることのストレスを解消するために、多くの人とのセックスに走ったり、予防の知識があっても感染する可能性のあるセックスを求める人がいるのではないかと思う。 男女間よりも同性間でHIV感染が広がっているのは、男女のように結婚が認められていないために、付き合うことに社会的な責任が伴いにくいからではないか。 日常何らかのストレスを抱えながら、「ここが自分たちの生きる場だ」と勘違いし、ゲイの世界でしか生きがいが感じられなかったりセックスが過剰になり歯止めがきかないほどになって病気も怖がらなくなってしまい予防も何もなくなってしまうのだと思う。 現代社会ではゲイの存在の認知が低すぎ、悩んでいる人が駆け込める場が見つけられない。誰にも言えない悩みを発散するように発展場に流れるのです。 もっと自分の性的傾向を気軽に話せる社会になってほしい。そうすれば、性感染症予防についても、もっと気軽に話し合えるのではないか。 オーラルセックスにもコンドームを使えということは、そのような行為をするなと言っているに等しく、アイデンティティを否定されているように感じて実行できない。生活のあらゆる場面で自分を殺して生きている、抑圧されていると感じることが多く、唯一そのようなところでしか自分を解放させることができず、感染の危険に目を伏せてもそう行動してしまう。同性愛者がもっとのびのび暮らせる社会になれば、感染症への気遣いもできる余裕が生まれると思う。 これらの記述は、ゲイ・バイセクシュアル男性が置かれた社会的状況や、その中にあっての心理的状況が性行動へ駆り立てる要因になっていることを、「自分」や「自分たちゲイやバイセクシュアル」の体験や内面の洞察を通して述べたものです。他の項目の記述内容からも窺い知ることができますが、異性愛社会の中でゲイ・バイセクシュアル男性として生きることの絶え間ないストレス、居場所のなさ、「押しつぶされ」「自分を殺す」感覚と、その反動のようにゲイの世界での「発散、解消、解放」のためのセックスに「走り、流れ、歯止めがきかなくなる」現象があることを、彼らは伝えようとしています。おそらくそのような時は、自分や相手の健康を守ろうとする気遣いは失われ、「どうなってもいい」というような気持ちで、耐えていた感情を解き放つための、あるいは寂しさや空虚感を埋めるためのセックスになっているのではないでしょうか。HIV感染の可能性を知り、コンドームの予防効果を知り、コンドームがすぐ側にあったとしても、「使う」という行動を取るところまで自分をコントロールできない瞬間があることが、これらの記述から推察できます。 環境から受ける否定的なプレッシャーが大きければ大きいほど、またそれに対処する自我の力が育っていなかったり、とても弱っている状態であればあるほど、たとえそれが健康を害する可能性を伴うものであっても何かの行動によって内面のモヤモヤを晴らそうとする機制が人間にはあります。上記の研究参加者らのように自分の内面の状態と、表に現れる行動のつながりに関して気がついて、かつ言語化できる人ばかりではないでしょう。自分が受けているストレスの強さや、自分が抑えこんでいる感情に気づかずに、やみくもにセックスに駆り立てられている人たちもいるのではないでしょうか。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
◆依存傾向 ---------------------------------------------------------------- 病気は怖いです。でもセックスもしたい。発展場でのセックスは後悔するだけ。でもしたい。 セックスは楽しい。しかし、したいからする、のでなく、性的欲求もあるが、それよりも自分が止められないところに問題がある。多くの人がそうではないかと思う。 すぐにエッチしたいって思ってしまう。どうしたら抑えられますか?病気とか怖いからやめたいのだけど、やめられません。 性衝動のコントロールの効かなさと、それに対する自分自身の困惑や危機感を述べる人がいました。強い性衝動とそれをコントロールしたい気持ちとのせめぎ合いに翻弄され、結果的に性衝動を行動化してしまったことへの後悔や無力感、感染不安などに苛まれる辛さが伝わってきます。性行動の活発な人の中でも、「セックスにおける個人のライフスタイルや特性だ」と言える場合もあると思われますが、上記のような「自分が止められない」場合は、セックスに対する依存傾向を生じている可能性があります。アルコールなどへの依存と同様、自分の意志の力だけでコントロールを取り戻すことがとても難しく、程度によっては何らかの専門的治療や援助を要するものです。 性行動の問題については、誤解や批判を受けることへの恐れから、他者に対してSOSを特に発しにくいのではないかと思われます。しかし、本調査がゲイ・バイセクシュアル男性のメンタルへルスとHIV感染予防をテーマにしたものであったことから、上記の研究参加者は自分自身の戸惑いを率直に述べることができたのかも知れません。誰にも言えないけれど実は同じような依存傾向に苦しんでいる、あるいは「もうどうにもならない」と思っている人もいるでしょう。性衝動を統御できない苦しさは、咎められるべきことでなくSOSを発すべきことなのだ、というメッセージを彼らに対して発信することや、必要であれば精神科治療や心理カウンセリングその他の援助が得られるような機会やルートを作っていくことが必要ではないでしょうか。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
◆カウンセリングや医療機関 ----------------------------------------------------------------------- 自分がゲイだということを、ゲイじゃない専門家に話してみたいと思っている。 カウンセリングを受けたいと思うことがあるが、秘密を厳守してもらえるのかが信じきれず踏み出せない。 カウンセリングを受けているが、相手がセクシュアリティを理解できるカウンセラーかどうかが、非常に重要だと思う。 カウンセリングを過去に受けたことがあるが、「結婚すれば落ち着きますよ」など同性愛に対する理解がない発言をされて、傷ついた。 ゲイであることを話さずに精神科にかかってカウンセリングも受けているが、話して拒絶されないかととても心配だし、話さないでいるのも隠し事をしているようで辛い。 心の警戒を解かない限り本当の問題について語れないのに、「自分が同性を好きだと言えば、気持ち悪いと思われるのではないか」と心配になり、カウンセラーに対し正直になることができない。またカウンセラーが不注意に嫌悪感を見せれば、こちらは死ぬほど苦しいところにさらに鞭打たれることになる。 カウンセリングには興味があるが、ゲイの気持ちはゲイにしかわからないとも思う。 セクシュアリティについても話し合えるカウンセラーと出会えて、精神的にとても落ち着いた。 自分はHIV陽性者だが、病院でカウンセラーと話せることが支えになっている。悩みを言葉に出してみることが大事なんだなと思う。 ゲイを十分に理解してくれる心理カウンセラーに会いたい。軽蔑されることに怯えている。 色々悩みがあっても、まず「ゲイである」という部分で躊躇してしまうので、ゲイに理解のある信頼できるカウンセラー/医療機関があれば行きたい。 医療機関でプライバシーが守られるかどうかわからないので、セクシュアリティをオープンにして受診できない。ゲイも安心して受診できる病院が必要だと思う。 性的指向を隠しながらの医療受診は、精神的なストレス・苦痛が多いと思う。 自分の性に対しての問題がごまかしきれなくなってきており、機会があればカウンセリングを受けてみたいが、自分には壁が高すぎる。自分のことを全て話せる場所が人間には必要だ。 カウンセラーに性のことを相談したいとは思わない。性に対する意見は人それぞれで、解決できるわけがない。 悩みの原因や背景に「ゲイであること」が含まれている時にそれを全部説明しにくく、かといってそれをきちんと話さないと、その結果としての現在の状況をわかってもらえないのではないかと不安になる。 心理カウンセラーはクライエントにあえて示唆を与えないようにしているのか?洗いざらい話すことですっきりすることはあるが、それなら友人に話すのでもあまり変わらないと思ってしまう。 ゲイの人が相談できるカウンセリングの場を全国に作ってほしい。 同性愛者のメンタルケアを安心して託せる医師のいる機関がわかるサイトがあるといい。 性や性的指向の問題に限らず、何らかの悩みでカウンセリングや精神科受診への関心があったり、必要性を感じている研究参加者にとって、実際のメンタルへルスの専門家へのアクセスには高い壁があるようです。ひとつの壁は、医師やカウンセラーが、ゲイ・バイセクシュアルという性的指向をどう考えているか、自分が明かした時にどう反応されるかがわからないという不安です。そのために、1)悩みの原因や背景に性的指向のことがあっても、それをそのまま言い辛い、言えなければ悩みをちゃんとわかってもらえないように感じる、2)問題が性的指向とは直接関係ないことでも、性的指向を伝えないままで相談することは、自分自身を隠している、すなわち本来なら安心して内面を開示したい相手に対してもありのままの自分でいられない状態での相談になってしまう、3)援助や治療を求めた相手に偏見や無理解によって更に傷つけられることが恐い、といったことが躊躇の原因になっていることがわかりました。 もうひとつの壁は、秘密やプライバシーがきちんと守られるかどうかの不安です。ゲイ・バイセクシュアルの人に限らず、カウンセリングや精神科治療を受けるすべての人にとって、守秘義務への信頼がおけるかどうかは大切なポイントですが、そこがどうしても信じきれないために近づけないという研究参加者もいました。それほど、性的指向を含めた自分を開示することは(例え相手が専門家であっても)、彼らに強い不安を引き起こすのでしょう。 その他には、「ゲイのことはゲイでなければわからない」「性は人それぞれだからカウンセラーに話しても仕方がない」との意見や、心理カウンセリングの意義への疑問もありました。これらを総合すると、彼らは、カウンセラーや精神科医に内面の問題を打ち明けたり相談したりする際に、ゲイ・バイセクシュアルであることも含めたありのままの自分として向き合いたいが、「それができるような安全な場・安心できる相手・信頼に足る専門性なのか」「自分の悩みや苦しみを本当にちゃんとわかってもらえるのか」という不安や懸念がとても強いと言えるでしょう。その不安が解決または軽減されるならば、専門家(同じゲイ・バイセクシュアルでなくても)の援助を求めたいと思っている人は少なくないと思われます。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
【6-6】 【6】情報提供の希望→(省略) -------------------------------------------------------------------- 【7】まとめ -------------------------------------------------------------------- 一般にマイノリティグループに属する人は社会的なプレッシャーの中で生きています。ゲイ・バイセクシュアル男性も、異性愛者が中心の社会の中で生きていく上では様々な心理的葛藤を抱えていることは、調査実施にあたっての仮説のひとつでした。 今回の調査は、インターネットによる匿名質問票による調査という手法を採りましたが、その匿名性や利便性も手伝ってか、自由記述欄には多数かつ多様な声が寄せられました。その中には、ゲイ・バイセクシュアル男性としての自己を肯定できない苦悩や、この自己否定感の強さのあまり生きていくことにすら困難を感じていることを、一気に吐き出すような内容のものも多く見受けられました。 その一方、自らの性的指向を肯定し、社会的プレッシャーに屈することなく生きていこうとするゲイ・バイセクシュアル男性からの意見も多く寄せられました。本調査への協力によって自分の属するコミュニティに貢献できることを喜んだり、回答のプロセス自体に自分を見つめ直すという意義を積極的に見出したりといった様子が、私たちに伝わってきました。また逆に、ゲイ・バイセクシュアル男性のグループが心理的問題を抱えていたり、特殊な性行動に走っているという決めつけのもとに調査を実施したのではないかという疑問も多数寄せられました。 このように、自らの性的指向との折り合いのつけ方の程度と、それによる本調査への反応には、大きな個人差が見られます。しかしながら、多くの回答者に共通していたのは、異性愛者中心の社会でゲイ・バイセクシュアル男性として生きることから感じるストレス、すなわち性の多様性に開かれていない異性愛者への憤りや落胆の表明でした。そして中には、このようなストレスのために彼らの性衝動が高まったり、HIV感染予防行動の阻害につながったりしているのではないかといった意見も寄せられていました。 こうした自由記述の全体像を振り返ってみると、各個人の状況と抱える問題によって、反応も個別に大きく異なるということがわかります。このことは、ゲイ・バイセクシュアル男性を一括りのグループとしてその心情や行動を論じることの困難さ、ひいてはHIVの感染予防行動に関する介入についても、単一の方法論ではいかないということを示唆しているのだと考えます。また、メンタルヘルスやセックス、HIV感染の話題は普段はタブー視されがちな上に、個人のごくプライベートな部分に触れることであるだけに、介入の対象者に様々な感情的反応を喚起しうるデリケートなテーマです。介入することが傷つきや不快を残す体験にならないよう、その時々の反応への感受性と配慮が必要だといえるでしょう。 しかしながら、今回の自由記述に寄せられた研究参加者の声には、今後の介入や彼らへの援助に関して、たくさんのヒントがありました。彼らは、異性愛者が変化することを願うだけでなく、周囲のゲイ・バイセクシュアル男性や自分自身もが変化し、精神的にも性的にもより十全に生きていけるようになることを望んでいます。そしてそのための支援者として、私たちを含む研究者や、保健・医療・福祉・教育の分野に携わる対人援助職に寄せられている期待は、非常に大きいのです。 本研究がゲイ・バイセクシュアル男性のメンタルヘルスの向上およびHIV感染予防行動対策の一助となることを、研究実施者一同願ってやみません。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |
管理人様 連続投稿お許しくださいませ。 このようなアンケートの結果を皆々様に知っていただきたく思いましたが、 当アンケートの結果はPCでしか閲覧できない様でございますが、若年層にはケータイのみしか使用できない方が多いと推測いたしました。 ですからケータイからでも閲覧できるようにと思い貼り付けた次第でございます。 もし不都合でございましたら、削除して頂きます様お願い申し上げます。 研究者様 無断転載でありますが、当HPに転載することは「ゲイ・バイセクシュアル男性のメンタルヘルスやHIV予防対策に役立てるという、本研究の目的と趣旨」にそぐわないものと解しております。 不都合でございましたら、管理人様に削除依頼していただきますようお願いいたします。ただ上記「管理人様」でも書きましたように、若年層がケータイからでも閲覧できるようにという思いからした措置でございます。 ゲイ・バイであるが故に私を含め多くの方(特に若年層)が 悩み、自分が何なのか彷徨っていると思います。そのなかでこのような科学的見地から 自分自身を知ることができることは、一つの支えになることと思います。 またHIV予防対策に関しても、第一に啓発活動が最も重要であると思います。 しかし啓発活動は多くの方々に知っていただかなければ意味がありません。 当HPは多くのゲイ・バイの方がアクセスしており、ここに投稿することがHIV予防対策に繋がることと信じております。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98)@zaqdb72c029.zaq.ne.jp> |