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さよならの向こう側には【涙の受験編、前編】40〜44
 長編編集部φ(..)  - 07/6/26(火) 0:46 -
俺は一時我慢していたが苦しさに耐えられなくなり無理矢理ヒカルから離れる様にした。
俺「苦しいよ!どうしたの?」
光「うるせぇよ、じっとしてろよ」
そう言って強引に個室まで連れていかれ、またキツく抱きしめられた。
ヒカルはかなり怖い顔をしていたので、俺も少しの間黙っていた。ヒカルがこうなったのもカズヤとの会話が原因だという事は間違いないはずだ。
俺『カズヤは何をを話したんだろ』
かなり不安に思えた。
しばらくして抱きしめる力が緩んだので少し身体を離しヒカルの顔を見た。目が合いもう一度キスをした。今度は少し優しさが混じっている。
光「おまえは俺の事をどう思ってる?」
俺「大好きだよ。他の誰よりもね」
光「信じていいんだな」
俺「もちろんだよ。カズヤになんか言われたの?」
ヒカルは答えずにただ抱きしめているだけだった。
俺「もう休み時間が終わるから戻ろうよ」
ヒカルも頷き素直に戻る事にした。
ヒカルと別れ教室に戻り、カズヤのところまで行った。
俺「ヒカルに何を話したの?」
和「自分の考えてる事を伝えただけだよ」
俺「だからどんな事を?」
和「別に…なんかあったのか?」
俺「…」
授業が始まったのでそこまでで終わってしまう。
授業中もずっと考えていた。
『カズヤの性格からいって酷い事を話したとも思えない。でもヒカルにとっては気分の良くない事だったのかな…』
『カズヤが誰を好きかってのもまだわからないし、直接聞いたわけでもない。ただ部室での最後の会話が気になる』
『ヒカルもカズヤも内容を話さないのはなぜなんだろ』
考えれば考えるほど不安な気持ちになるだけだ。
授業が終わってからもう一度カズヤに聞いてみた。
俺「なにを話したか教えろってば」
和「だから俺の気持ちを言っただけだよ。ヒカルに聞けば?」
俺「教えてくれなかったよ」
和「ヒカルも話さなかったのか?」
俺「うん」
それを聞いて、カズヤはなんとなく含み笑いをしている。
俺「もういいよ。カズヤが話さないなら俺もカズヤと話をしないから」
ちょっとスネた態度を取ってみせる。
和「そりゃマズいだろ?修学旅行も近いのに話さないなんてさ」
俺「知らないよ」
和「わかったよ。なら土曜日の午後に俺ン家に宿題をしに来れば?その時に教えてやるよ」
俺はしばらく考えていた。
和「内緒って事になってるんだからヒカルには黙って来いよ」
俺「…わかった」
とりあえず話の内容が聞きたかったのでOKした。

土曜日になりカズヤの家にバスで向かう。カズヤとはバス停で待ち合わせって事になっていた。
前日はあまり眠れなかった。ヒカルとメールをした後でずっと考え事をしていたからだ。ヒカルはあれからいつも通り変わりなく接してくれているが、カズヤから何を聞いたのか気になって寝つけなかった。
バスを降りるとカズヤは自転車で迎えに来ていた。家まで並んで歩く事にする。
和「シュウは制服よりも私服の方が断然いいな」
俺「何言ってるんだか。カズヤはジャージが一番似合うね」
和「おい!」
そんな感じの話をしながらカズヤの家に到着した。
和「今日は夜遅くまで誰もいないからゆっくりしていけよ」
カズヤの家で夜遅くまでいるって事は展開としてはあまり良くないと思える。
とりあえずカズヤの部屋でしばらく勉強をする。
部屋にはコミックもたくさんあるが参考書なんかも結構多い。カズヤはいつも試験でトップクラスを維持しているが、日頃は勉強しまくっているという風には見えない。そんなところに憧れの一端がある。きっと家では相当頑張っているのかもしれない。
一通りやり終えたところで一服した。
和「修学旅行の準備した?」
俺「ボチボチだね」
和「シュウと同じ部屋になれたなんて光栄だな。でもヒカルとしばらく離れるのは寂しいだろ?」
もうその話だ…。
俺「離れるって言ってもそれほど遠くに離れるわけじゃないし同じホテルだからいつでも会えるよ」
和「お仲が宜しい様で何よりだな」
ちょっと嫌味っぽく言う。
俺「ヒカルに何を話したの?」
一番聞きたかった内容を俺もストレートに聞いた。
和「大した事なんて話してないって」
俺「でもヒカルは普通じゃなかったみたいだけど」
和「どんな感じだった?」
あの日のトイレでの怖い顔を思い出す。
俺「怒ってるみたいだったかな」
それを聞いて少しだけ笑った。
俺「カズヤは俺とヒカルの中を裂きたいの?」
和「そんな酷い事を考えた事もないよ。だいたいそうしたいならみんなに2人の事を広めたっていいわけだし」
俺「なら何を話したの?」
和「ホント大した事ないよ?そんなに聞きたい?」
俺「聞きたいね」
和「じゃあさぁ、交換条件としてヒカルとやってる事を俺ともしてみる?」
カズヤは笑いながら言った。
俺「なに冗談言ってんだか」
和「本気だとしたら?」
俺はドキッとしてカズヤを見た。今さらながらカズヤの発言に驚いてしまう。
和「俺が冗談なんて言うような奴には見えないだろ?」
俺「そうだね、全然見えない。でも今日は冗談でしょ?」
和「いつもの俺のつもりだけど」
笑顔で答える。
和「どうする?誰もいないんだし何でもできるよ?」
俺『その笑顔ってのが微妙な雰囲気だから本心かどうかわかんないんだよ』
部室の時にしろ今日にしろ、俺が思っている憧れのカズヤの言葉とは思えず、どんな気持ちでいるのか全く掴めない。でもどこか“完璧な本気”とは違うように感じられる。顔つきからだろうか。様子を探る為に思い切って聞いてみる。
俺「カズヤは俺とやりたいの?」
そう言われてカズヤはちょっと考えてる様子だ。
和「どうかな。ただ…ヒカルとシュウが仲がいいって知った時はあまり気分が良くなかったかな。男同士だからって事じゃなくて…今まで自分の中で…なんていうか…曖昧に考えていた事が初めて分かったからかな」
俺「曖昧な事って何?」
和「…詳しくは話したくないよ」
カズヤは少し横を向いて目を反らす。意外に弱気なのかなって一瞬思いさらに攻めてみた。
俺「でも話さないとカズヤの事っていつまで経っても何も分からないからさ。やりたいならやりたいで正面切って言えばいいじゃん?」
急にカズヤは俺の方を真っ直ぐ見た。
和「おまえは相手の気持ちっていうのを考えないのかよ」
カズヤの顔がみるみる険しくなる。
和「なら教えてやるよ。俺はヒカルよりも力は強いと思うしどうなっても知らないからな」
カズヤはいきなり立ち上がって、座っていた俺の上に跨いでのしかかってきた。
そして頭を両手で挟む様にすると、いきなりキスをしてくる。
俺は固まってしまい、されるがままで身動き出来ずにいた。
和「ヒカルにも『したい様ににする』って言っただけさ。あいつも俺には『好きなようにしろ』って怒りもしないで言ってたよ」
投げやりに言い放つ。
俺があまりにも執拗に質問をしたので、カズヤの男としてのプライドを傷つけてしまった様だ。なんとか場を鎮めようとする。
俺「怒らせちゃったんなら謝るよ。でも俺もカズヤの事を好きだし、やるならきちんとした気持ちでやりたいから力づくみたいなのは辞めて欲しいよ」
俺は視線を落としながらそう言う事しかできなかった。
しばらく動きがなかったのでカズヤの様子を窺う様にチラっと見る。
相変わらずキツい目をして睨んでいた。ヒカルと同じ目をしていて思わずドキッとする。
和「そんな泣きそうな顔すんなよ」
俺「ヒカルを裏切りたくないから…」
和「俺を挑発するような事ばっかり言ってるおまえが悪いんだよ」
確かに俺はカズヤの気持ちを考えないまま逆撫でするような事ばかり言っていたかもしれない。だけどこのままでは困る。
俺「ヒカルになにを話したか聞きたかっただけだから」
精一杯逃れようとして言う。
和「違うね。俺に憧れてるとか言って俺を誘ってたんじゃないのか?」
俺「そうじゃないよ…」
和「じゃなんだよ」
俺『誘ってるわけじゃないけど、挑発するような事ばかり言っていたのは事実俺だしカズヤもかなり辛かったはずだ。怒るのも無理ないし相当我慢してるに違いない。カズヤが暴れるのも仕方ない』
そう思っていたが、黙っているだけで言葉を返せなかった。
俺の気持ちを察したのか、カズヤは俺が避けないのを確認する様にゆっくりと顔を近づけてきた。
今度は優しくキスをする。俺は抵抗せず受け入れてしまっていた。ゆっくりと舌が入ってきて俺の舌を探す。ヒカルほど慣れていないが優しく絡らんでくる。永遠に続くんじゃないかと思うくらい長くキスをし続けてきた。
カズヤの唇が一旦離れ下へと向かっていく。首筋を舐められ俺は少し吐息を漏らした。
カズヤの手がシャツのボタンに掛かり外し始める。ぎこちなかったが下まで何とか外し終え脱がされた。上半身裸だ。
恥ずかしさなんてない。あるのはヒカルに対する想いとカズヤに対するお詫びの気持ちだけだ。
カズヤの両手が胸の周りを触っている。触れながらカズヤは俺の顔をじっと見ていたが、しばらくして話しかけてきた。
和「シュウさぁ、俺に気を使ってやってるんだろ?おまえらしいよな」
俺「…」
和「こんなつまらないエッチなんてないよ。愛情が何もない」
俺「…」
和「ヒカルの事を考えているんだろ?そんなにヒカルが好きなのか?」
俺は少し間をあけて頷いた。なんとか声を絞り出す。
俺「…カズヤも大好きだよ。決して冗談じゃなくて本気で。でも今はヒカルとつきあってる。なにも不自由してないし酷い事をされたこともない。それなのに俺からヒカルを裏切った…」
ヒカルへの裏切りの気持ちで張り裂けそうだった。
カズヤはしばらく何かを考えている様だったが、溜息混じりに話した。
和「仕方ないな。わかったからこっちに来いよ」
カズヤは先にベッドに入って俺を呼ぶ。上半身裸でいたしヒカルの事を考えていて頭がイッパイイッパイだったので黙って従った。 
和「俺だっておまえのことは好きだよ。だけど今みたいに気のないエッチだけはしたくない。もっと本気な時にやりたいしな」
そう言ってカズヤは俺の手を握る。うわの空でいた事と今さらって感じだったので特に避けずにいた。
和「ヒカルにこの事を話したら怒るかな。そうなら黙っていればいいだろ?」
俺「そんな事出来ないよ。裏切った気持ちのままでいるなんてできない」
和「じゃ話すしかないか。でもきっとヒカルの事だから暴れるんじゃないか?」
暴れるくらいなら構わない。いくら殴られても良いけど終わりにされる可能性の方が高い。ヒカルは純粋な奴だ。そう考えると余計落ち込む。
カズヤは俺を上から覗き込んできた。
和「少し考えればいいさ。けどなるようにしかならないし、深く考えない方がいいんじゃないの?困ったら俺がいるし」
そう言って俺の腕に触れてくる。ヒカルの大きな手とは違う感触だ。もっと男っぽいザラっとした感覚がある。
俺「カズヤは俺に怒ってないの?」
和「もう散々ヒカルが好きだって聞かされてるし、今さら怒ってもしょうがねぇよ。確かにおまえに色々言われてカッときちゃったけどさ、いつまでも怒ってるのも男らしくないだろ」
カズヤは上から俺を見下ろす様にして身体に触れてきていた。
俺「ごめんね。俺今までカズヤに憧れてたし、カズヤが俺の事を好きになってくれたらいいなって何となく漠然と考えていたんだと思う。でも今はヒカルとも終わりにしたくないんだよ」
和「そっか…仕方ないよな」
それ以上は何も言わず黙っている様だった。
俺もまたしばらく考えていた。
俺『今はヒカルに対しての事を考えて悩んでいる。その事を相談できるのが、俺達のつきあいを知っているカズヤだけだ。ただそのカズヤにも一定の好意を持っていて、相談しようにも詳しく話すことが良いことなのか判別がつかない状態だ』
しばらくしてカズヤが話し掛けてきた。
和「もしヒカルに話すなら一緒にいてやろうか?その方が言いやすいだろ」
俺「言う時は自分で言うよ。俺の責任だし」
和「おまえの責任ってわけでもないんだし。今日は俺が誘ったわけだろ?」
そう言って再度俺の身体に手を置いた。

引用なし

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